第11話
「おはよっ!
「
「月、おはよう」
いつも通りの朝、いつも通りサユと登校していつも通り月と出会った。
平和な日常っていいよね。
ここで月をゲーム部に誘えればいいんだけど、サユがなぁ……。
「どうしたの二人とも、なんかそわそわして」
「いやぁ……」
なんと答えたものか。
馬鹿正直に「月をゲーム部に誘いたいんだけどサユが嫌だっていうからさ(笑)」
なんて死んでも言えない。
「今日は部活で何しようかなってさー」
「そうなの?」
疑ってる目、してるなぁ。
そこで月が首を傾げながらあごに指を当て始めた。
「二人とも、ケンカでもしてるの?」
「ヒロとわたしがケンカ?ないない」
「だなー」
実際サユとケンカしたことは……あれ?結構あったような?
「まぁケンカじゃないならいいんだけど」
まだ疑うように見てくる月をなんとか回避しつつ学校についた。
教室に入ると、すでに
「何してんの」
「将棋対戦相手募集!」
「サユ」
「月」
「大翔くん」
「誰もやってくんねぇのかよ!!」
だってねぇ……?祐樹、弱いし。
「ていうか桜雪ちゃんが普通に俺のことをいじってくるのが悲しい」
「すぐに馴染んだよね、桜雪ちゃん」
「いいことだよね」
「わたし、いいことをした」
「俺に味方っていないの?ねぇ」
俺たちは、ズッ友だよ!
「それより、非公認部活動が次々と
ぎくりっ。
「そ、そうなんだ?」
「どうした?大翔」
「別に?」
「うん?」
怪しまれてるぅぅぅぅぅ!!!
「祐樹、わたしが将棋の相手になる」
「ホントか!?助かるよ!!……四枚落ちでお願いします」
「了解」
ナイス!サユ!
ていうか四枚落ちって……。この間二枚落ちでもボロボロだったんだし四枚落ちでもサユには勝てないと思うけどなぁ。
「ゲーム部、明日にでもいこうかなぁ。ばれないように、こっそり行こう……」
そんな中、ぼそっと何かを呟いた人がいたことに、誰も気づかなかった。
※※※
今日の対戦は前にも増して緊張感が高まっていた。
主に、俺だけの。
目の前にはサユと
サユ一人に対して、二人の先輩が立ちふさがっている(?)
「大翔が言ってたやつを入部させないと部活ができなくなるんだ、分かるよな?」
「分かる」
「ほな、入部してもらいまへんと」
「むむむ……」
「わがまま言ってる場合じゃないぜ」
「でも、ここでゲームをする必要はない」
「ほう?じゃあゲーム部ごとないことにするか?」
「それは……」
「桜雪ちゃん、諦めてくれやらん?」
「…………」
ゲームをしたいという欲求と月をゲーム部に入れたくないという欲求がサユの中でぶつかり合っている……と思う。
「そん子は部活入るん乗り気なんでしょう?」
「うん」
「まだ時間はあるけど早めに決めてくれよな」
「分かった」
緊張感が一気に晴れていく。
はぁ……怖かった……。
「そんじゃ!ゲームするか!」
「今日のゲームはこれどすえ」
やたらハイテンションでノリノリな眞智先輩と久美先輩。
眞智先輩が掲げたゲームは……いや、あれはゲーム機だ。
その名も3〇S。
「3D〇どすえ」
「ちなみに中身はモ〇ハンが入ってる」
モンハ〇をやるのか……。
ていうか〇DSが四つもあるってどういうことだろう。
もともと持っていたのかそれともこのために買ったのか……。
なぞは深まるばかりだ。
「データはどうするんですか?」
「今日やるのは闘技場だから問題ないぜ」
「なるほど」
「ほな始めまひょ」
眞智先輩から本体を受け取り起動する。
「タイムアタックでもするんですか?」
「いや、今日は協力プレイだ。タイムアタックにするとオレらは確実に負けるからな」
「了解です」
サユがさっきから一言もしゃべっていない。
ちらっとサユの方見るとゲーム機の電源すら入れてなかった。
俺はこっそりとサユの近くに移動する。
サユがこちらに気づいた。
「どうしたの、ヒロ」
「それはこっちのセリフ。ほら、みんなで遊ぼうよ」
「うん……」
サユが誰にでもわかるくらいしょんぼりしている。
こんなサユを見るのは久しぶりだな。
そんなサユの頭に俺は手を乗せた。
「ヒロ?」
「大丈夫、まだ時間はあるんだ。俺にはなんでかわからないけどサユの中では大事なことなんだろう?先輩も待ってくれてるんだし、ゆっくり考えな」
そう言ってサユの頭を撫でる。
気持ちよさそうに目を細めるサユ。
もう大丈夫そうだな。
「さ、ゲームしよう」
「うん」
やっぱり笑顔が一番だな!
※※※
今日はヒロに慰められた。
久しぶりに頭を撫でてもらって嬉しかった。
そればっかり考えてはいられない。
問題は月のこと。
どうしてここまで月にゲーム部に来てほしくないのか自分でもわからない。
いい人だし、友達だとわたし自身思っている。それでも、なぜか嫌なのだ。
何年間もヒロと離れていた自分に自信がないからだろうか。
それもあるだろうが、それだけじゃない気がする。
ずっと考えていたことがある。
あれは絶対に見覚えがある。
ヒロもどこかで見たことがあるような気がするっていう顔をしてた。
わたしも同じことを思った。
数年前に見たのかもしれないし、最近見たものかもしれない。
そう思ってしまうので、どうしても疑ってしまう。
月は、わたしたちに何かを――
――隠しているのではないだろうか、と。
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