秋寂

10月の終わりが見えてきた今頃になって、不意にうだうだと秋の寂しさについて考えている。夏が終わってから途端にやってくる流行病のような鬱々とした感情が倦怠感や夏の溜まりに溜まった疲労や、無理して笑いすぎたり頑張ってこの夏をちゃんとした夏にしようとしたそのツケが今になって回ってきたものだったとしたら、寂しさは秋の高く澄んだ薄い青色か灰色か、もはや透明かくらいの空に浮かぶまばらな鱗雲みたいな、つまりその鬱々とした感情を取り敢えず端に置いておいていいよと言ってくれるようなものだったりするわけで、たまにひんやりとした冷たい風を運んで真っ暗な闇の中に突き放してきたりするんだけどそれでもまだ布団に包まればなんとか生きていける気がする程度の優しさを含んだものだったりするよなと思う。そういう秋の半端で僕のことを少しだけ配慮したような台風が過ぎ去った後の都合合わせの緩い生風のようなものを僕が凄く求めていて、その気持ちと一緒に僕の脆さとか誰かに助けて欲しかったのに助けてなんて言えなかった8月の夜のこととか一人で東京に行ったのに、結局あんなところには僕はなんにも用がなかったこととか、東京で駄目なら僕はどこに行けば満たされるんだろうとか、多分もう答えは出てしまっている沢山のくだらない僕の感情みたいなものがぼんやりと輪郭をもったままでいることがとてつもなく秋らしいなと思ったりする。

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