20歳

せの

仕事の休憩時間にtwitterを開いてなんとも言えない、なんとも言いたくない悲しさがこみ上げる。大学生活を楽しげに満喫する高校時代の友人や、バイトで稼いだそこらのサラリーマンよりも高い月収を趣味のためだけに注ぎ込む事の出来る幼馴染や、卒業を控えて期待や不安なんて言葉じゃ言い表せないような叶うことのない恋に焦がれ続けるような思いをつぶやく、そんな世界にいるごく身近だった筈の人たち。彼女、また彼らは未だに青春という言葉の中に居て、そうして知らず知らずに離れて行く。

「仕方がない」

地元に帰れば会えるとしても、それはもう暫くの間、取り返しのつかない距離の問題として僕たちの間に存在し続けるのだから。

「仕方がない」

諦めがつくような関係でしかなかったとそれもまた悲しい。


18で社会に出てしまったことを今更後悔することはない。高校を卒業して実家を出て、大阪の京橋に一人暮らしを始めた。それが19になりたての頃だった。駅前は飲み屋街で昼間から立ち飲み屋の中は満員。明るい水色のやたらと短いワンピースを着たキャッチの女が不自然に揺れて客を呼んでいる。人の多さに酔いそうになって、ふらついて、ぶつかって、どうせ相手も謝らないからと素通りしようとしたら小さく「すんません」と聞こえて後ろめたさにまた気分が悪くなった。

誰に対しても優しくはなかったけれど、冷たくもなかった。

そして誰に対しても干渉してくる街だった。


僕はここで確かになにかを失うだろうし、確かになにかを得るのだろう。それを成長と言おうが、失ったものが何かわからないでいようが、つまりは生きて行くしかないということで。


20歳になる前に、何かを失ってしまう前に、残しておきたいものがある。


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