衝動
一人を愛せる人間になりたかった。人恋しさも忘れないで、一人の夜の寂しさも忘れないで、誰かと笑いあった時の楽しさも忘れないで、誰かと分け合った時の感動も忘れないで、それでも、一人を愛せる人間になりたかった。それは悲しさも切なさも経験して、悔しさを愛しさに変えることの出来た人だと思う。つまりは無敵だ。この先何が起ころうが生き抜いていける強さだ。
一人になりたい時が、誰にだってある。順風満帆な結婚生活を送る上司が、喫煙所で一人煙草を吸う時間が一番好きだと言うのも。友達と笑い合うことが大好きな友人が、夜の9時以降は誰からの電話もLINEも返信したくない言うのも。分かる気がした。一人にはなりたくないのに、一人じゃなきゃいけない時がある。一人きりで全部の電源を一度落とさなきゃいけない時がある。体を休めるんじゃなくて、心を休める時間が僕らには必要だからだ。
だけど、そういうことじゃなくて、誰かと居たくて、誰かにみてほしくて、認めて欲しくて、誰かと話したくて、愛し合いたくて、だけど一人でいるしかない時を、愛せる人間になりたかった。ツイッターのアカウントやラインのトーク履歴や、連絡先のデータを全て消したくなる衝動や、真昼間の電車に飛び乗って終電が無くなるまで只管遠くへ行きたくなる衝動と付き合っていける術が欲しかった。そんなものは大抵、寝て仕舞えば無くなるのだけれど、そういう気持ちを全部愛してしまえればいいのに。
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