ようこそ、魔術塾へ(2)
中に入ると、歴史映画でよく見る、中世のヨーロッパのお城のような、豪華絢爛で気品のある内装が施されていて、俺はその美しさに瞳を奪われる。
「何ぼーっとしての、翔太。ほら、さっさと行くわよ!まず、塾長にあいさつに行くから。レイスはついて来ないでよ」
「ちぇっ!つまんねぇーのー。先に教室で待ってるな翔太」
唇を尖らせてつまらなさそうな表情を浮かべるレイスと別れ、俺達は塾長室へと向かった。
いきなりお偉いさんに挨拶!
緊張で、ソワソワしだす俺。
「何緊張してんの!しっかりしなさいよ!もう大人でしょ」
見かねたルーナが思いっきり俺の背中を叩いた。
手加減を知らない強烈な痛み。
けど、少しだけ気持ちが楽になった気がした。
塾長室の扉の前に到着する。
やはり、魔術塾のトップの部屋だけあって、扉から威厳がプンプンと漂っていた。
ゴクリと唾を飲み込む俺。
そうだ。緊張するな。落ち着け。
一年前のあの苦労を思い出すんだ。
ノックは3回。相手がどうぞと言うまで入らない。どうぞと言われたら、入室する。そして、ドアを閉めたら、笑顔で元気よく「失礼します」を言う。
一年前の就活の時におさえていた面接時の基本マナー。
基本マナーを意識。相手に失礼の内容に。
深呼吸をして、速くなっている胸の鼓動がおさまるのを待つ。
だが、そう簡単におさまる訳もなく、しばらくの間、扉の前に立ち尽くしたままだった。
「あーーー!もう、めんどくさいなー、翔太は!ほら、早く入るよ」
俺の姿を見かねたルーナは、俺の手を取ると何も言わずに勢いよくドアを開けて入っていった。
まだ、気持ちの整理が……と言おうとしたが時既に遅しだった。
しかし、ルーナは失礼すぎる。
仮にもお前の上司だぞと説教してやりたい。
とにかくここは、経験値豊富な俺から謝るとしようと心に決める。
「あっ、あの塾長!何も言わず入室してしまい申し訳ございません!!」
俺は塾長室に入るやいなや、すぐさま深く頭を下げて謝る。
しかし、そんな事は無意味だったとすぐに気づかされる。
「ルーナちゃーん!会いたかったよー」
塾長らしき男は、俺を無視して、一直線にルーナの元へと駆け寄り、ギュッと抱きついた。
「ほんとっキモいから離して!もう子供じゃないんだから!」
無理矢理引きはがすルーナ。
引きはがされた塾長らしき男は、ルーナに拒絶され悲しい顔をしていた。
一方で俺は、頭を下げたままその光景を横目でただ観察していた。
「いつまで頭下げてんの。早く上げなさい!」
ルーナに言われて、顔を上げるとまるで海外の映画俳優のような金髪碧眼でダンディな雰囲気の男の人が立っていた。
俺に向けて軽く笑みを浮かべるその姿からは、優しい人オーラが滲み出ている。
「はぁー。翔太、紹介するわ。こちらが、塾長のジャック塾長よ。ついでに、うちのパパ」
ルーナがめんどくさそうな表情をして、ダンディな塾長を俺に紹介する。
だが、言葉の最後に俺は衝撃をうけた。
「ルーナの……お父さん!!!」
塾長室に俺の声が響き渡る。
俺は開いた口が塞がらなくなっていた。
「どーも!塾長兼世界一カワイイ女の子ルーナちゃんのパパでーーす!」
白い歯を輝かせて両手をピースするジャック塾長。
あまりにもダンディな雰囲気とはかけ離れた口調に、俺はどう反応していいか困り果てた。
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