約束(2)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「グレゴリウス卿。お話が……」
ジャックは、玉座の前に片膝をつき深く礼をする。
グレゴリウス卿。
ラグーン魔術師教会の最高顧問であり、ラグーンの街を治める最高権力者でもある。
ジャック塾長は、グレゴリウス卿のいる大聖堂にいた。
「顔を上げよ、ジャック…どうしたんじゃ?さしずめ、良い話ではなさそうじゃな」
「ええ……良い話では……」
ジャック塾長は、用具室で起きた事件に関して報告をした。
「なるほどのー。まあ、2人が無事で何よりじゃ」
顎髭を触りながらホッとした表情を浮かべるグレゴリウス卿。
「グレゴリウス卿。この事件には続きがございまして……。床に、あの紋章が刻印されておりました」
その言葉を聞いた瞬間、グレゴリウス卿の顔が一変する。眉間に深く皺が寄っていた。
「紋章じゃと…まさかファフニールの紋章なのか?」
「ええ。間違いないかと」
「奴らがまだ生きていたとは……深刻な事態じゃ」
グレゴリウス卿の顔が曇る。
「しかし、紋章を持つものを消滅させるには、血の契約を交わす魔術が必要不可欠。その魔術を使えるのは限られた人間のみ。そう、血の契約を交わした媒体を持つ者のみ」
ジャック塾長は、グレゴリウス卿の目を真っ直ぐに見つめ、話を続ける。
「グレゴリウス卿!なぜ、彼にあの杖を渡したのですか!彼は、まだ未熟過ぎます!」
「ジャックよ。彼は、わしの希望じゃ。それは、ジャックも分かっているじゃろ」
「それは……」
「血の契約を交わす魔銃をもつお前なら、彼を立派に育てあげられる……。”あいつ”のような事は無いと思っておるのじゃ」
少し微笑みながらジャックに言うグレゴリウス卿。しかし、その目は寂しげであった。
「ジャックよ。今日はもういい。カワイイ娘の所へ帰って側にいてやりなさい」
「かしこまりました」
ジャックは、ゆっくりと立ち上がり、再びグレゴリウス卿に深く礼をし、大聖堂を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ようやく寮の部屋に到着した俺。体はもうボロボロで歩くのはもう限界を迎えていた。
部屋に入ると、俺は、大の字になってそのままベッドに倒れ込んだ。そして、ゆっくりと目を閉じていった。
新卒社員が異世界で魔術師候補生に選ばれた件 坂昇 @sakanoboru
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