ルーナとレイスと俺(3)


「あんた達、うっさい!!落ち着いてご飯も食べれないわけ」


 お盆にご飯がのせて、ルーナが俺の横に座ってきた。ルーナのご飯は、魚でムニエル的なものとこんがりと焼けた丸いパン。女子が好きそうなメニューだ。


 俺は、ルーナの食べ姿が気になりチラチラと見てしまう。

 そして、最初に出会った時の印象と照らし合わせる。


 やっぱり何も言葉を発してないと可愛いと思う。


 視線に気づいたのか、ルーナはギロッとこちらを見て、語気を強めて俺に言い放つ。


「何ジロジロ見てんのキモっ!こっち見んな!これだから変態は困るのよねー」


 前言撤回!やっぱりムカつきます。


「それよりも、翔太。なんでそんなに驚いてるわけ?」

「いや、レイスが俺と同い歳だなんて思ってなくてさー。てっきり小学生ぐらいかと……」

「そうよ。翔太も含めて私達3人とも同い歳なんだよね。まあ、確かに、レイスは身長も小さいし、童顔だからね〜。翔太が、そう思うのも無理ないわ」

「なんだよ!子供扱いすんな!」


 ムッとした表情をするレイス。

 しかし、その表情も子供っぽくて愛らしく感じる。


「というか、翔太。杖と箒は買ったの?」

「あっ!いや、杖は買ったんだけど……箒のこと完全に忘れてた」

「忘れてたぁ〜!ほんとっバカ!ありえない。まあ、いいわ。明日の入塾時には、たぶんいらないし明日買えばいっか」


 俺はルーナの言葉にふと疑問か浮かぶ。


「ちょっと待って。入塾って何のことなんだ?」

「あー、説明がまだだったわね。翔太は、明日からラグーン魔術教会が運営する魔術塾に入塾が決まってるの。プロの魔術師になるためにね。ちなみに、レイスもここの塾生で魔術師候補生よ」


 レイスは白い歯を出し、満面の笑みで俺にピースしてくる。


「なあ、ルーナ。プロの魔術師ってなんだ?ラグーンの街の人はみんな魔術が使えてるし、プロじゃないのか?」

「みんな、22歳までは、基礎の魔術の知識を習うの。そこから、選りすぐられた20人が魔術塾に入塾を許可されるってわけ。魔術塾では、対魔術戦で必要な魔術の知識を1年で習得するのを目的としているの。プロの魔術師っていうのは、魔術都市ラグーンで暮らす人々が安定して、そして幸せに暮らせる社会を守っていく魔術師のことなの」

「つまり、街のヒーローになれるってこと!」


 レイスがニコニコしながら俺の顔を覗き込む。


 ほんとに同い歳なのかと思わず疑問に思う。

 俺の世界の同い歳の連中は、この歳になってまでヒーローになれるとか発言するやつはほとんどいない。


 そんなレイスの事を放っておいて、ルーナはさらに説明を続ける。


「そして、1年間知識を学んだ後に、魔術試験が実施され、合格したものだけが、ラグーン魔術協会の直属の魔術師になれるってわけ。あっ。ちなみに、しょーたは転入だから3ヶ月でプロになってね」

「いや、待て待て。魔術も何も知らない奴が3ヶ月でプロの魔術師なんて無理だよ……」

 と言った瞬間、ルーナは俺の太ももを思いっきりつねり出した。


「はあ?何甘いこと言ってんの?3ヶ月で絶対プロになりなさい?私のメンツに泥をぬるつもり?ねぇ?わかった?絶対なりなさいよ?ねぇ?」


 つねる力が、だんだん強くなっていく。


「痛い痛い!わかった、分かったから。つねるのやめて」


 あまりの痛さに涙目になる俺は、両手を合わせごめんのポーズを取る。


「分かればよろしい」


 つねる手を止め、再びご飯を食べ出すルーナ。

 俺はつねられたところを優しくさすり、痛みを和らげる。

 一方のレイスはというと、涙目の俺を見て爆笑している。


「てか、何でルーナは魔術教師なんだ?俺とレイスと同い歳だろ?」

「ルーナは、その才能が認められて、1年早く入塾して、プロになったんだよ。それに、魔術教師にまで選ばれた。つまり、魔術師のエリートってわけ」


 ため息をつき、飽き飽きとした表情で説明するレイス。どうやら、何回もいろんな人に聞かれてこの事を説明していたんだろう。


 一方のルーナは、食べる手を止めて、「どうよ、私を敬いなさい」と言わんばかりのドヤ顔で俺の方を見てくる。


 俺は、そんなルーナの態度が癪に触って、無視して、定食に黙々と手をつける。

 すると、レイスが足をバタバタとさせて、俺にちょっかいをかけてくる。

 相変わらず行動が子供である。


「どうしたんだ?レイス」

「ねぇ。翔太、お風呂行こうよ」

「お風呂か……」


 俺がそう言った直後、一足早く食べ終えたレイスは、食べてる途中の俺の手を引っ張って、無理やり大浴場へと連れて行った。


 それからというもの、レイスの言う事なす事、全部やらされた俺は、自分の部屋に戻るなり、ベッドに倒れこみ、すぐに眠りについていった。

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