ルーナとレイスと俺
「へーもしかして、この人がルーナが別世界からスカウトしてきた魔術師候補生ってわけか。どうりで何も知らないと思ったよー」
「そうよ!なんか文句あんの!?」
「文句なんて無いよ。むしろ、僕、この人好きだし」
少年はルーナに向かってウインクをした。
「好きって、いや、おっ、おかしいでしょ!男が男に好きって……レイス、そっちの趣味なの」
少年の発言に動揺しているのか、声が裏返っているルーナ。
「いやいや、そういう好きじゃないから。友達として好きって事だよ。ほんと、相変わらずルーナは、単細胞だよね」
「何よその言い方!バカにしてんの」
そんな2人のやりとりを、俺は踏まれ続けたまま聞いていた。
だか、この状況はさすがにカオスだ。
とにかくまともな状況に戻さないといけない。
俺は、恐る恐るルーナに声をかけた。
「あの〜お二人さん。そろそろ俺のことも考えてくれても……何か周りから冷ややかな視線を感じているんだけども……」
俺の言葉を聞いたルーナは、「うっさいわね!」と言葉を吐き捨てると、俺を踏みつけていた足を乱暴にどけた。
「イテテテっ。やっと解放された」
俺は、自分の頭を優しくさすりながら、斜め上の方を見上げた。
俺にしていた行動を周囲の人達に見られ、さすがに恥ずかしかったのか、ルーナは顔をタコのように真っ赤にしていた。
そんなルーナの表情を見て、俺は不本意ながら再びカワイイと思ってしまい、思わず頬が緩む。
「何ニヤニヤしてんの、翔太!マジでキモい!てか、なんでレイスと一緒にいるわけ!」
地面に正座したままの俺に声を荒げて言うルーナ。
まるで説教を受けているようだ。
そして、何よりも、キモいと言われた事が俺の中でかなりこたえてしまい、そのままガクリとうなだれてしまった。
そんな俺の右肩をポンポンと誰かが軽く叩いた。
後ろに目をやると、そこには満面の笑みで俺を見る少年がいた。
「君、翔太って言うんだ!よろしくな、翔太!」
そう言うと、少年ことレイスは正座をしたままの俺の両脇を持って、軽々と俺を立たせた。
「おう……よろしく、レイス」
俺は笑顔のレイスと握手を交わす。
この世界で、俺の2人目の知り合いができた。
転入したての学校でようやく友達が出来たような感覚で、俺は少し照れ臭くなる。
しかし、俺の背後からは、嫌なオーラが漂ってきた。
「コラー!私の話を無視するなー!!何で2人が一緒にいるのって聞いてんの!翔太、答えないと、もう一回脳天にかかと落としくらわすわよ」
ルーナはそう言い放つと、いきなり俺の胸ぐらを掴んできた。
「わかった!わかった!話すから、とりあえず手を離して」
そう言うと、ルーナは舌打ちをして不服そうな表情をしながら、俺を掴んでいた手を離した。
「で?早く話しなさいよ」
「俺が、廃墟街に迷い込んで、不良みたいな奴に絡まれてる所をレイスが助けてくれたんだよ」
すると、いつのまにか俺の横にいたレイスが頷きながら、口を開いた。
「そうそう。それで、頼りない姿の翔太を見て、何か面白いそうだし、カワイイな〜って思ったから、助けたついでにいろんなとこ遊びに行ったんだよ」
そう言うと、レイスはまた俺に抱きついてきた。
「こら!レイス、翔太に抱きつくな」
「え〜?もしかして、ルーナ嫉妬してんの〜?自分もしょーたにギュッてしたいとか思ってんの〜?」
レイスはニヤリとしながらイタズラっぽくルーナに言う。
「べっ、別に嫉妬なんかしてないし、そんな感情1ミリも湧いたことないわよ!こんな何の特徴も才能もない奴に私が惹かれる訳ないじゃん!私は才能のあるイケメン好きなの!」
レイスの冷やかしにムキになるルーナの顔は、見る見る真っ赤に染まっていった。
ルーナが嫉妬してた?
いや、それは無いだろう。
でも、その反応ってやっぱり……。
嫉妬されたと少しでも思ってしまったせいで、俺も顔が赤く染まっていく。
「なに顔赤くしてんのよ、翔太!ほんとキモい!とにかく、早く行くわよ」
「えっ?どこに?」
「決まってるでしょ!寮よ」
そんな事は初耳の俺は、キョトンとした表情をして、ルーナとレイスと共に寮へと向かうことになった。
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