ラグーンでの出会い(5)

 

 その少年の姿は、パーマあてたようなクセっ気のある髪の毛に髪色は明るい茶色で、目はクリクリしていて、カワイイ系の男子だ。


 まさしく、女子ウケ間違いなしの顔立ち。


「何だこのチビは。ガキがしゃしゃり出てくるとかじゃねーんだよ」


 奴らは大声で笑い出した。


「フッ。テメェらの方がガキなんじゃねーの?3vs1って……マジで笑えるわ〜」


 そんな挑発に動じないかのように、その少年は嘲笑い反論した。


「何だテメェ。調子乗ってんじゃねーぞ!こんにゃろー!」


 癇に障ったのか、3人組の1人が少年に殴りかかって来た。


 しかし、少年はヒラリと男の拳から軽やかにかわす。


「どうしたの〜?そんなもん?マジで弱いね」


 ニヤリと笑みを浮かべて挑発する少年。


「この野郎!ガキがいきがってんじゃねーぞ!」


 再び男が拳をその少年に向けた。今度は少年の顔面へと。

 しかし、またしても少年は軽やかに避けると、今度は反撃とばかりに、相手の懐にスルリと入り、男のみぞうちに拳を入れる。


 強烈な痛みに相手の男は一瞬にして地面に倒れこむ。


「なぁ。もうおしまい?つまんねーよー」


 少年は握りしめた拳に息を吹きかけて、退屈そうな顔をしていた。


「クッソ!ナメてんじゃねーぞ」


 すると、もう1人の男が、その少年の体を封じようと飛びかかって来た。

 それもこれまたヒラリと避けて、今度はその男の腹に膝蹴りをお見舞いした。

 相手の男は、そのまま地面へうずくまる。


「おい!ガキ!そんなにケンカが強くてもよ〜、俺には魔術があんだよ。こいつがどうなってもいいのか?なあ、なあ?」


 俺の頭に杖をつけている男が、焦っているのか声を震わせながら少年に言った。

 そして、杖の先で俺の頭の横っちょをドリルのようにグリグリとし始めた。


 俺は、歯をくいしばり痛みに堪える。


 そんな光景を見ていた少年は、クスクス笑い出して、まるで何も恐れていないかのように余裕の表情を見せた。


「はぁーあ。ほんとウケるわー。お前の方こそ俺の事ナメてんでしょ?」


 すると、少年は不敵な笑みを浮かべて自分の背中に手を回し何かを取り出した。

 

 少年の右手に握られていたのは銃だった。

 洋画のアクション映画で出てくるような、自動拳銃。色は、メタリック調の水色。


「お前……まさか魔銃師……」


 その銃を見た男は思わず目を見開く。

 恐らく驚きと恐怖を感じているように思われた。


「その通りだよん」


 少年はその男を見つめながらニヤリとして、銃口を男に向けた。

 そして、少年が静かな声で言い放った。


「術式構築」


 すると彼の銃口に、何やらアルファベットのような文字がリング状に展開されているのが見えた。


 おそらく、ルーナが説明していた術式とはこの事なんだろう。


「はっはっ!いいの〜?このまま発動しちゃって〜。このままだとお前やばいことになっちゃうよ」


 少年はイタズラっぽい表情を男に向ける。

 それは、まるでゲームをしているかのように。

 

 男の頬からは滝のように汗が流れ落ちる。

 俺の顔や肩に滴り落ちて来ている。


(うっわー汗気持ち悪い。これがかわいい女の子汗だったら。例えばルーナ……いやいや、今そんな事考えてる時じゃねぇ!てか、あのガキ何楽しんでんだよ!頼むから早く助けろよ)


 俺の頭の横っちょはグリグリとされたままだ。

 地味だが、強烈な痛みがどんどん増していく。


「ガキの魔術なんて、ただのお遊びみたいなもんだろ。発動させろよ、勝手によー!」


 男は、それでも強気にその少年に言い放つ。

 しかし、男の声は完全に上ずっている。


「じゃあ、遠慮なく……術式解放」


 少年は、ニヤリとしながら銃のトリガーに指をかけた。


 その瞬間、突如男はバタリと地面に倒れた。完全に気絶している。


 一瞬の出来事であった。


 男から解放された俺はホッと胸をなでおろす。

 すると、少年がこちらに勢いよく走って向かってくる。


 突然の出来事に俺は、恐怖を感じ、咄嗟に目を瞑った。


 数秒して目を開けると、目の前には先ほど同じ景色が見え、俺は自分の存在を確認することができた。


 しかし、何かが張り付いているのを感じ、下の方に視線をやると、少年が俺の腰にギュッと抱きついてきた。

 そして、その少年はキラキラした目で俺を見つめている。


「なあなあ!俺、かっこよかったよな!なあ!」


 満面の笑みを俺に向ける少年。


「えっ……」


 訳のわからない状況に、顔がひきつる俺であった。

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