第19話 犯行過程 最初の殺人
深夜0時を過ぎ1時になろうとしていた、解体寸前の誰もいない廃団地を男はずんずんと進んでいく。
「あのビデオはどこで手に入れた」
移動の最中、男に問いただした。
「主犯の1人に金銭に困った馬鹿がいてねアングラなサイトで売りさばいていたのさ」
「一体どいつが?」
「推測だが長丘だろう、下調べであいつが一番金に困っていたからね」
拳に力が入る、3人と松野に対する憎悪が己の内に風船のように膨れ上がっていくのがわかった。憎悪という名の燃料が病に侵された身体に力を与える。
五階にまで上がるとある一室に入っていった。
「そこは危険だからこの端を歩いてくれ」
男が土足で歩くフローリングに妙な点に気づく、携帯で照らしてわかったが途中から木の材質が違うのだ。
「窓際まで来てくれ」
男の指示通りに窓際に向かう。
「これを耳につけてくれ、今から君にある人物に対面してもらう。」
一体誰が来ると言うのだろうか?ひとまず彼の指示に従う。
「わかった、次は?」
「これを持ってここで待っていてくれればいい、その補聴器から指示する」
そういうと彼は謎の封筒を私に寄越し部屋から出た、しばらく待ちぼうけをくらっていると補聴器から彼の声がした。
『ターゲットが5分ほどで到着する』
誰かが
「ここにいたか」
スーツ姿の生え際が気になる男がアタッシュケースを携えていた。
「例の写真はその中か?金は用意した早くネガも一緒に寄越せ」
スーツの男が寄越すように迫る、私は状況が飲めず困惑した。
『封筒を相手の届かぬ位置、君の目の前に置いてくれ』
彼の指示通りに床に置く、先ほど違和感を感じた床だ。
「……チッ」
スーツの男が舌打ちし封筒に近づいた次の瞬間、封筒諸共男の姿が消失した、床が抜けたのだ。男の悲鳴は不気味な音でかき消されその場に沈黙が広がった。
「おい、一体何をしたんだ?!」
マイクもないのに彼に応答を求める、また通路側から靴音がする。
「成功だ……」
戻ってきた彼が一室に空いた大穴を覗きこんでそう呟いた。
「足元に気をつけてくれ」
落ちないように気をつけながら彼のいる方へ向かう、彼の表情は満足気だ。
「さあ、一階に戻ろう、あとこれを」
階段を降りる最中、ビニール袋を手渡される、さっきまでいた部屋のちょうど真下の1階の部屋に来た。
「おめでとう。まずは一人目だ」
一室に広がるおびただしい量の血と肉片がブルーシートの上にぶち撒けられていた、悪臭に思わずさきほどもらったビニール袋に嘔吐する、ついさっき吐いたばかりで胃液しか出なかった。
「……はぁ……はぁ……一人目?」
彼の台詞が気になり質問する、だが余りに酷い状況の為かその一言しか口にすることができなかった。
「そうさ、このぶち撒けられた肉片こそ君が殺したかった男の1人、中嶋 景本人だからね」
予想は的中した、声が中々出ないでいると彼は肉片の側に寄った。
「ブルーシートをもう少し大きくしよう、まさかここまで飛び散るとは……」
「だがピアノ
人が絶句してる最中、男は黙々と殺人現場を観察する。
「彼が持って来たキャッシュはありがたくいただくとしよう」
ある程度観終わると大きなゴミ袋を二重にしブルーシート諸共肉片をゴミ袋にしまいかなり大きなスポーツバッグに詰めてしまった、次に天上にある血濡れのピアノ線が張り巡らされた木枠を折り畳んだ、中嶋が持っていたジュラルミンケースは無事だったらしく木枠をたたむ際に上から落ちてきた、中身はどうやら現金らしい。
折り畳んだ木枠を肉片を入れたスポーツバッグに一緒にしまい込みブルーシートからはみ出た少量の肉片と血液は彼が携帯していたペットボトルの水で雑に洗い流された。
「さあ、一刻も早くここから出よう」
彼の指示に従い、スポーツバッグとジェラルミンケースを持って団地から外に出た。
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