第13話 血染めの誓い
地獄は本当にあるのだろうか?否、地獄は我に在り
恩讐を復讐を報復を報いを
これは裁きだ
これは成敗だ
これこそ彼女の救いとなる
「彼女は還ってはこないのだよ?」
理解している
「ああ、君は素晴らしいヒトだ」
構わない、理解もいらない、救いもいらない。
だからこそ復讐する
「理屈も融通も社会も秩序も要らぬというのか?」
何度でも言おう、躊躇いの言葉はうんざりだ。
「よかろう、君に諺を進呈しよう」
「『当たって砕けろ』だ」
「いい表情じゃないか、行ってきなさい」
まるで優しき父親のように彼は囁く、私は暗き闇より浮上する。
~埼玉県、某日、某廃墟~
深夜2時、人も獣も虫も寝静まる闇夜を小太りの男が怖気づきながら彷徨う、頼りは彼が持つ携帯のみだ。
『オレノ
禍々しい言葉が彼の脳裏に過る、声の主と話したのはついさっきのはずなのに時間の感覚が判らない。
帰宅したとき妻と子供の返事が無かった、帰りが遅かったのもあり先に眠っているのだろうと軽く考えていた。
背後で玄関のチャイムが鳴る。
家の外に出ると誰もいない、郵便受けを覗いてみると茶封筒が一つ投函されていた、こんな夜更けに配達とは珍しい。
食卓に戻ると封筒が僅かに膨らんでいるのに気づく、大きさから見るに印鑑だろうか、封筒をひっくり返す。
人の小指だった、その指には見慣れた指輪もはめられている。
固まる私を他所に固定電話からコールが鳴る、恐る恐る電話にでる。
『サイコウノ
身が震えるほどの機械音声に似合わぬ憎悪に満ちた声
『キサマノ
嘲笑う声が耳元で響き続ける、地獄の悪鬼の方がまだましだと思えるほどに
こうして男は為すがままに廃墟に辿り着いた
暗い夜闇を彷徨い歩きついに彼は辿り着く、コールが鳴る。
『
彼は奔走した、大切な人のために
そして彼は部屋に辿り着いた、暗がりに露骨に置かれた一つの望み、
彼の断末魔は廃墟の団地全体に響いた。
「さようなら、わが友よ」
更に某日、とある男が早朝の寒空を歩む、吐息は冷たく、心が弾む、誤算もあったがこれで全てに決着がつくと。
彼は悠々と廃墟と化した団地を練り歩く。
その表情には焦燥と衰微が伺えた、だが瞳の奥にはそこはかとなく達成感に満ち溢れていた。
地図を頼りに団地を練り歩く、冬を間近にして日差しは明るい。
彼の表情に焦りが現れる。
「無い、無い、無い、無い!!」
思わず声に出る、男の脳にこびりついた惨状が見当たらない、あるのは真っ白なこなの山、奴は間違いなく昨夜、断末魔を上げ絶命したはず、他の三人の結果から見ても助かる確率は皆無、仮に助かったとしても重傷は間逃れない。
「掛かれぃ!!!!」
突如廃墟に猛々しい騒音が響く、男は迫りくる脅威に抵抗した。
拳で
蹴りで
絶叫で
憤怒で
誇りで
嘆きで
そして男は抵抗虚しく取り押さえられた、彼の復讐と言う名の
時は今再び、断末魔の夜に戻る。
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