part 11 白日の下に
陽は沈みかかり怒声を上げる男がオレの前に立っている。
「何てことしてくれたんだ!?鹿屋!」
耳にタコが出来るほど、親の声より聴いた罵声が薄闇に響く。
「すんませんでしたぁ」
「ったく、事故が起きなかったからよかったものを!一歩間違えれば大惨事だったんだぞ!」
声のトーンが下がる、和戸の方が気になるようだ。
「もう罠の準備はできてますよ、望月警部」
「…何!本当か?」
至近距離で喚かないでほしい耳がキンキンする。
「……声が大きいですよ、望月警部」
「ああ、すまん」
「もう車に荷物は積んであります」
「
「ええ、後々、連絡させてもらいます」
警部が眉を潜める。
「お前の後々は信用ならんからなぁ……」
「大丈夫だって安心してよ」
「……しょうがない、泥船に乗ってやる」
何が泥船だ、失礼な。
「軍艦かもしれないよ?」
「軍艦とはまた、大きく出たな?」
彼が歯に噛む、彼の背後に気配を感じる。
「警部!やはりルミノール反応が出ました!」
何が『やはり』だ、見つけたのは私だっての。
「じゃあ、後よろしく、次行くぞ、和戸君」
そういうとワタシは足早に歩いて彼を導いた、だが彼はもたもたする、時間がないと何度言わせばわかるのか?
「おい、ぼーっとするな、置いていくぞ?」
「あっ、はい」
彼はついてこれたらしい、華奢な見た目に似合わず案外タフなものだ。
「そういえば、次に行くってどこにいくんだ?」
「ああ、4人目の犠牲者が出るかもしれない」
「もしかして……続くのか!?陰惨な殺人が!」
テンション高いな
「それも復讐殺人だ、私の推理が正しければ次の犯行現場はすぐそこだ」
ひたすら演技に勤しむ。
「後ろのこれは?」
そこに気付くか、察しもいいらしい。
「ダンボールだ」
「違うそこじゃない、中身のことだ」
運転中にペラペラ喋るな、うっとおしい。
「それも後で説明する、私のやることは、いや今行おうとしていることは犯人を確保するのでなく4番目の標的を救出することだ、それこそがこの用意周到な完全犯罪を計画した犯人を捕まえる最短ルートだ」
運転に集中したいのにとなりで子供のように目を輝かせている男のせいでやたら
「よし、着いた」
そうこうしている内に車は目的地に到着してしまった、冬も近づいてきているうえに真っ暗な夜、そして廃墟、お化けの一つや二つ出てきそうだ。
「人が居ても声を上げるな、気配を消して昼間見た現場と同じ条件が整っている場所を探すんだ」
自分に言い聞かせるように和戸に伝える、彼は無言で頷く、声を出せ、動けよ。
「ぼさっとしてないで早く手伝ってよ」
怪しい者を見る目つきでこっちをただ黙ってみている。
「なんだい?これ」
「ああ、カモフラージュって奴さ」
私の自信作に悔いるように見る。
「全部100均で揃えた」
私の傑作に見入っていた彼の表情が変わる、とても聞きたそうだ。
「聞きたいなら教えるけど?」
彼の表情が固まる。
「いえ、大丈夫です」
「ふーん、あっそ」
彼は鼻を鳴らすと素っ気ない返事を返した。
「それ、車に被せておいて」
「は、はい」
彼の表情が暗がりでも解るぐらい明るい表情になる。
「後は車で見張るだけ、なっ簡単だろ、わかったならさっさと乗った乗った」
少々雑な言い方になってしまった、思わず帽子を脱ぐ。
車内に沈黙が続く、私はジッと廃墟の方を監視し続ける。
「くしゅん」
車内とはいえもうじき冬なこともあり確かに寒い、思わずクシャミをしてしまったらしい。
「大丈夫か?ダンボールの中に毛布があるから寒いならそれ羽織れよ」
少し眠そうな表情で彼は毛布を受け取る。
そういえばずっと歩き続けて情報を探してくれていたのだ、
しかもたった一人で、
もしかしたら、あまり悪くない奴かもしれない。
嗚呼、彼と共に戦いたい。
「貴方は………」
「もしかして女性ですか?」
私の頭の中は真っ白になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます