第21話 犯行過程 第2、第3の殺人
問題であった誘拐に関しても彼の用意は完全なものだった。
声を変えるヘリウムガススプレー
強化スタンガン
手足を縛るロープ
自分のサイズに合った市販の服、手袋、ニット帽
サングラス
これらの用意に加えさらに驚かされたのは住宅地や家の監視カメラやセキュリティをジャミングする装置まで準備していた。
拉致した後に警備システムが機能しなかったあたり彼の言っていたことが正しいことが理解できた。
チャイムを鳴らし出てきた妻をスタンガンで気絶させ指輪を奪取、第1の殺人で手に入れた指に指輪をさせて食卓に置き、住宅に潜入乳飲み子の子供と妻を車に乗せボロ別荘に監禁した。
すぐに戻りターゲットが帰宅したところで電話をかけ、犯行現場におびき寄せることに成功した。
「5階に行け、ベランダに置いてある鍵を取れ」
電話越しに響く断末魔、速やかに死体を回収し別荘の焼却炉で焼却した。その次の日に最初の犯行現場の解体作業が始まった、2番目も追って解体される予定だった。
『おめでとう、後二人だ』
「ああ、次は長丘だ、脅し道具が手に入らなかった」
そう、2回目の殺人に問題が起きた、脅迫に使う指が運悪く手に入らなかったのだ。
「確実に指を手に入れる」
『くれぐれも気をつけたまえ、長丘は一筋縄ではいかないぞ』
「十分わかっている」
『頑張りたまえ』
使える現場はもう数が限られていた、次の団地は付近に住宅街があり速やかに行動を起こすことにした。
長丘をおびき寄せるのは簡単だった、麻薬の売人をしているためだ、連絡先に客を装い待ち合わせ場所を団地の5階しスタンガンで気絶させる、指を切断してから殺害する計画に変更することにした。
だが予想外の自体が起きた。
「あんた、本当に客か?」
スタンガンの届く距離まであと少しの所で長丘の足が止まる。
「ヤクを求める割に真人間に見えるぜ?あんた、この仕事をしてたらやってる奴やってない奴の見分けがつく」
長丘は話ながらも距離を置く。
「少し前からな、二人の常連から連絡がめっきり来なくなっまってよ」
「……それで?」
奴は闇夜でわかるほどの憎たらしい笑みを浮かべていた。
「どうやって真実にたどり着いた?仲嶋がスケープゴートを立ててただろう?」
拳に力が入る。
「まさかあれを見ちまったか?しまったなぁ、金策とは言えまずか……」
長丘が喋り切る前に手が出ていた、長丘の胸倉を掴み首を絞める。
「……へへ、やっぱりテメェだったか!大鳥ぃ」
蹴りが腹部に入り掴む力が抜ける、突き飛ばされ床に転がる。
「お前だろ?仲嶋と陽道を
足で身体を押さえつけられる、手にはポケットナイフが握られている。
「あ〜あ、こうなるなら瑞穂にもモザイクをかけておけばよかったなあ」
怒りが湧き上がる、何故こんな奴らに彼女を殺されなければならないのか?
「ミイラ取りがミイラになるってか?あばよ復讐者!!」
ナイフが振り下ろされようとした時、木片に手が届く。その木片を長丘の足目掛けて突き刺した。
「ぐあ!」
痛みのあまりか転倒する長丘、拘束していた足が離れそっと立ち上がり今度は自分が長丘の手を踏みつけ手にしていたナイフを取り上げる。
「たっ助けてくれっ!!」
立場が逆転した途端命乞いに走る長丘。
「……」
「金ならやるからっ!」
見苦しい命乞いが続く、土下座する長丘の手に奪い取ったナイフを目いっぱい突き刺す、ナイフへ手を貫通し廃墟のフローリングに深々と突き刺さった。
「ぎゃああ!……!」
言葉にならない悲鳴が廃墟に響く前に喉首を絞め悲鳴を止める、長丘の目には恐怖で涙が溢れていた。
「命乞いは彼女もしたはずだ、お前たちは彼女に情けをかけたか?後ろを見ろ……!」
長丘の顔をベランダ側に向けさせ大穴を覗かせた、ナイフは突き刺さったままなので抑えた手から苦悶の声が漏れた。
「
抑えた手から漏れる声に力が増す、ポケットから自前で用意したナイフでまず自由の効く方の手の方の肩に何度もナイフを突き立て使いようのならないようにし次に長丘の薬指に刃を当てノコギリのようにナイフで切り落とした、この時点で痛みのせいか力なく泣くだけだった。
薬指を切り取ったあと、突き刺さったナイフを手にかけた。
「じゃあなクズ野郎、地獄で彼女に詫び続けろ」
ナイフを勢いよく引き抜き長丘を穴に突き飛ばす。
断末魔は途中で途切れた、我に返った私は急いで1階に降りて死体の回収に走った。三度目の惨状、ブルーシートに手をかけようとしたその時だった。
遠くからパトカーのサイレンが鳴り響いた。
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