遺跡の街の魔法少女
ここは遺跡の街ルイン
地下に眠る巨大遺跡の上に作られた街だ。
街もそうだが、街周辺は地下だけでは無く、地上にも遺跡が残っている。
そして、遺跡には遺物と呼ばれる宝が多数眠っており、その遺物を求めるハンター達が集まる街でもある。
そして、その遺跡で発掘する遺物を巡って、日々ハンターが遺跡に潜っていく。
もちろん、それには危険が伴う。この世界には魔物という存在がいるのだ。
遺跡は不思議な魔力を有しており、魔物が寄りやすい性質があるのだ。中には災害を起こす強力な魔物も出ることがある。
危険は魔物だけでなく、遺跡内には罠が仕掛けられている場所もある。
それでも、その魔物の素材を含め、ハンター達は遺物を求め遺跡に挑み続ける。
ここルインは、そんなハンターを助けるために集った者達で造られた街なのだ。
その長い時間の中、ハンター協会と呼ばれるものが設立した。
これはハンターの仕事をやりやすいように補助・援助する施設であると共に、ルインの街の治安を守る施設でもある。
そんな冒険心を刺激されるルインの街に、あるお店がある。
その店内で少女がごっつい身体をした怖そうな男と話し合っていた。
「おいリリィちゃん、もう少し安くはならねぇか?」
「それは難しいですよ。これでも苦労して仕入れているんですから」
少女の名前はリリィ、14歳の少女だ。背は150cmに届かないぐらいでスタイルも年相応、髪はシルバーブロンドのツーサイドアップ、服装は白を基調とした可愛いらしい魔導士を思わせる服装だ。白のブラウスに白のフリルが付いた青いミニスカート、そこに腰ぐらいの丈の群青色のマントを羽織っている。
リリィは孤児なので親はいない。幼い頃、ここの店主に助けられ恩返しがしたいということで、ここで働き始めたのだ。
今ではこの店、骨董品屋アメリースでその店主と一緒に住み込みで働いている。
「仕方ねぇ、わかったよ。リリィちゃん。俺の負けだ」
「ふふ、ありがとうございます」
リリィの可愛らしい笑顔でハンターの男は少し照れてしまう。リリィは一部のハンター達の間ではアイドル的な存在なのだ。ハンターの男はちゃんと代金を支払い、品物を持って店を出て行った。
「アビーさん!今日は遺跡には行かないの?」
リリィはお客がいなくなったので、この骨董品屋アメリースの店主であるアビーを呼ぶ。
「ん~?今日は休むわ」
やる気のない男の声が居住スペースである2階から聞こえてきた。
アビーは基本的にぐーたらした短めの灰色の髪をした26歳(独身)の男だ。背は170cm後半、見た目は良い部類に入るのだが、性格が怠け者で残念な男なのだ。服装も灰色か黒を基調としたダボっとした服をいつも着ている。それなのになぜか生活を数年はやっていけるほどの大金を持っていた。その昔、遺跡の遺物で一山を当てたとか。
今では住み込みで働くリリィに店を任せて、毎日ぐーたらと過ごしているのだ。
「今日もでしょ。それなら店番は任せるから、私が採取に行ってきますよ?」
「ああ、頼む。あ、その前に」
下に降りて来たアビーが眠そうな顔でリリィに近付いてくる。そして、いきなりリリィのスカートを捲った。白いレースの可愛らしいパンツが露出する。
「~~っ!な、何を・・やっているのですか?」
リリィは羞恥に耐えて、こめかみをピクピクさせながら、声を抑えながら聞いた。
「ん?いやぁ、新しい下着を買ったってこの前言っていたから、どんなの買ったのかって気になってな。お、白のレースか。なかなか似合ってるぞ」
「~~~っ!見なくていいです!!」
バチンッ!
「がはっ!」
リリィのビンタがアビーの顔面に炸裂する。アビーは何かとリリィにイタズラをしたり、最近は少しエッチなこともしてくるのだ。
「それじゃっ!行ってきますねっ!」
「あ、ああ、いってらっしゃい」
リリィは顔を赤くして勢いよく扉を開けて外へ出ていく。これはこの店では日常的な光景だ。こんなことをされても恩人であるアビーをいつも許してしまうのがリリィなのだ。
骨董品屋アメリースはルインの街の端の方にある店だ。すぐ目の前には川も流れているので水はもちろん、食料もそこから魚を釣ったりもしている。因みに釣りはアビーの趣味だ。
遺跡の入り口も比較的に近くにある。が、リリィはある理由で出来るだけ一人で遺跡には入らないようにしている。それでも遺跡の近くには色々な物が出土するので、遺跡に潜らなくてもある程度の遺物が落ちていたりするのだ。リリィはこれを拾い集め、店で取り扱うのだ。もちろん、草花や鉱石等も売れる物は拾っていく。
遺跡の遺物の中にはオーパーツとも呼ばれる物がある。これは遥か昔の高度な技術で作られた物だ。それらを売ってアビーとリリィは生計を立てていた。
本来、オーパーツとそうでない遺物はハンター協会にいる鑑定士ではないとわからないのだが、リリィはなんとなくそれがわかってしまうのだ。もちろんアビー以外には話したことはない。
(あ、これは売れそう)
リリィは一つの鉱物を拾う。これは武器や防具の材料になる鉱石だ。店に並べるのに問題はない。
ガサ!
「っ!」
草むらから1m程の猪の魔物が姿を現す。
魔物は魔力に惹かれる特徴を持つ。そして、人間は他の動物より魔力量が多いとされているので、魔物から狙われやすい傾向にあるのだ。
「炎よ・敵を・打ち抜け・ファイアボール!」
リリィは落ち着き、こちらに突進して来ようとする魔物に魔法を発動させる。魔法の種類は火属性の下位魔法に分類されるものだ。
ボオゥ!
リリィの手の先からリリィと同じ大きさの炎球が出て猪の魔物に直撃する。魔物の頭が丸焦げになり一撃で絶命する。
この世界での魔法は詠唱と魔力制御で魔法の種類と威力を調整するのだ。
「ふぅ、なんとかこの威力で抑えられた」
リリィは魔法使いなので、魔物が出ても対処が出来る。もちろん、魔物の素材も売れるので持ち帰る。
「これは送ろうかな」
リリィは左手の中指に付けている指輪に魔力を流して、指輪のオーパーツを起動させる。すると、指輪に嵌められた小さな宝石が輝き始める。そして、指輪を付けてある左手で、その倒した猪の魔物に触れると、指輪に吸い込まれるようその姿を消した。
「ぎゃあーーーー!!!」
なにやら骨董品屋アメリースの方から男の悲鳴が聞こえたような気がしたが、敢えて無視する。
この指輪のオーパーツは一方通行の転送魔法が込められている。登録した場所に一瞬で物を送ることが出来る優れものだ。
先程の悲鳴は恐らく、店の地下にある転送先の倉庫に猪の死体が急に姿を現したのでアビーが驚いたのだろう。
因みにこの指輪のオーパーツ。名前をゲートリングという。便利な物なのだが、使える者は数少ない。理由は人の持つ魔力の総量だ。ゲートリングの起動にはかなり魔力を必要とするのだ。リリィは魔力の総量が多いので普通に扱える。他に使っている者となると、熟練のハンターの中で一握りいるぐらいだ。
「さあ!今日も頑張るぞ!」
リリィはこうして今日も辺りを散策して、採取をするのだった。
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