少女、ミリヤムとの戦い

「せっかくここまで来てくれたのだから、貴方の魔力を早速ちょうだいするわ」


 ミリヤムはリリィを見て言ってくる。


「私の?」

「ええ、貴方の力は見せてもらったわ。それだけの魔力があれば協会を潰すのは容易だもの」


 ミリヤムが言ったことはロイス達と話していたことと一致していた。


「そんなことさせると思うのか?」

「ふふ、この娘達がいれば可能だわ」


 ミリヤムがそう言うと数人の女性が二人を襲ってきた。


「下がっていろ」


 ロイスは一人前に出て、リリィを守るように剣を構える。


「女性を斬れるのかしら?」


 ロイスが剣を振ろうとした瞬間に、ミリヤムが呟く。その言葉にロイスが反応して、一瞬動きが遅くなる。


「くっ!」


 ロイスの動きが遅くなった瞬間に相手の攻撃が襲ってくる。ロイスは何とか剣で弾くが、体制が崩されてしまう。


「はぁ!!」


 ロイスは体勢を崩しながらも、相手の攻撃をよく見て、剣を走らせて耐える。


「へぇ、流石にあのロイスちゃんね。そこまでの男になっているなんて」


 ロイスの動きに感嘆するミリヤム。


「人形だとわかれば戦いやすいのだが」


 ロイスの懸念は人形以外が混じっていた場合だ。その可能性が捨てきれない今、ロイスにとって戦いづらくしょうがなかった。


「ロイスさん、全部人形です」

「なに」


 リリィはすべてが人形だと言い切った。その目は迷いが無い。


「わかった。ならばやりやすくなる」

「私も援護します」

「頼む」


 二人は短いやり取りをして、再び戦いを始める。


「猛き炎!清き水!母なる大地!天翔ける風!彼の者に祝福を!!エンチャントメント・カルテット!」

「助かる!」


 ロイスはリリィの強化魔法を受け取り、女性の人形に突っ込んでいった。


「あら?本当に女性だったらどうするの?」

「それはないです!」


 すぐさまにリリィがその言葉を否定する。


「そんなの分からないわよ」

「いいえ、分かります」


 リリィには人形だとすぐにわかる理由があるのだ。


(人形の魔力の鼓動・・・全て同じ動きをしている。あの水晶玉の魔力と同じ動き・・・)


 リリィの目には魔力の鼓動が感じられた。それはミリヤムの持つ水晶玉と同じ魔力の動きをしているのだ。


 本来、魔力の鼓動というのは普通の人には感じることが出来ない。だが、リリィにはそれがわかる。そして、その鼓動は全く一緒ということはまずありえないのだ。ここまで魔力の鼓動が揃っていれば、見ただけで人形かどうかなんて一目瞭然だった。


「っち!」


 ミリヤムは舌打ちをした。実際にリリィの言葉を信用して戦っているロイスにはもう迷いはなかった。実際に斬り裂くと血ではなく別の何かが切断面から出てきていた。もう、数で攻めようにもロイスを止められる手駒はいない。迷いに漬け込むしか方法が無かったのだから。


「ならば!」


 ミリヤムはいきなり両腕を広げた。


「な、なんだ」

「これは」


 すると、今まで戦っていた人形が突然力を失ったように倒れていった。


「さあ!貴方の力を見せなさい。ディアマティス!」


 ミリヤムが叫ぶと、頭上を飛んでいた大きな鳥が更に巨大化していく。


「ディアマティス・・・それがこいつの名前・・・」

「・・・・・・・いえ、たぶんあれの本体は水晶玉の方だと思います」


 リリィの指摘はロイスにとって予想外だった。あの鳥が本体で水晶玉は道具でしかなかったから。


「へぇ、この水晶玉が本体だとわかるの。でもどちらにせよ無駄よ」


 ミリヤムはそう言うと水晶玉を大きく放り投げた。それを巨大化した鳥ディアマティスに食われてしまう。


「これであれを倒さなくてはいけなくなったわ。まぁ、協会の犬が揃っていればどうってことない相手でしょうけど、今は貴方達二人。大人しく贄となりなさい!」


 ディアマティスは大きく羽を広げて、突風を起こし、リリィとロイスを牽制してくる。


「これではっ・・・近付けない!」

「それなら・・・大地よ・我らを・守護せよ・アースウォール!」


 リリィが魔法を使うと目の前に岩の壁が出来る。それはディアマティスの風を阻む壁となった。


「それが何だと言うの?やっちゃいなさい!」


 ミリヤムの言葉を聞き、ディアマティスはアースウォールごと潰そうと、二人を狙って突撃して来ようとする。


「横へ跳べ!」


 ロイスの言葉を聞き、リリィもロイスと一緒に壁の横へと身を投げた。次の瞬間、ディアマティスが壁を破壊し、通り過ぎていく。


 ディアマティスは直ぐに旋回をして、こちらに向かって翼を仰いだ。


「風よ・敵を・斬り裂け・ウィンドカッター!」


 リリィはその行動で発生した魔力の風を見逃さなかった。同じ風の刃であるウィンドカッターで迎撃をする。


 空中で風属性の攻撃がぶつかり合い、辺りを衝撃波が襲う。


「炎よ・仇名す者を・貫く・槍となれ・ファイアランス!」


 リリィは間を置かずに次の魔法を放つ。炎の槍はディアマティス目掛けて飛んでいき、見事に直撃し爆発を起こす。


「なかなかやるわね」


 ディアマティスに直撃したのに、ミリヤムは平然としていた。次の瞬間、爆発の煙が一気に霧散する。中からはディアマティスが傷一つない姿で現した。


「効いてない!?」


 リリィは驚きを隠せなかった。ファイアランスは火属性の中位魔法に当たるが、リリィの魔力で強化されたファイアランスの威力は通常の上位魔法に匹敵する威力があるはずなのだ。


 そして、ディアマティスは再びリリィとロイスを襲い掛かって来ようとする。ミリヤムは先程から動かずに、ディアマティスに命令を下していた。


(なんで自分は動かないの?いや、動けない?あの鳥を操っているの?)


 リリィは魔力の流れを見てみようとする。一瞬だが、細い繋がりの様な物が見えた気がした。


「ロイスさん!彼女を狙ってください!」

「だが!」

「こっちは何とかしてみます!」

「わかった!」


 リリィはディアマティスに向き合い、魔力を高める。ロイスはリリィに言われた通り、ディアマティスに背を向けてミリヤムの方へ走り出した。


「なに?ディアマティス!」


 すると、ディアマティスはリリィではなく、ロイスを狙い始めた。


(やっぱり!自分が狙われるとダメなんだ!)


 リリィは自分の考えが正しかったことを証明できた。それなら


「風よ・敵を・斬り裂け・ウィンドカッター!」


 リリィは再びウィンドカッターを唱える。風の刃はディアマティスを追いかけるようにして飛んでいく。それが見えたのか、ディアマティスはロイスを追うのをやめ、上昇してウィンドカッターを躱した。


 ディアマティスが回避したことで、ミリヤムは無防備になる。


「ミリヤム!覚悟!」

「くそ!」


 その間にロイスはミリヤムに迫り、剣を振ろうとする。


「な・・・んだと」


 次の瞬間、ミリヤムの影から一体の人形が出てきた。


「ふふふ・・・自分の守りを全て消すわけないじゃない。とっておきは最後まで取っておくものよ」


 人形はセレナの偽物だった。手にはナイフが握られており、それはロイスの腹部を刺していた。


「ロイスさん!!」


 その場に崩れ落ちるロイスを見て、リリィは叫んだ。


「お嬢ちゃん、貴方を守るナイトはもういないわ。私に魔力を渡してくれれば、命だけは助けてあげてもいいわよ?」


 ミリヤムは笑いながらリリィに問いかけてくる。


「・・・・・・それだけは絶対にない」


 リリィは落ち着きながら言う。


「そう、ならば痛い目を見てもらうわ。行きなさい!」


 ミリヤムの指示でディアマティスが再び襲ってくる。セレナの人形はまだ何かを警戒しているのか、ミリヤムの側に立っていた。


「きゃぁ!」


 リリィはすれすれで飛び掛かりを避けるが、通り過ぎる際の風に巻き込まれ転がってしまう。


(とりあえずあの鳥を何とかしなきゃ!)


 リリィは起き上がりながらディアマティスの方を向くと、すでに旋回を終わり、リリィの方へ突撃を仕掛けてきていた。


「あっ!」


 リリィは避けようとするが、ディアマティスの鋭い爪が肩を掠らせてしまい、血飛沫が上がる。


「ほら、もっと痛い目を見ることになるわよ」


 その後も何度も当たるか当たらないかの攻撃をされ、リリィはボロボロになっていった。


(痛い・・・でも倒れちゃダメ。私の魔力を狙っているのなら、あの人は私を殺せないはず)


 リリィはボロボロになりながらも、諦めてはいなかった。すでに服もずたずたに裂かれ、服の意味を成しているかもわからない。身体も至る処に切り傷が出来て、血だらけになっている。それでも、瞳には強い意志が宿り続けていた。


「・・・しつこいわね」


 それを見ていたミリヤムも、なかなか倒れないリリィに焦燥を感じていた。


「リリィ、何を狙っている」

「・・・アーシー」


 そんなリリィを見て、アーシーはリリィにだけ聞こえるように話しかけてきた。


「見て・・・分からない?」

「・・・・・・まさか」

「うん・・・自分でも驚くぐらい・・上手く出来たと思うよ」


 アーシーはリリィの辿ってきた場所を見て愕然とする。


「なぜこの魔法を知っている」

「・・・わからない。でも今の私に出来る反撃はこれしかないと思ったから」

「・・・・・・・」


 リリィは一人になった時から、あることを意識して避け続けていた。地上にいるとわかりづらいが、上から見ると一目瞭然だ。


 リリィが垂れ流した血。その跡がある紋様を描いている。


 アーシーと話している間に再び襲い掛かってくるディアマティス。


「次で・・・最後!!」


 リリィは血を流しながら、最後の力を振り絞るようにある地点へ跳んだ。それはリリィの描いた紋様の中心。


「いつまでも避け続けても変わらないわよ!」

「いえ!これで終わりです!」


 リリィはその場に両手を地面に付いた。


「契約は成った・力を具現せよ・彼方より此方へ」


 リリィが詠唱を開始すると、リリィの血の軌跡が赤く輝き始める。


「な、何よ・・・これは・・・。行きなさい!!」


 突然起こり始めた現象に戸惑いつつも攻撃を命令する。ディアマティスは命令に従い、リリィに襲い掛かるが、不思議な障壁に阻まれて弾き返されてしまう。


「無駄なこと。この魔法は禁術の一つ。詠唱中となれど魔力の奔流により近付くことは出来ない」


 その様子を見ていたアーシーは呟いた。そして、リリィの詠唱はまだ続く。


「我は命ずる・我が血を喰らい・破滅の槍と成れ」


 リリィの詠唱でリリィの周りに赤黒い槍が5本現れる。それは雷を纏っているように見える。


「五条の光と成りて・仇名す者を貫け・ブリューナク!!」


 リリィが最後の詠唱を唱えた瞬間。リリィの周りに現れた5本の槍は光の軌跡となり、一瞬にしてディアマティスを貫いた。そして、巨大な鳥のディアマティスの身体には細い5本の槍とは思えない程の穴が空いていた。


 更に、その上空にはディアマティスが飲み込んだ水晶玉が5本の槍にて突き刺されている所だった。そして、遂に水晶玉は空高くで5条の光の槍にて砕かれた。



「ば・・・馬鹿な。あの水晶玉にはかなりの魔力があるはず・・・。強度は魔力でかなりあるはずなのに・・・なぜ・・・・あの方はそう言っていたはずなのに」


 ミリヤムはその光景を信じることが出来なかった。この水晶玉を渡した人は魔力が集まれば、水晶玉は破壊されなくなっていく。魔力の分強化されると聞いていたから。


「リリィ・・・大丈夫か」

「う・・・うん。なん・・とか」


 魔法を放ったリリィも満身創痍の状態だった。しかし、セレナの人形も水晶玉が砕けた影響で、既にただの人形に成り果てていた。


「お前の・・・お前のせいでーーーっ!!」


 ミリヤムは狂った様にリリィに襲い掛かろうとするが、その動きは突然止まってしまう。


「な・・・なん・・で」


 本人もわかっていないようで、すでに起き上がれない状態になっていた。


「はぁはぁ・・・・どう・・しちゃったの?」

「恐らくあの水晶玉だろう。あれは魂のレベルで契約をしなければならないオーパーツのようだ」


 アーシーの説明では、ディアマティスを操れていたのは、水晶玉のオーパーツと魂のレベルで契約をしたから出来た芸当だということ。そして、水晶玉が破壊されれば、契約した本人の命もまた消えるということだった。


「でも・・・これで・・・・・アビーさん・・・・・は」

「リリィ!大丈夫か!リリィ!」


 リリィはアーシーの声を聞きつつ、意識が途絶えていった。



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「ここ・・・は」


 リリィが目を覚ますと首を動かして場所の確認をした。そこは何処か見たことがある場所だった。


「ハンター協会?」


 そう、リリィが眠っていたのはハンター協会の医務室のベッドだった。


「そうよ。目が覚めた?」

「セレナ・・・さん?」

「そうよ」


 目の前には寝たきりだったはずのセレナが椅子に座っていた。


「リリィちゃんが私を助けてくれたのでしょ?ありがとね」


 セレナはそう言って、寝ながらのリリィを抱きしめて来た。


「あれ?私は確か・・・」

「ああ、運んできたのはアリアよ。朝から隊長の姿が無かったから、街中を走り回っていたそうよ」

「そ、そうだったんですね」


 リリィは後でお礼を言わなきゃと考えた。


「・・・・あ、そうだ。アビーさんは」

「俺ならここにいるぞ」


 声がした方を見るとアビーが壁に寄り掛かり、こっちを見ていた。


「無事・・・だったんですね」

「まぁな、今回はお前とロイスに助けられたよ。っていたたた」


 説明している途中で腹を抑えて苦しみだしたアビー。


「しっかりと寝てなきゃ駄目ですよ。アビー殿」

「お前はどうなんだ!セレナ!っていつつ」


 痛みながらも抗議の声を上げるアビー。


「私は魔力の枯渇だけですからね。無理な運動をしなければ問題ありません」

「あ、アビーさん。今治しますから」

「いや、いいって。お前こそ魔力の回復に努めろ。それにまず治すならお前自身だ」

「そうよ。リリィちゃん。こんな傷だらけになって」


 その言葉を聞いて、自分が血だらけになるほどの切り傷を大量に貰ったことを思い出した。


「なんか思い出したら痛くなってきました」

「だからまずは自分を治しなさい。それと、服はこれを。傷だらけの身体に着せるわけにはいかなかったからね」

「はい・・・」


 リリィは布団を被っていたので、気が付かなかったが、服は服の意味を成さないほどにボロボロになっていた。まずリリィは自分にヒーリングを掛けた。そして、ボロボロの服を破るように脱いで、布団の中で器用に持ってきた服を着る。


「アビーさん、今治しますね」

「疲れてんのにありがとな」

「いえ、私はまだ大丈夫ですから」


 リリィはアビーと話しながらヒーリングをアビーに掛ける。


「でも、さっきまで気絶してたじゃない」

「ま、また何か無茶したんだろうがな」

「えっと・・・それは」


 リリィは危険な魔法を使ったことを言えなかった。


「まぁ、無事でいてくれたからいいけど」

「だな」


 セレナとアビーはリリィの無事を心から喜んでいた。


「そう言えばロイスさんは?」

「あいつなら腹怪我してるっつーのに、ミリヤムのことを調べてたぞ」

「なら後で治してあげないと」


 リリィはそう思い、ベッドから立ち上がった。


「もう大丈夫なの?」

「はい、怪我も治しましたので大丈夫です」


 リリィがそう言った時


「リリィ、目が覚めたか」

「ロイスさん」


 ちょうどロイスが医務室に入ってきた。


「実はミリヤムなのだが」

「ちょっと待ってください。ロイスさんの怪我を」


 リリィは説明に入る前にロイスの怪我を治した。


「ありがとう、リリィ」


 痛みが無くなったロイスはすっきりした顔をしていた。やはり、かなり痛かったようだ。


「で、話を戻すが、ミリヤムの腕に漆黒の花の入れ墨がされていた」

「あれ?それって・・・」

「ああ、闇夜の使徒の仲間であった可能性が高い」


 リリィはそれを聞きあることを思い出した。


「ミリヤムさんが倒れる前に『あの方が言っていた』って言っていたんですけど、もしかして水晶玉をミリヤムさんに渡したのは」

「そういうことだろうね」


 リリィは以前会った二人組の黒いコートの男を思い出した。


「っち、また奴ら絡みだったってことか」

「でも、こんなに期間も空けずに事件を起こしたということは、おの組織が本格的に動き出している。ということになるのかしらね」

「そうだな。一応今日中に総長に掛け合ってみるよ」

「総長って?」


 リリィは聞き慣れない言葉に疑問を持つ。


「総長は実質のこのハンター協会のボスね。一番のお偉い様よ」

「あれ?それはロイスさんでは?」

「あはは、違うよ。僕はハンター協会の第1部隊隊長で一番強いかもしれないけど、一番偉くはないんだ」

「すみません、なんか勘違いしていたみたいで」


 リリィは少し恥ずかしくなり、縮こまる。


「それより、リリィ。僕は君に謝らなければならない」

「え?」


 いきなりそんなことを言われて、リリィは戸惑ってしまう。


「後はアビーにもだな。二人共、すまなかった。僕はリリィに守ると言いながら、リリィより先に倒れ、リリィがボロボロになるまで戦わせてしまった。約束を守れなくて本当にすまなかった」


 ロイスは深々と腰から折って謝ってきた。


「ロイス、確かに守ると言った割には、リリィに怪我をさせ過ぎたかもしれねぇな」

「・・・・・・・」

「だが、お前なりに頑張っていたのはわかる」

「アビー・・・」

「俺はその約束を知らねぇ。それに先にぶっ倒れたのは俺の方だしな」


 アビーは笑いながらロイスの背中を叩いた。


「ロイスさんは守ってくれてましたよ」

「リリィ・・・」

「それに私があそこまでボロボロになったのは、自分が未熟なだけです。私は運動が苦手で、1人で使うための魔法の完成には仕方なかったことです」

「1人で使う魔法?」

「まぁ、少し賭けでしたけど」


 リリィはその魔法についてはこれ以上言わずに、言葉を濁した。


「・・・・はぁ、僕はもっと精進する必要がありそうだな」

「それは俺達全員に言えることだがな」

「はい。私も不意討ちに対応出来るようにならないといけません」


 ロイスの言葉にアビー、セレナと心境を述べた。


「それとリリィ、あの者にも謝罪をしておいてくれないか?」

「大丈夫です。すでに伝わっていますから」

「そうか」


 ロイスは小声でリリィに伝えてくる。先程の謝罪は既にアーシーには聞こえてるので、そのことをロイスに伝えた。


「リリィ、今回は本当に助かった」

「リリィちゃん、本当にありがとう」


 ロイスとセレナはリリィに再度お礼を言ってきた。


「んじゃ、帰るか」

「はい!アビーさん!」


 二人はそれとなく手を繋ぎ、アメリースへと帰って行った。



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「ただいま」

「お帰り、セレ姉」


 セレナがルインの街の自宅に帰ると、アリアが出迎えてきた。


「やっぱり先に帰っていたのね」

「うん、ちょっと疲れちゃって」


 実をいうと、セレナとアリアは同じ部屋に住んでいる。セレナは違う街に両親がいるが、アリアにはいない。


 アリアはこの街ルインで、ハンター協会に保護された子供の1人なのだ。居場所が無かったアリアは助けてくれた恩で、ハンター協会で手伝いを始めた。


 そして、10代後半になってきた頃に、色々とあり、ハンター協会の第1部隊に入った。


 そこでセレナと出会い、今の今に至るというわけだ。


「私達を街の中を走り回って探してくれたんだもの。しょうがないわ」


 セレナはアリアが走り回って探したと聞いている。それならば、疲れるのはしょうがないと考えていた。


 アリアはセレナが夕飯を作ろうとしている姿を後ろから眺めていた。


(私もまさか呼ばれるとは思ってなかったけどね・・・。まぁ、言わないとは思うけど、会いづらくなるなぁ)


 アリアはセレナの姿を見ながら、そんなことを考えていた。

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