少女、闇夜の巫女と

 リリィとアビーはアリアの操る炎の鳥の兵器で暗黒の太陽に乗り込むことに成功した。


「いてて、大丈夫かリリィ」

「う、うん」


 リリィとアビーはアリアの操っていた兵器である炎の鳥から放り出されていた。


「ご、ごめん・・・魔力がもう無くて」


 近くではアリアが人の姿も保てない姿で倒れていた。


「アリアさん、今魔力を」

「あ、ありがと」


 リリィはすぐにアリアに火の魔力を与えることにする。

 アリアは炎の鳥を操る際にほぼすべての魔力を使い切っていたのだ。最後の方は闇の魔法攻撃も何回か受けていたので、姿も保てなくなっていた。


「それでここはあの黒い太陽の中なのか?」

「だと思います。太陽っていっても燃えているわけではないみたいですし・・・。ただ闇の魔力が多いので気を付けた方がいいかと」

「そういやなんで俺は大丈夫なんだ?」

「それは我々がリリィの側にいるからだろう」


 答えてくれたのはアーシーだ。


「リリィは光の魔力を周囲に放つことで闇の魔力を中和している。離れれば、一瞬で我々も闇の魔力に呑み込まれてしまうだろう」

「なんかおっかねぇ所だな」

「それよりティアは」


 リリィの一番の目的は負の怨念とやらの討伐だが、友人である聖女クリスティアを救出することだ。彼女は負の怨念に侵されて操られていると聞いているので、早く見つけて解放してあげたい気持ちで、いっぱいだった。


「お、おい、リリィ、なんかヤバくないか?」


 徐々に周囲の闇の魔力が魔物の形を象ってきた。


「やるぞ!リリィ、頼む!」

「は、はい!エンチャント・ライト!」


 リリィはアビーの剣に光の魔力を纏わせる。


「いくぜ!!」


 アビーは近くの魔物に斬りに掛かった。光の魔力を宿した剣で斬り裂かれた魔物は、闇の魔力に戻り、霧散していく。


「光よ・仇成す者・撃ち抜け・ライトアロー!」


 リリィも遠くの魔物に向かって、光魔法を放った。

 何体もの魔物を光の矢が撃ち抜いていく。


 だが、倒しても倒しても次から次へと、闇の魔力が魔物に象っていく。


「これじゃ切りがねぇぞ!」

「アビーさん!下がってください!天の光よ・彼の者に・神の裁きを与えよ・ディバインロア!!」


 リリィの魔法は敵のいる場所を光で包み込んだ。

 この魔法はユルバン戦で使用した魔法だ。あの時は自分もろとも対象にして放った。

 しかし、今回はアビーやアリアもいるため、敵のいる場所だけを狙って放った。


 ディバインロアは闇の魔力を浄化する効果がある。そのため、魔物だけではなく、その場にあった闇の魔力さえも浄化していた。


「へぇ~、今のはディバインロアだったかしら?貴方の年でそんなの使えるのね」


 そこに聞いたことのある声で、聞いたことのない口調で話すティアが現れた。


「ティア!」

「てぃあ?ああ、この子の名前ね。でも残念。この子は既に私の支配下よ」


 そこにいたのは聖女クリスティアの姿を別の誰かだった。いつもの神々しい衣ではなく、肌の露出が少し多めの漆黒の衣を纏っていた。

 そして、そのティアの周りには今まで見たことがないほどの闇の魔力を纏っている。


「さてと、早速だけど光の魔力を持つ貴方には消えてもらうわ。私は貴方達が大嫌いなの。いつもいつも私と違って周りから敬愛されていて貴方達は」


 ティアが手を翳すと、魔法陣がティアの前に現れた。


「リリィ!障壁を張れ!」

「う、うん!光よ・我を守る・盾となれ・ライトウォール!」


 リリィの魔法が完成すると同時に、魔法陣から闇の奔流が放たれた。

 闇の奔流は障壁と衝突して、辺りに衝撃波が巻き起こった。


「す、凄い魔力」


 リリィは攻撃を防ぐことはできたが、一撃で障壁が消し飛んでしまった。


「っ!?」


 リリィが再びティアを見ると、次の魔法陣が形成され攻撃が解き放たれようとしていた。


「光よ・我を」

「遅いわ」


 再び障壁を張ろうとしたリリィに向かって、闇の奔流の2発目が放たれる。


「おら!!」


 その間にアビーが光の魔力を纏わせた剣で、闇の奔流に斬りに掛かった。


 闇の奔流は切り裂かれるようにして、アビーとリリィの場所を避けるように通りすぎていく。だが、闇の奔流の全てを切り裂くことは出来ず、アビーの身体に掠って赤い鮮血が舞った。


「アビーさん!」

「大丈夫だ」


 アビーは崩れそうになるが、痛みに耐えて立ち続けた。


「へぇ~、貴方のその剣。私の時代の産物かしら。この子を通して見てきたけど!今の技術じゃ出来ないと思うのだけれど」

「知るかよ!」


 アビーはリリィの前に出て、ティアと会話をして引き付けている。


「おい、リリィ。そいつは何だ?」

「え?」

「その手だ」


 アビーが小声で教えてくれたのは、リリィの指に嵌められている指輪だった。


「え、な、なに?」


 指輪にはアーシー達精霊から貰った核となる宝石と、ナハトから貰った透明の宝石が嵌まっている。

 その透明な宝石が淡く光っていたのだ。


「それは・・・」


 クリスティアがリリィの指輪を見て目を見開いた。


「何故それが此処にある!それは破壊したはずだ!!」

「は、はかい?」


 いきなり言われても、ただナハトから貰ったもので、使用用途がわからない物なので、リリィはきょとんとしてしまう。


「壊れていないのなら、また壊すまで!!」


 再びティアが手を翳すと、さっきより大きな魔法陣が現れる。


 その時、リリィの頭には不思議な声が響き渡るのだった。



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「はぁ!!」


 セレナが氷の魔力を纏わせた細剣で、巨大な岩の守護者ガーディアンに高速の連突を放った。


 守護者ガーディアンはセレナが最初に水の魔法で濡れていたため、全身が白い氷に包まれていく。


「風よ・水よ・連なれ・仇名す者・打ち砕く・雷槌を下せ・トールハンマー!!」


 そこに風と水の複合魔法のトールハンマーで雷の一撃を与える。


 雷の衝撃で守護者ガーディアンは何も出来ずに崩れていった。


『おおおおぉぉー!!!!』


 その光景を見ていた他のハンター達は歓声を上げる。多くの魔物が襲撃してくる中、このように士気を上げれるのはいいことなのだが。


『セレナちゃーん!!』

「・・・・・・はぁ」


 普段セレナの戦いを見ないハンター達からアイドルのように扱われてしまっていた。


「これはリリィちゃんの気持ちが少しわかりますね」


 セレナは少し恥ずかしく感じながら、再び魔物と向き合って倒していく。


 セレナは既に何体も守護者ガーディアンクラスの魔物も倒している。

 だが、倒してしばらくするとまたやってくるので、きりがなかった。


「街中に守護者ガーディアンが出たぞ!!」

「なんですって!」


 その言葉を聞いてセレナはすぐに後退して、連絡をくれたバンドに近付く。


「詳細を」

「は、はい!突如地面が陥没したらしく、その場所から守護者ガーディアンが現れたとのこと。数は不明ですが、複数いるのは確認しました」

「複数ですか。ここは任せてもいいでしょうか?」


 この場所には他にもハンター協会第一部隊のハンターもいる。セレナが抜けても対処はまだ出来る。

 それにここは人々は避難しているが、街中はそうではない。ここより優先度は高い。


「お任せ下さい。恐らく隊長にも連絡はいっていると思いますので」

「わかりました。では、よろしくお願いします」


 セレナもロイスと同じ様に街中へと走って行くのだった。

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