6.びしょぬれの夢

 夢は、無意識のうちに現実の体の状態を反映することがあるのだという。

 

 例えば、夢の中でトイレに行きたいときは、だいたい現実でもトイレに行きたい時だと相場が決まっている。

 そして、夢の中だと気づかずにそこでしてしまうと、朝起きるとおもらししている、という結果になる。

 ネットで調べてみたところ、特に飲酒時や、ストレスを感じた時に、こういうことはよく起こるのだという。


 と、すれば、私はストレスが溜まっているのかもしれない。恥ずかしいことだが、つい最近、私は成人しているにもかかわらず、3回立て続けにおもらしをした。

 おもらしをしたのは、1度目はトイレの夢を見た時。2度目はシャワーの夢を見た時。3回目はプールで泳いでいる夢を見た時だった。

 2回目と3回目はトイレの夢ではないが、おそらく、濡れたシーツの上に寝ている体の状態が夢の中に反映されたものだろう。

 共通するのは、いずれも水に関連する夢を見た時だということだ。

 

 そこで私は考えた。もし水の夢を見た時にすぐ起きるように気を付ければ、もしかしておもらしを未然に防ぐことができるかもしれない。

 水の夢を見たら起きる! 水の夢を見たら起きる! 私はそう自分に言い聞かせて眠りについた。

 

 そしてその晩、私は夢を見た。

 それは巨大な便器の夢だった。巨大な便器にぷかぷかと浮いた私。突然尿意がわいてくる。

 ――したっていいじゃないか! だってここは、便器の中!

 そう思った私だったが、その瞬間私は、ふと眠りにつく前のことを思い出した。

 そう、これはまさに、警戒していた水の夢ではないか!危ない危ない! あやうく用を足すところだった!

 私は間一髪で自分が夢の中にいることに気が付き、無理矢理目を覚ますことに成功した。


 目が覚めた私は、急いで毛布を剥ぎ、自分のシーツを見た。

 そこには、綺麗に乾いた真っ白なシーツがあった。

 濡れてない! やった! 実験成功だ!

 しかし、私はふと、おかしなことに気づいた。ベットが、なんだか不自然に揺れている。私は冷静になって周囲を見渡した。

 するとそこには、濁った水に浸かった私の部屋があった。そう、大雨によって近所の川が氾濫し、私の部屋は、ベッド以外すべて水没していたのだ!

 ベッドがプカプカと浮かんだ私の部屋は、まるで先ほどまで夢で見ていた便器の中の様だった。私は尿意を催した。

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