20.青い悲鳴

 窓の外から黄色い悲鳴が聞こえた。どうやら、有名イケメンタレントが近くでロケをやっているらしい。


「ねえ、黄色い悲鳴ってどうして黄色い悲鳴と言うのかしら」


 僕はエスプレッソをのみながら答えた。


「きっとカレーを吹き出しながら上げる悲鳴なんだよ」


「嘘つき」


 彼女は真っ赤なネイルの施された指を口元に当てて笑った。


「じゃあ、赤い悲鳴は?」


「きっと、ホラー映画みたいに顔を血で真っ赤にしながら上げる悲鳴だ」


 僕は答えた。


「黒い悲鳴っていうのもあるのかしら」


 彼女は僕の黒いズボンを見ながら質問した。


「きっと悪だくみしながら上げる悲鳴だな」


「じゃあ青い悲鳴は?」


 彼女は顔を上げ、僕の青いTシャツを見た。


「青ざめた顔で上げる悲鳴だな」


「そう、ところで」


 彼女は再び僕のズボンに目をやった。


「さっきからチャックがずっと開いてるわ」



 僕は青い悲鳴を上げた。


 

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