　男はある日、ネットサーフィンをしているとこんな広告を見つけた。

「これであなたもだまされない！詐欺に引っかからなくなる画期的な方法お教えします！」

　常日頃から自分を騙されやすい人間だと思っていた男は、すぐさまその広告をクリックした。

　そして、リンク先の記事を読み始めた。

　記事によると、著者は過去に「お金持ちになれる方法」というサイトをクリックしてしまい、膨大な料金を請求されたのだという。その経験を活かし、今度は彼が、騙されないための方法論を確立し、その内容を電子書籍で売っているそうだ。

「これは良さそうだ。電子書籍なら場所も取らなさそうだし買ってみよう」

　男はすぐさま「騙されない方法」という電子書籍を購入した。

　３万円という電子書籍にしては高い値段だったが、これを読んで何百、何千万もの詐欺被害を未然に防ぐことができるなら安いものだ。男はそう思った。

　しかし、電子書籍をダウンロードしてみたが、そこに書いてあった内容はホームページに載っていた体験談を水増ししたようなもので、何も目新しいものは無かった。また騙された。男はため息をついた。

「しかし、電子書籍を書く、というのは中々いい方法かもしれないな」

　男は自分のこの経験を生かした電子書籍を出すことを決めた。もうこれ以上騙されないように。

　数日後、とある女性がインターネット上にこんな広告を見つけた。

「詐欺の被害者がお金を取り戻す方法」

　騙されやすい女性はすぐさまそれをクリックし、著者の電子書籍を３万円で買った。

　しかし、女性はダウンロードした電子書籍を見て憤慨した。

「何よこれ！全然目新しいことが書いてないじゃないの！騙された！」

　３万円が口座に振り込まれたのを確認した男は口角を上げた。

「よかった。これで騙された分は取り返したぞ！騙されないためには、自分が騙すほうにまわるしかないんだよ！」

　その数日後、男はインターネット上でこんな広告を見つけた。

「効率よく人をだます方法」

　男はこれは願っても無い情報だと思い３万円を払ってダウンロードした。

　振り込まれた３万円を見て、女はほくそ笑んだ。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい