24.ダジャレ好きなオッサンと回らない寿司《寿司小説コンテスト》

寿司にまつわる思い出といえば、やはりうちの課長と寿司を食べに行ったときの話でしょうか。


 課長がある日突然寿司を奢ってくれると言い出し、普段はケチなのにどういう風の吹き回しだろう? と思いながらも、寿司につられついて行ったのです。


「小説投稿サイト『スシニギ』で寿司小説を書いたら入賞してね。その商品だよ」


 一万円分の寿司券を取り出す課長。


「へえ課長、小説で入賞するなんてすごいじゃないですか!」


「いやいや、たまたまネタが良かったんだよ、寿司だけにね!」


 言い忘れていましたが、課長は大の駄洒落好きなのです。



 私たちは都心の一等地にある寿司屋にやってきました。


「課長、大丈夫ですか? ここ回らない寿司屋ですよ?」


「大丈夫、君はそんなに食べないだろう? ガリガリだし。ガリだけに」


 私たちがカウンターで寿司を食べている間にも、課長は駄洒落を飛ばし続けました。


「最初はイカからイカないか? イカだけに」


「君は食べるのがトロいなあ。トロだけに」


「サーモンそろそろ帰ろうか。おイクラだろう」


 私は正直言って、課長の駄洒落にはうんざりしていましたが、課長の寿司券で食べるのだからと必死で我慢をしていました。


 そして私たちは腹いっぱいになるまで寿司を食べ続け、会計をする事になりました。


「大将、おあいそ。寿司券で」


 しかし寿司屋の大将は渡された寿司券をじっと見ると、こう言ったのです。


「この寿司券は使えませんよ、有効期限が切れてます」


 寿司券を覗き込むと、確かに日付は去年のものです。私は青くなりました。


「寿司ネタだけに切れてるってか! ハハハ!」


 こんな状況でも駄洒落を飛ばしまくる課長。寿司屋の大将もイラついているのが分かります。

 そして事もあろうに、課長は財布の中を覗き込むと、私にこう言いました。


「すまない、今日は持ち合わせが少なくて。少しお金を貸してくれない? お菓子だけに!」


 私は堪らなくなって叫びました。


「いや、寿司関係ないやん!!」


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