サトウ・レン

　どこまで語るべきか大変悩んでしまう作品ですし、真っ新な気持ちで読んだほうがいいと思うので、ネタバレには気を付けますが、良かったら私の文章などを読むよりも作品のほうを読んでください…続きを読む

〈思いつきで積み重ねられたような粗末な小屋（バラック）が無造作に立ち並ぶ、どこかの町中の風景。空は青く澄み渡り、燦然と輝く太陽の光が優しく世界を照らしている。建物の所々で顔を覗かせ…続きを読む

〈よくわからないまま頷いたとき、伝った汗が耳の傍を流れた。ああ、脳が溶けたのだなと思ってから、バター味だといいなと思った。〉 　語れば語るほど色褪せていく気がするので、私のつたな…続きを読む

〈つまり、君は読者でなおかつ作者。 　まだ書き終わっていない物語を、もう読み始めている。〉 　という表現を読んで興味を惹かれた方にはぜひ読んでもらいたい作品です。物語の本筋は、渋…続きを読む

〈おれはとてもしあわせだった。〉 　終わりに見る光景がどんなものがいいかって、たぶん、終わりも知らない人間が気軽に語っていいのだろうか、とは思うのですが、でももしも終わりを前に、…続きを読む

〈特にすることもなく取り残された夕暮れの和室、安心しきった寝顔を間近に眇める私の、その胸の裡に湧き上がる未知の情動。この汚れひとつない無邪気の塊を、簡単にその身を預けてしまえる雛鳥…続きを読む

〈それを指差して「ちょうちょ」と言ったわたしは、きっと今のサイトウと同じだ。今だって、見知らぬ人の死の結果を見て、綺麗だと思った。夜空に咲いて、はらはらと消えてゆく光の粒は、何もか…続きを読む

〈『もしあなたが人を憎むなら、あなたは、あなた自身の一部でもある彼の中の何かを憎んでいるのだ。我々自身の一部でないようなものは、我々の心をかき乱さない』〉 　暑さと湿気にうんざり…続きを読む

市役所職員の〈おれ〉に降りかかる、どこまでも果てない不条理。絡みつく不快感（褒め言葉です）が癖になる作品です。自身の冷酷さに鈍感になっていた男を襲うその罰（の内容は物語の根幹に触れ…続きを読む

山奥の村に蚕について調べに来た学者が、養蚕業の若者から話を聞いている内に……というお話。 これを映像で見る勇気が出ないほど、生理的嫌悪を催す描写も抜群なのですが、それだけでなく〈月…続きを読む