蚕殖

作者 木古おうみ

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★★ Very Good!!

 釣りの餌に蚕の蛹がある。例外もあるが、主に淡水魚を釣る時に使う。人間にとっても食用となる。なお釣り餌としては単にサナギという。
 そんな蚕は戦後になってからとんと見られなくなった。山奥の民家で、たまに桑を植えてあるのを眺めるくらいだ。
 本作はほとんど独白で進むが、聞き手が明確かつ物理的に存在するのが面白い。読者からすると、語り手に耳を傾けつつ聞き手にもちらちら目を向けてしまう。
 そしていつの間にか、サナギを餌に釣られた魚の心境に至る。

★★★ Excellent!!!

《蚕》とは民俗学に密接した神の虫です。
東北では《おしらさま》ともいわれ、昔から信仰されています。信仰を始めると生涯拝み続けなければならず、信仰をやめたり祀りかたがそまつになったりすると、一族に祟りが及ぶのだとか。
富をもたらす有難いものでありながら恐ろしい祟り神でもある《蚕》…
人間は蚕を飼育しているつもりでいますが、実際は蚕を飼わされている……蚕に飼育されているのは人間のほうだったり……するのかもしれません。
じっとりとした手触りの民俗調怪奇小説、想像を膨らませながら是非に御賞味下さいませ