恐ろしいまでの独白の表現力!完全なる1人のセリフだけで最後まで完璧なホラーを表現しきっていることに驚嘆する。ナレーションも説明も無し。
養蚕業の経営者が、訪ねてきた学者に家の歴史を語って聞かせる話だが、その語り口調のリアリティと言ったら、本当にこうやって喋る叔父さんがどっかにいるのではないかと思わせられる。
小説における様々な文章形式に当てはめると、これは対話体でありながら独白体に近い形式となっている。語り部の形式を損なわず、徐々に背筋の凍るようなホラーが忍び寄ってくる世界観を作り出せるのは、カクヨムでも唯一無二の存在であろう。
私は以前、たまたまこの作者の小説を見かけてレビューを書いた時、プロレタリア文学の文体模写かと思って絶賛したが、実はこの作者オリジナルの持ち味だったのだ。
その持ち味を活かして書かれた小説なら、私は作者名を見なくてもこの人が書いたと言い当てられるだろう。そんな人が果たして何人いるだろうか。
こんなレベルの物を連発して排出できる人間が素人である筈がないと思うのだが。