蛹の中身

 釣りの餌に蚕の蛹がある。例外もあるが、主に淡水魚を釣る時に使う。人間にとっても食用となる。なお釣り餌としては単にサナギという。
 そんな蚕は戦後になってからとんと見られなくなった。山奥の民家で、たまに桑を植えてあるのを眺めるくらいだ。
 本作はほとんど独白で進むが、聞き手が明確かつ物理的に存在するのが面白い。読者からすると、語り手に耳を傾けつつ聞き手にもちらちら目を向けてしまう。
 そしていつの間にか、サナギを餌に釣られた魚の心境に至る。

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