概要
たいして話したことがなかったクラスの女子との、とある夏。
◆
2014年8月31日、執筆。
2015年12月17日、加筆修正。
2016年6月30日、エブリスタ「みんなで作ったどんでん返し特集」掲載。
2017年8月、エブリスタ妄想コンテスト佳作。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!結局この人はどんな人なのだろう?
言葉の意味はいかにして決まるのか。「言葉を使う人によってさまざまだ」という考えもあるが、それではコミュニケーションが破綻する。井の中の蛙的な言語使用では相手に伝わらない。
この話は「よく分からないヤツから絡まれている」という印象が強いです。でも、理由があってこそ変な人という結果なんだろうと察しがつきます。ただ彼の目線で見ると、彼女は同情の余地がない奇妙な人で、「風と木は似ている」の意図もキャンディーの思い入れも意味がわからないのです。
いや、ちゃんと意味はあるのです。でも、なにも知らない人は「どういうこと?」と聞く優しさを持っていません。
彼女には友達になってくれる味方がいたはずなの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!作り物のイチゴ味を君に。
そのキャンディーは、甘いイチゴ味。それと同時に人工的な嘘の味がした。
主人公はクラスの人気者の女子に、「友達になって」と声をかけられる。苛ついていた主人公は、彼女に酷い言葉を返した。保健室嫌いな主人公が図書館に行くと、彼女が書いた物語と出会う。
主人公はコンビニでイチゴ味のキャンディーを買い、彼女に渡す。言い過ぎたと思ったからだ。しかし、友達にはならなかった。仮面の笑顔で、広く浅い友人関係を結ぶ彼女を、どこかで嫌悪していたからだ。
やがて二人の距離に、徐々に変化が現れる。
しかし、彼女は唐突に主人公の前から姿を消す。
学校や世間を驚愕させる彼女の本当の姿とは――?
とても読み…続きを読む - ★★★ Excellent!!!つくりものの先に言葉を宿して。
〈『もしあなたが人を憎むなら、あなたは、あなた自身の一部でもある彼の中の何かを憎んでいるのだ。我々自身の一部でないようなものは、我々の心をかき乱さない』〉
暑さと湿気にうんざりする土砂降りの日、五十嵐晴こと〈僕〉は同じクラスになっても一度も話したことのなかった十時楓から声を掛けられ、無性に怒りが込み上げる。いつもと変わらない日常は、自らを〈ふう〉と名乗るクラスメートの言葉によって壊れて、そしてそれは件の女子高生が二日後にいなくなるなんて周囲は知る由もなかった日の出来事だった……、というのが、この作品の導入なのですが、物語の導入を説明することは、この小説の魅力、すくなくとも私が感じ取った美…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ヒリヒリする。胸の底を掻き毟られる。なのに読まずにいられない。
嵐の中、雨に濡れて学校へ到着した高校生ハル(五十嵐晴)に、突然話しかけてきたクラスメートの少女。
今まで接点もなくハルに注意を向けてくることもなかったはずの彼女は、彼に友だちになって欲しいという。
けれどハルはすげなく拒絶する。彼女に、「嘘つき」とまで言葉を投げつけて。
ハルの強い拒絶の底にあるもの。「風と木って、似てるよね?」という、クラスメートの少女の奇妙な言葉の意味。その二つがわかった時、物語は読者であるこちらへ、長く引き攣れた痛みの、爪痕を残していく。
巧みな構成と譬喩による暗示を駆使して書かれたこの物語は、流し読みではその真の味わいはわからない。
ただ、
『読まれて欲しい。』…続きを読む