ヒリヒリする。胸の底を掻き毟られる。なのに読まずにいられない。

嵐の中、雨に濡れて学校へ到着した高校生ハル(五十嵐晴)に、突然話しかけてきたクラスメートの少女。
今まで接点もなくハルに注意を向けてくることもなかったはずの彼女は、彼に友だちになって欲しいという。
けれどハルはすげなく拒絶する。彼女に、「嘘つき」とまで言葉を投げつけて。

ハルの強い拒絶の底にあるもの。「風と木って、似てるよね?」という、クラスメートの少女の奇妙な言葉の意味。その二つがわかった時、物語は読者であるこちらへ、長く引き攣れた痛みの、爪痕を残していく。

巧みな構成と譬喩による暗示を駆使して書かれたこの物語は、流し読みではその真の味わいはわからない。

ただ、
『読まれて欲しい。』
『読み込まれて欲しい。』
……そう思う。