概要
「いつかわたしも歌えるかしら すてきな すてきな恋の歌」
恵みの風の吹く「風歌の谷」。その風を吹かせているのは、腕の代わりに翼を持ち、風を歌うハルピュイアだった。彼女は或る日、気まぐれに一人の若者の命を助けたのだが……
アンデルセン「人魚姫」の舞台が海でなく空だったら、という発想からスタートしたお話です。
アンデルセン「人魚姫」の舞台が海でなく空だったら、という発想からスタートしたお話です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!あまりにも危うい無垢、その上に建てられる幸せの楼閣の残酷さ
恋する青年が、思い人へと贈る花を摘もうと登った山の上、翼を持つ幻獣「ハルピュイア」に出会うお話。
悲しい恋のおとぎ話です。いや「悲しい恋」で済ますにはあまりにも重いというか、古典的な童話顔負けの残酷さを孕んでいるのですけれど。
タグの「悲恋」の文字を見るまでもなく、もう露骨に悲劇を予感させる、この序盤から中盤の展開。ハルピュイアの無垢さに若者の朴訥さ。「絶対このままハッピーエンドとはいかない」と、堂々知らしめた上で積み重ねてくる幸せの描写というか、初々しくも奥ゆかしい恋の成立を一からやってみせるところがもうあまりにも、こう、(これは本当に賞賛の言葉だと、読んだ方ならわかると思うのですけ…続きを読む