今宵、あの藤の下にて君を待つ。

作者 月音

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★★★ Excellent!!!

年中咲き誇る藤の花、白髪の鬼、夜ごと重ねられゆく密やかな逢瀬──耽美なモチーフが織りあげる幻想的な和風世界観に、虜にならずにはいられませんでした。
良家の娘とあやかしの切ない恋路を綴った本作ですが、物語そのものに妖力が宿っているようで、一文一文の美しさに耽溺します。登場人物もさることながら、何と言っても流れる情景描写が魅力的。夢中になって読み進めるうち、噎せ返る藤の香がしずかにわたしたちの肺を侵し、気づけば遅効性のあまい毒に蝕まれている。そんな読後感を覚えました。
藤棚のささめきがまだ鼓膜に残っています。儚くも鮮烈な恋の行方、胸を締めつけるようなその結末には心ゆくばかりです。
とても素敵な物語でした。きっと忘れられないと思います。

★★★ Excellent!!!

枯れることなく年中花を咲かせる「鬼憑き」と呼ばれる、唐棣(はねず)家の庭に植えられた一本の藤。藤の下には緋色の目をした鬼がいると噂されていた。
(あらすじより、拝借)


和歌の世界のような空気が漂うこの物語は、唐棣の家の病弱な一人娘の薄紅と、彼女が密かに心慕うあやかしとの許されぬ恋を描くお話です。

言葉運び、心象描写が巧みで一話、一話は確かに短いのですが、この独特で和を感じる雰囲気に些かの過不足も感じることは無く、次へ次へと読み進めたくなります。

藤の香りに誘われた許されぬ恋の結末は、是非最後まで読んで確かめてみてください。

★★★ Excellent!!!

静かな夜、濃紫の空気に柔らかに舞う藤の花弁が冷たく淡く流れてくる様が浮かびました。

藤の木の下にボウと立ち出でる、美しい鬼。
そのまなざしの緋に魅せられて、床に伏していた薄紅嬢はあれよあれよと生気を取り戻す。

同時にうっすらと蘇り出すは、薄紅嬢が伏せる以前のモノクロの記憶。
鬼の姿へ、薄紅嬢の声は名を呼んでいたらしい。
心を精神を揺さぶられるような、甘く近かったであろう記憶は、薄紅嬢を惑わすか誘うか──。


藤の花に香に魅入られる、切なくて幻想的なお話です。