秋永真琴

ディストピア眼鏡小説だ！　次の『世にも奇妙な物語』の原作に使ってほしい。この小説が恐ろしいのは、作者がこの世界を「望んでいる」感触があるところです。昔よりはファッションアイテムとし…続きを読む

題名がもう自主企画参加の「ウエットでエモいほう」の作品たちをまるごと薙ぎ倒しに来ていて笑う。内容もよかったです。ドライブ感満点のコメディに篭められた「性別や属性にかかわらず、誰だっ…続きを読む

ずるいのに好き、悪いから好き、悪い誘いに抗いきれないのはそのずるさにぶらさがってしまう自分のずるさもどこかに確かにあるから……そんな夜の、あの匂い、空気の温度、遠いざわめきが読んで…続きを読む

コミュニケーションの速度が違いすぎたから、彼女にとってはジャブのようなコンタクトを、“僕”が渾身のストレートみたいに一発一発受け止めているうちに、彼女はとっとこ先に行ってしまったの…続きを読む

『漆黒の慕情』本篇で読者を絶叫させたそこのところをこんなふうに広げるの、最悪すぎる！（最高です）
強烈な番外篇でありながら独立した短篇になっていてすごいです

「読み手にもぜひ作者と同じものを視てほしい」という、人物や魔術の詳細な描写が情熱的ですごい。「一生懸命に生きている女の子が、ワルかったり謎めいたりして底知れないけど本当はとてもやさ…続きを読む

崇拝する人と何かお話ししようとすると「昨日はよく眠れたかナ!?」になっちゃうんですよね……わかりすぎる。多くない枚数で、極端なキャラ付けもないのに、琴子様の内面・外面の美しさが沁み…続きを読む

どうして人間の心は「はりきる人が疎ましい」というむごい感情を発生させてしまうのでしょうね……だって、好かれたい相手に対してはりきらないのは難しい。読んでいて文字が滲みます。しぃる先…続きを読む

エキゾチックでゴージャスな幻想譚。懸命なれど愚かしい幾多の登場人物の人生を、ひとつひとつ見事に浮かび上がらせる文章と構成の妙技が、無常な果てしない時の流れを感じさせてくれます。圧倒…続きを読む

悪いことをこんなに官能的に、酷いことをこんなに切実な祈りのように描いて、救われてこなかった人たちがお互いの魂のなかに生きていく意味を見つける、そういう物語だと思いました。本当に文章…続きを読む

都市に散骨することで、ささやかな個人の物語が、いつか都市の物語の一部を担うかもしれない。誰も顧みない、誰も覚えていないことが無意味ってことはない。いつか意味が生まれるかもしれない……続きを読む

これはすごい……。「私」という一人称のまま、時間も視点も自在に往来する前衛的な文体を駆使して、生きることの「ひかり」を描きだす、鮮烈な短篇です。

中学校で、ひとが続けて死ぬ。それを偶然と片づけるには、人間は賢すぎ、繊細すぎ、脆すぎる…… 疑心暗鬼にとらわれた共同体が、狂騒と恐慌で沸騰してゆく学園ホラーです。 事件になにか意…続きを読む

ゴージャスでドラマティックな文体で綴られる、耽美な暗黒童話……　そんな「午後王」の章を、散文詩を鑑賞するように味わっていき、ため息をついて「昼下がりの少女」の章に移ると……　文体と…続きを読む

巨乳のことしか考えていない男……と聞くと、いい印象は抱きにくいのですが、この物語の主人公は本当に強くて優しくて懐が深い。なぜなら巨乳が好きだから！　人間の善なるものはどこから生まれ…続きを読む

学園伝奇だ、少女小説だ！　個人的に好きなジャンルのお話ということもあり、一気に読み終えてしまいました。主人公の見たもの、感じたこと、喜怒哀楽がしっかりと伝わってきます。ヒーローが堂…続きを読む

「項羽と劉邦」の時代を描く歴史小説としての、考証の正確さや解釈の斬新さは、知識のない私には評価しかねます。なので「軍記ファンタジー」として、この長くない枚数で、多様なキャラクタの、…続きを読む

「ジェンガ」を拝読しました。この有名なゲームが、ふたつのこと――学内での立ち回りの複雑さと、身近な人間関係の臨界点――を象徴していて、この比喩が貫かれたお話なら、この題名しかないと…続きを読む

後半のシュールでマジカルな展開が、青春小説としてのおかしさとせつなさを増幅させています。作品の強度を異物によってグリッと高める、お手本のような作品です。

地の文がなく、実況と解説の掛け合いだけで進めていくスタイルが、この物語には必然であったのでしょう。声に出して読みたくなる。しかし、ある幻獣（？）が、まさかあんな感動を巻き起こすとは…続きを読む

文章に読む者を引き込む磁力のようなものがあり、美とは、美を生む人間とはなにか、というテーマの解題に強い説得力があって、作品世界に没頭しました。しあわせな時間でした。

滅亡を迎えた世界、それでもひとは散文的な日常を生きる。世界滅亡とかそんな事柄はどうでもよくなるくらい頓狂な事件が起きても、自分らしく、淡々と、誠実に。王道の青春小説に、360度、7…続きを読む

原稿用紙で50～60枚くらいの短篇です。それっぽっちの枚数で、ひとの一生を描き、とても読みやすく、キャッチーなショッキングさがあり、さらに「その先」へ悠々と進む、そういう物語が書け…続きを読む

隙がない、見事な完成度のキャラクタミステリです。先へ、先へ……続きが気になって、どんどん読んでしまう。長篇も余裕で支えられる人物とコンセプトだと思います。

お互いに好きな者同士の、様子をうかがいつつ仕掛けあう悪戯。からかうのもからかわれるのも心地いい。「おふたりさん、ごちそうさま」と、昭和のツッコミ方をしたくなる、甘い、あまーい、お菓…続きを読む

恋と音楽の、関わる者をみな狂わせる凶暴な魔力が、強烈な圧力の文章で描かれます。 執拗に語られる、人間の負の部分。人間はみんな身勝手だ。人間はみんな傷ついてる。それでも、生きていてよ…続きを読む

題名どおりの設定がもたらすケイパー・ムービーのようなサスペンス、二転三転する事件の真相……　サクサク読める短篇の分量に、異世界転生ストーリーのおもしろさがギュッと凝縮されています。

想いは残る。叶わなかった想いも、お互いに尊重し合えれば、よきものとして残り、生きてゆく糧になる。そんな爽やかな余韻が残るお話でした。

青春ものとは味わいが異なる、おとなのラブストーリー。小粋な会話が素敵です。

新撰組、料理、恋ごころ……　三つのテーマが巧みに溶け合っていて、文字数以上の読みごたえを感じる短篇でした。

平易な言葉で静かに描かれた風景……その中に自分が立って、陽射しやそよ風を浴び、うれしいような、せつないような感情が湧きたつのを追体験できる、うつくしい随筆です。