清潔なしろい骨

作者 大澤めぐみ

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★★★ Excellent!!!

ああ、小説ってこんなことが出来るんだな、すげえ。と思いました。

テーマ自己愛?とか思いながら読んでたら想像を遥かに飛び越していかれてポカンとしました。

小説をロジカルに隅々まで把握しているからこそ出来る根拠のある飛躍、カタパルト射出。
小説を客観的に突き放さなければ書けない、単なる「小説のファン」には絶対に出来ない芸当。
目から鱗が落ちる想いです。

結末としては倒錯してるんだけど、それがまた嘘臭くなくてぴったりハマっててその毒っぽさがまたジワジワと癖になるというか。

そういえばジブリの鈴木さんが、厭世観漂う現代ではテレビやエンタメの題材が日本人→外国人→ファンタジー→動物とどんどん離れていき最終的には石などの無機物に落ち着くはずだと言っていました。

その意味でこの作品の結末は肉欲を離れ無機物として平穏を得るという現代の時代性に応えるラストであるのかも知れないと思いました。

★★ Very Good!!

自由を奪われ監禁され続ける人生。
彼女が愛した人は――――

身体が身体でなくなってしまってから見つけだした愛。
山の中でひっそりと自分を愛してくれる人を待ち続け――――
悲しいけれど、残酷だけれど、彼女は王子様を見つけ出せた。
目を伏せたくなる数々の行為。
それでも読後感は気持ち悪くならなかった不思議。

辛かったでしょう。でも……良かったね。
最後にギュッと抱きしめたい。

★★★ Excellent!!!

原稿用紙で50~60枚くらいの短篇です。それっぽっちの枚数で、ひとの一生を描き、とても読みやすく、キャッチーなショッキングさがあり、さらに「その先」へ悠々と進む、そういう物語が書けるのだという、書き込むところと書き飛ばすところの起伏の呼吸を完全につかんだ、小説でできることのすばらしさを証明するような作品でした。

★★★ Excellent!!!

面白かった。村上龍みたいな客観的な視点からエログロを描写する手法は他の作家でもいくつか読んだことがあったが、加えてその意識が本当にXXして最後にXXするというところまでは予想しなかった。中盤からの展開においても表現がスムーズに連動していて、技巧的ではあるが、それだけでなくちょっとした優しさを感じるところも良い。短編ではあるが引き込みの強い、読み応えのある物語だった。

★★★ Excellent!!!

親からの愛情が枯渇した人間はそれこそキチガイじみた努力で誰かしらからそれを得ようとするものだが、この作品の主人公は少し異なる。何事にも受け身な主人公「わたし」は何処か自閉的な側面を有した美少女であり、冒頭で語られる母親の面影を残したが故に、彼女は父親を含めた周囲の男性に翻弄され、疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。後輩をかばい全ての責任を負った三浦に対し、車の主、暴力団員谷岡が言い渡した示談の条件とは・・・。

★★★ Excellent!!!

この小説の世界に救いはない。では主人公には救いはないのか。

救われるとか、生きるとか、そういうのどうやったらできるのか。そんなことを思いながら読みました。この小説には救いのない世界で人が救われることはありうるのか、ということが描かれていると思います。静かな文体で、実はとんでもなく静かじゃないことが描かれていました。こういうのも好きだな。

★★★ Excellent!!!

日常、生きている証に使われる体温。
主人公に取ってそれはあまりにも淡々と冷たい。
作中後半に主人公が帯びる、ある熱だけがやけに温かく生命感を伴って読むものに問いかけて来る。
あなたは生きているか?
あなたは幸せか?
主人公の迎える結末にどこかほっとする自分に気付いた時、あなたはきっとその胸の温かさで誰かに少しだけ優しくなれる。

Good!

作中にも描かれていますが、自身が酷い状況にあるにも関わらず、目に見えるものに注意が向いてしまう事があるのでしょう。

そうすることで自身の状態から目をそらすことが出来るのかもしれません。

意識が消えないのは、その人の生命を消してはならないという世界の選択なのかもしれませんね。

彼女に幸せが訪れることを祈りつつ、酷い事をしたくない、されたくないと思わせてくれるお話に感謝いたします。

(※ボーン・コレクターの目的はボーン・コレクトでなかったと思うので、その点からの話を書くかもしれません)

ありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

この物語の中の、殆どの人々は酷く自分勝手だ。

勝手に産むし勝手に育てるし勝手に期待するし勝手に指導するし勝手に決めつけるし勝手に押し付けるし勝手に触れるし勝手に侵入するし勝手に嫌うし勝手に犯すし勝手に孕ませるし勝手に捨てるし勝手に殴るし勝手に傷つけるし勝手に殺すし勝手に見つけるし勝手に愛するし勝手に飾る。

いくつもの「勝手」を受け入れ、流され、そうして彼女が漂流した先にあったのも、また自分勝手なものだったと彼女は気づいた。
その場所にたどり着いた彼女が「勝手に」手に入れたものは酷くうつくしかった。

そう感じたのもまた、私の勝手なのであった。


なんかよくわからないポエムを書いてはみましたが向きませんね。
真面目に書くと、こんなに綺麗な死を見せられてレビュー書きたくならないわけがないといいますか。シャブだなあ相変わらずサワメグさんのお話。
汚くて綺麗だけどちょっと薄ら寒いおはなし。
ぜひ標本を眺めるような気持ちで読んでみてくださいな。

★★★ Excellent!!!

この小説は短編である。

2万字というほどほどの長さ、技巧派の書き手という認識から、読み手はひたすらに駆け抜ける物語がどこで転倒、反転、挽回するか機を待つが、疾走はやまずそのガワをばりばりと剥ぎ落として疾走したまま変容してゆく。そしてその変容した姿を世界にゆだね収まるところへと収まってゆく、読み手はただそれを見守るしかなく、どこまでも見守るしかなかった。


すでに商業出版された3作と、根底のテーマを同じくするものであるのでしょう。確かに青春小説であり、青春を取り巻く意識と世界を描いた、美しさを提示してみせる作品でした。

★★★ Excellent!!!

 月下の本物川道場。
 それはKUSO創作の長である美少女サワメグが聖域とする不可侵領域である。
 門番のロッキンをツイッターの凍結騒ぎに乗じて突破した俺は、此処の主に挑むべく、聖域の最奥へと辿り着いた。

「……入眠に失敗しましたね。どうしたの?」
「お久しぶりですサワメグ姐さん。見ましたよ……清潔なしろい骨、相も変わらず鋭い拳だ」
「世辞は良い。少し見ない内に変わったな……書籍化で日和ったか? 今回もKUSO創作を出さずにレビューばかり……手ぬるい、あまりに手ぬるい」

 サワメグは相変わらずあの凛とした声で俺をからかう。きっとCV田中敦子に違いない。
 なんだかそれが懐かしくて、俺は右の拳を握りしめる。
 左腕だけは脱力し、何時でも動き出せるように。
 インストラクションワン、殺意を絶やすな。

「ロッキンを見習ったらどう? ねえロッキン、ロッキン……?」
「彼は死にましたよ。ツイッタランドに殺された」

 俺は氷漬けになったロッキンさんをサワメグの前に放り投げる。
 少し乱暴な手つきになったのは、きっと彼女がロッキンさんを少し心配していたからだ。彼女が注意を向けているということが許せなかった。彼女を殺しに来たのは俺なのに。

「死んでる……死んでるの?」
「変わっていかなきゃ生きていけないんですよ。創作も、アカウントも」
「世界は悲しいことばかりだ。肉の身体が余計なのだ」
 
 だが氷漬けのロッキンさんを見て、あの女は笑っていた。
 いや違う。笑ってすらいない。
 関心が無いのだ。
 普段通りの赤い唇を品よく結んでいるだけだ。
 だから笑って見えただけだ。
 インストラクションツー、全力で殴れ。

「――だからっ!」

 身を屈め、すり足の要領でサワメグの懐まで潜り込み、左腕を振り上げる。脱力から放たれる鞭の如きのアッパーカットは、間違いなく彼女の顎を捉えた筈だっ… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

愛というものは、愛されることによりもむしろ愛することに存する。
――万学の祖、アリストテレスの言葉だ。
この物語を読んでボクはこの言葉を思い出した。
この物語には愛が溢れている。
しかし、それは全てが終焉を迎えた後で報われる愛だ。
奪われ、虐げられた末に發現した彼女の愛は、奪われ虐げられたがゆえに地上に燦然と輝き、悠久の平穏を得たのである。
これは、茶色く汚れた濁流の中で生まれた、白く清潔な愛の賛歌だ。

★★★ Excellent!!!

淡々と荒廃していく世界。そして、寥々と隔絶していく世界。

物語には透明度というものがある。
透明度とは、「語り手」と世界との間の距離の指標だ。

語り手というものは、作者のオルター・エゴである。
また、時には魂の切片、断片、あるいは総体である。
いずれにせよ、そこに一つの魂が宿るとき、良作は生まれる。

この物語は鮮烈だ。
余りにも白く、そして余りにも清潔。
その透明さの向こうに、魂の存在を感じさせる。

魂というものは、物語の骨格よりも向こう側に存在する。
そこに何人も手を伸ばすことはできない。

故に、我々は、大澤めぐみの次の作品を待たざるを得ないのである。