都市に散骨する。

作者 君足巳足

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★★★ Excellent!!!

今日の豆知識です、みなさん覚えておきましょう。
というわけで、冒頭の描写もけして明日あなた自身の身にも起こり得ないことではありません。
通常の宅急便等では取り扱ってくれませんが、日本郵便は故人の遺骨でもしっかりご遺族に(あるいは他のだれかに)送り届けてくれます。

閑話休題

「散骨」という言葉から、ビルの屋上なんかからぶわっとばら撒きでもするのかな、とわたしなどは思ってしまったのですが、妹の遺骨の欠片をすこしづつ、山手線の沿線のいくつかの箇所に埋葬していく、「巡礼」の物語です。

筆致は抑制されており、不仲だった父母との関係や、亡き妹との思い出なども具体的に描写されることはなく、それが乾いたリリシズムを生んでいます。

遺骨をすべて埋め終わった後に主人公がする、どこかおかしみのある空想も、もう、こんなの笑うしかないよね、という感情のリアリティがあり、それが最後の一言に深く効いてきます。

面白かったです。

★★★ Excellent!!!

都市に散骨することで、ささやかな個人の物語が、いつか都市の物語の一部を担うかもしれない。誰も顧みない、誰も覚えていないことが無意味ってことはない。いつか意味が生まれるかもしれない……生まれないかもしれない……でも生まれるかもしれない。そんな、小さな希望の灯をともす祈りのお話として読みました。素晴らしい掌篇です