いけず

作者 氷月あや

207

74人が評価しました

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★★★ Excellent!!!

新撰組の沖田総司に淡い恋心をいだく町娘の物語です。

相手が有名な剣士だとか
食べることに興味がないとか
病をわずらっているとか

そんなことはひとまず置いておいて。

相手のことを想い相手の為にする行動すべては「思いやり」であり「愛する」ことだと思う。

彼女の心づくしの献立の美味しそうなこと。
見事な描写で目の前に湯気があがるようです。

幕末や新撰組に詳しくなくても楽しめます。
(詳しい方はもっと楽しめるのでしょう)
短編ながらあっという間に幕末の京都に連れていってくれますよ。

★★★ Excellent!!!

私は、沖田総司を知らない。
無学なもので、といいたいのだけれど、彼をモチーフにした話は何百篇と伝わっているので、無学どころじゃあない。

しかし、この話は、それでも全く問題ない。なぜなら、筆者のきれいで静かな筆致と、物語の美しさと儚さだけで、何度も何度も繰り返し読めるからである。
彼から漂う血の匂いと、それ以上にあたたかな人間臭い匂いが、物語のそこかしこに満ち満ちている。そして、花乃の優しさと。きれいじゃあないはずの身体が、まるで無垢な命を宿しているかのようだ。

それはそれは、とても、きれいな物語でした。
テーマにもマッチ。素晴らしかったです。

★★★ Excellent!!!


ご飯には作る人と食べる人がいるものですが、食べる人のことを思い抜いて作られたご飯ってこんなに素敵なのかと目頭が熱くなりました。
美味しいご飯の裏にあるのは ただただひたむきに相手を想う気持ち。
「いけず」の一言に凝縮された花乃さんの想い……。
ご馳走様でした!

★★★ Excellent!!!

新撰組の剣豪であり、労咳を患い若くして夭逝したとして知られる沖田総司と、その看病を任された京育ちの娘、花乃さんのお話です。
花乃さんはほとんど食事を取らない沖田の体を案じ、どうしたら食べてくれるのか考えます。

何気ない、ちょっとした感謝の言葉が、それでも大切な意味を持って心に迫ってくる、というのを無理なく書かれた素敵な作品です。

山南敬助の死や病による容貌の変化からは、沖田の心に落とされた影がちらつき、それを心配する花乃さんの気持ちは、真剣に医師に食事の相談をしたり、丁寧に丹念に作り上げたことが分かる軍鶏鍋の記述から、たいへんによく伝わってきます。
そういったものの積み重ねがあったからこそ、終盤でふと沖田が差し出した「御褒美」や言葉が、爽やかに涼やかに胸に来ます。

また、剣豪である沖田は、病でもそうでなくても死に関わっていなければならない、そのことが兄のように慕っていた山南の死と重なってよく伝わってきました。

★★★ Excellent!!!

時代小説はごく数本しか読んだことがないのですが、本作は主人公女性の顔がしっかりと見えた気がして、また「どうすれば沖田は食べてくれるのか」という謎に興味を惹かれて、最後まで楽しく拝読しました。
余談ですが僕はゲイですが、「いけず」っていい言葉ですね、誰かに言ってみたいです(笑)。

★★★ Excellent!!!

優れた短編です。迂闊な褒め方をするのも憚られる位の。

魅せ方が上手い。魅せる為の文章ではなく、文章そのものが魅せていると云えば何となくでも伝わるでしょうか?

二人の心の通い合いは寧ろ淡々と紡がれて、だからこそ読む人の心にしんしんと沁みていきます。

読むべし、です。

★★★ Excellent!!!

動乱期の京都とは対照的に静謐な雰囲気、堅実でしっとりとした筆致により、花乃や沖田の表情や立ち居が鮮やかに読者の眼に映ります。
「いけず」。何とも奥行のある言葉ですね。たった3文字の言葉のなかに、花乃の切なく、いじらしい気持ちが凝縮されているような。
余談ながら、東京方面のなかでも八王子は味付けが濃いめ、とこれはレビュー者の知人から実際に聞いた話。

★★★ Excellent!!!

池波さんの小説の魅力の一つに食事のシーンがあります。
これから仕事をこなす。
その前にぬるい湯漬けをさらりとかき込む梅安。
それがなんとも美味しそうで、これから起こることとのギャップにふるえたものです。
しかし、ただ単に料理の描写をするだけでは、あの境地には至らない。
必要なのは臨場感。

きっちりと雰囲気を作り上げるために、漢字一つの使い方にさえ気を回したこの作品。
沖田も土方も新選組も知らんでも、時代劇の街並みや部屋の様子さえ知っていれば、幕末にタイムスリップです。

人を思いやる心というのは、いつの時代でもあるもんやと、しみじみと感じる作品でもあります。



★★★ Excellent!!!

言葉が綺麗である。
一つ一つの文章に愛情をかけるのは物書きにとっては当然のことであるが、それが読む人間にまで真っ直ぐに伝わる作品はなかなか無いと思う。
この話は短いながらも、一つずつの言葉に込めた想いが溢れだして、まるで一時間以上もその世界に浸っているような錯覚を与えてくれる。
新選組の話が好きな人も、そうでない人も、一つの物語として読んで欲しい。

★★★ Excellent!!!

幕末、肺を患う沖田と彼に淡い恋をする京の娘の物語。
命を燃やして闘う新選組の隊士の、静かで穏やかな療養生活を支える花乃がなんとも健気で可愛い。
真心込めての給仕も甲斐なく、沖田は『ふわふわの卵を一匙か二匙』ほどしか食してくれず、日に日にやつれていくばかり。沖田を気遣い、悩む花乃は医師との会話の中からある策を閃く。


懐かしい思い出の味と、暖かな想い。人は自らの死期が近づくと自らの人生を振り返りつつなぞっていくのかもしれない。読後、そんなことをふと思った。

真心をそっと懐紙に留めていた沖田に、かたく唇を噛んで涙を堪える花乃がいじらしい。

じんわりと染み入るような美味しい話でした。

★★★ Excellent!!!

短編小説はときに長編小説を凌ぐほどのエネルギーを含む場合がある。
短編であるがゆえに情報が少なく、それまでの経緯、物語のあとの気配はすべて描写されない。だからこそ、その短編の背後には広大な世界が広がる。

この短編はまさにその広大な世界を背後に持っている。丁寧に、それでいて簡潔に描写される食事の場面。そこからは立ち込める湯気の熱気や、京風の鍋の匂いが感じられる。
そして少ない言葉から感じ取れる登場人物たちの人柄。沖田のかわいらしい一面、花乃の勝気ながらも健気な性格。それらが言葉と一緒にすっと体に入ってくる。
そして、この物語を根底で支えている「死」の臭い。介錯による血の臭いや、沖田の死を思わせる痰の臭い。それらの臭いと軍鶏鍋の匂いが複雑に混ざり合って、クライマックスの切なさをより引き立たせる。

私はこの物語は「恋」の物語というよりも「愛」の物語だと思っている。「男と女」の物語であると同時に「生と死」の物語であり、自己の満足よりも他者への想いを深く感じられる物語だ。

このようにあらゆる味、匂い、そして想いが凝縮された物語を摂取するには短編小説は最適なメディアだと思う。そして、そのような凝縮された物語に出会えて本当にうれしかった。

こういう短編書きてぇ………。

★★★ Excellent!!!

病に伏せる沖田総司。
看病をする花乃という女性。

その状況がありありと浮かぶこの描写力は流石としか言えない。
描写の一役を買っているのは、本当に聞こえてくるような花乃の京言葉だ。
息遣いまで感じられるような繊細な京言葉は、聞いているだけでドキドキする。
ああ、こんな風に「いけず」なんて言われてみたい!

★★★ Excellent!!!

新撰組の天才、沖田総司の最期の日々に、こんなにも愛おしいひとときがあったなら……

山南の介錯、寝付き、そして花乃渾身の軍鶏鍋。あるべき出発点から、辿るべき道筋を辿り、終わるべき場所へ到着する。

美事なまでの筋運び。すべては繋がっていて、淀むところがない。



こりゃあね、読むしかない。読んどくしかないよ。なあ、山南さん?

★★★ Excellent!!!

食がもともと細い人に食べさせるということは、ものすごく難しいと思います。
どんな理由で食べないのか、聞いても教えてくれないと余計に。

タイトルは『いけず』で京都のお晩菜の話なのかなぁ、と思ったのですが、中身は違っていました。

わたしも作ってみたくなりました。
作中のお鍋を。

★★★ Excellent!!!

 この作品もいいですね。過不足のない言葉が明るい庭越しの練達のピアノのように心地よく聴こえてきます。軍鶏鍋のうまさを語るより、どんなものを食ってくれないかを挙げ、卵料理ならひと匙ふた匙というところまで丁寧に書いているのがいい。女性のじれったさがそこに出てる。文字数制限があるようで、言い足りていないというか、泣く泣く削られた言葉や文がありそうですが欠落とは感じられなかった。いいですよ、やっぱり。前回拝見した「斎藤一……」はたまたま気に入ったとか相性がよかったわけではありません。そこらはちゃんと読んでますからご安心を。ただ……私は鶏だけは苦手なんですけどね(笑)。

★★★ Excellent!!!

大切な人が、目の前で少しずつ弱っていく。
沖田さんを思う、花乃さんの一生懸命な気持ちが痛いくらい伝わってきました。
少しでも食べてもらいたい、それは生きていてほしいという願い。
自然に引き込まれていく、流れるような美しさがあり、本当に素晴らしい作品だと思いました。

★★★ Excellent!!!

体からも心からも血を流し弱っていく、新月に向かう月のような沖田と、春から初夏の陽(意外と強い)のような少女の対比が鮮やか。唇や指先などわかりやすいところから出血をする少女の秘めやかなエロスがそこだけ濃い色味を感じさせて、沖田が好む濃い味の鍋とのバランスが素晴らしい。土に返る者の一瞬の美。

★★★ Excellent!!!

恥ずかしながら新選組は、その名前と登場人物の一部くらいしか知らず内容はあまり知りません。それでも歴史を知らずとも、その物語だけでも楽しめて、それと併せて食事を題材にした内容もとても感情移入できました。自分のような立場からこのように言うのは失礼ではありますが、珠玉の傑作です。

★★★ Excellent!!!

新撰組の最前線から退かざるを得なかった頃の剣の達人、沖田宗司と、その身を案じるひとりの京女の織りなす「美味しい話」です。

病魔すら意に介さずに、ひょうひょうとやつれていく沖田と、やきもきしながらそれを案じる花乃の関係がとてもぐっときます。
何を作っても口にしてくれない沖田を案じて、花乃が作った料理とは。

地に着いた設定から紡がれる2人のものがたりを、確かな知識を元にした、幕末の空気を自然に感じさせる文章が心地よく包みます。


……なんて行儀良いレビューはここまで! 新撰組に誠実というだけで★3つなのに、関東風の出汁の軍鶏鍋まで出てきたらもう★100個付けるしかないじゃないですか!五鉄の魂が新撰組に!ごぼうが煮えきるまで手を出しちゃ駄目なんです!
冬に読んでたら近所のスーパーのごぼうと鶏肉が売り切れるレベルのいけずなお話。控えめに言って最高なので是非ご一読を。

★★★ Excellent!!!

めっちゃええ!すごい沖田さんが羨ましい。

確かに京料理は鼻が効く人には調味料が薄すぎるのかもしれません。

沖田さんは江戸出身なのですね。なぜか九州のイメージがありました。

内にも外にも血をまとった沖田さんだからこそ、あどけなく笑えるのでしょう。

★★★ Excellent!!!

ほっこりとした話であるが故に、より切ない。

カクヨムで新撰組の沖田の作品を発見できるとは!!と思い、速攻拝読しました。
歴史小説っぽくない新撰組ものが多いWeb小説の中、登場人物たちの言葉遣いや、細部まで作り込まれた設定がしっかり歴史小説で、どっぷり浸らせて頂きました。

作品全体に不思議な透明感があり、それがより一層儚く、切ないです。
短編で終わってしまうのが寂しいくらいです。

★★★ Excellent!!!

新撰組一番隊長、天才剣士、沖田総司。
彼の女性関係は、謎につつまれている。
だからこそ、色んな話が作られる。この話もそんなひとつ。

沖田の運命を重ね合わせると、少しでもこんなささやかで
あたたかい思い出があってくれたらと願ってしまう。
殊に山南の事件後は、一気に悲しみに暮れていったであろうから。

人を斬った苦しみが身体を蝕み、疲労が蓄積している。
だからこそ、食事の匂いが辛くて、食欲も湧かない。

病に伏す沖田に、少しでも滋養をつけさせたい一心で
彼女が考えたメニュー「軍鶏鍋」とは。
花乃の懸命の献身振りが、心を打ちます。

★★★ Excellent!!!

病に臥せった沖田総司にどうしても、何か美味しいものを食べさせたい。京育ちの町娘花乃は、ただただ心を砕く。
ただそれだけの話が、きりっと物語として立つのは、その背景にある「死」が、かっちり描かれているからだ。
死があまりにも近くにある時代の話だからこそ、「生」のために必要な「食べる」という営みが際立って美しい。

史実を無理なく混ぜ込みながら、緊張感のある文体で、揺れる心情をすっきりと描く。さらりと書き込まれているが、中医学の話も面白かった。

★★★ Excellent!!!

相手を想う気持ちが如実に感じられる巧みな文体、読み進めるうちにせつなさが込み上げて来ます。

内容のネタバレを避けたいので明確には書きませんが、食事シーンの二言と最後の一言が心にグッと来ました。
短編小説は短さにかかわらず人の心に残る強さが魅力だと思っていますが、そういった意味でも本作品は大変魅力的と思えます。

主人公は長編で書かれている登場人物のようですので、そちらも読ませていただこうと思います。

★★★ Excellent!!!

京都、新撰組屯所。肺を病んだ沖田総司のために。
花乃は必死で、食べてもらえそうな料理を作る。

沖田は史実の人物なので、労咳(結核)にかかったこと、その後の運命も、ご存知の方は多いと思います。
花乃さんは、創作の人物。
作者様の長編『幕末レクイエム―誠心誠意、咲きて散れ―』からの二人です。


……コンテスト参加作品としては、この短編だけで味わうべきなのでしょうが。
もう、長編での二人の出会いから物語の結末までが、ぶわぁーっと脳裏に甦ってきて。
お嬢さん育ちで家事が拙いのが悔しいとか、返り血と病の血とか。
あの頃の花乃さん、こんなことを考えていたのか。
(長編は、斎藤と沖田視点でしたし。)
別離以降の花乃さん、どんな人生を送ったんだろう。
とか思うと、冷静にレビューを書けないのですよ……。


みなさま。
未読でしたら、是非とも長編『幕末レクイエム』の花乃さんにも会ってきてください。
(その後『京都チョコレート協奏曲』へ行くと、ちょっとほっとします。)

全然『いけず』のレビューになってなくて、すみません。

★★★ Excellent!!!

花乃は新撰組屯所にて沖田さんの世話を言い使った。

労咳を患う沖田さんは日に日に悪くなっているようだ。花乃はなんとかしたいと料理を作るもなかなか食べてはもらえない。ある日、幕府御典医の松本先生との会話の中で花乃に妙案が浮かぶ。

沖田さんのために試行錯誤、一生懸命になっている花乃さんの姿がなんとも健気で可愛らしい。沖田さんもそれはきっと分かっている。分かっているから不意に心憎いことをしてしまうんでしょうね。

沖田総司は時代物なんかでもよく目にしますがそのほとんどが闘いに身を置いている姿。彼の身近な女性の視点から、もっと親しみを感じられる沖田さんを楽しませて頂きました。

★★★ Excellent!!!

新撰組の沖田総司と言えば、その剣の腕と後年病に倒れたことは有名な話だ。
この方の作品を拝見するといつも思うのだが、何かしら透明な、痛いほどの静けさが今作にも漂っている。
この作品は、病床に在る沖田と花乃という女性の交わりを綴ったもの。
花乃は15歳だけれど、この頃の15歳は今の25歳よりも人間的に余程成熟していると私は考えるので、女性という呼称を使わせていただく。
花乃は言わば被害者だ。
原因の一端は新撰組であったから、沖田は加害者となろう。
そのふたりが出逢い、花乃は沖田の世話をするようになる。
沖田はどんな思いで笑っていたのか。
花乃はどんな思いで叱っていたのか。
花乃については作中触れられているが、沖田の思いは想像の域を出ない。
病が影を落とすなかで、紡ぎ出される美しい情景。
花乃の想いと、それを見つめる沖田の瞳。
丹精を込めた軍鶏鍋と、不意にかけられた言葉。
最後に花乃が呟く「いけず」という一言に、すべてが籠められている気がした。