概要
意地悪、と花乃は呟いた。鼻の奥がつんとする。
花乃の顔を覗き込んで、沖田が笑う。
「そこは、おおきにって御礼してくれるところだろう?」
胸を病んだ沖田総司と、彼の世話を言い付かった花乃。
沖田は食が細く、偏食家で我儘で、花乃を困らせる。
一八六五年、京都にて。
ほのかな想いを寄せる剣士の為の、町娘の御料理奮闘記。
***
富士見L文庫×カクヨム 短編小説コンテスト
「美味しい話」にて受賞いたしました!
短編集『飯テロ』に収録されます(2017/12/15発売)
沖田総司と花乃の本編
『幕末レクイエム―誠心誠意、咲きて散れ―』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054882222562
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!いけず、の三文字に心臓をひと突きされました
すごい…素晴らしい…。
まったくもってレビューになっていないかもしれなくて申し訳ないのですが、もはやそれしか言えません…!
料理やそれ以外の部分での花乃の心遣いの細やかさ奥深さ、そしてそれを受け取った沖田…。
花乃が零した「いけず」の三文字に、レビュータイトル通りに心臓をやられました。
可愛い。そして沖田の最期を読者の私はどうしても歴史の流れから知っているものだから、別の意味でまた心臓が痛くなります…。
それでも優しい時間がこの物語には流れ、花乃の作った美味しそうな料理の味が舌にほんのり感じられるような、そんな気分にさせられました。
優しい物語をありがとうございます。
是非に是非にご一読を…続きを読む - ★★★ Excellent!!!沖田総司に平穏な時期があっても良いじゃないか。病没前の一瞬なんだもん。
現実世界で京都弁を耳にすると、
「お高く止まりやがって」
と、自分勝手な反発を感じてしまう。
ところが、乙女心を題材にした作品には何と似合う言葉なんだろう、とウットリする。
仮に、京都弁を話す男を登場させても、「麻呂は…」みたいな発言にしかならないので、読者の反感を買うのは必定。実際、京都弁ヒーロー物の作品には出会った事が無いので、強ち私の感性も独り善がりではないんだろう。
そう考えると、『高嶺の花が降りてきた』状況こそ、京都弁を話す乙女を読者が受け入れるパターンと言える。飽くまで男目線だが。
そうだっ! 本作品は男が読む作品なのだ‼︎
別作品「幕末レクイエム」と同じ人物を登場させ、こちら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!何気ない言葉に宿る大切な意味が、読み手をしっかりつかまえるような短編
新撰組の剣豪であり、労咳を患い若くして夭逝したとして知られる沖田総司と、その看病を任された京育ちの娘、花乃さんのお話です。
花乃さんはほとんど食事を取らない沖田の体を案じ、どうしたら食べてくれるのか考えます。
何気ない、ちょっとした感謝の言葉が、それでも大切な意味を持って心に迫ってくる、というのを無理なく書かれた素敵な作品です。
山南敬助の死や病による容貌の変化からは、沖田の心に落とされた影がちらつき、それを心配する花乃さんの気持ちは、真剣に医師に食事の相談をしたり、丁寧に丹念に作り上げたことが分かる軍鶏鍋の記述から、たいへんによく伝わってきます。
そういったものの積み重ねがあったからこ…続きを読む