概要
軍人やってる。
上司が京西南路の襄陽の守備に就くことになった。
いざ赴任してみりゃ、噂どおりマジで最前線だ。
敵軍との和平交渉はアッサリ決裂。
大河のほとりの水上交通の要衝・襄陽で、いたちごっこの籠城戦が始まった。
戦争って、何気に地道な土木工事ばっかだよな。
あと、敵軍から物資をかっぱらってきたりとか。
――――――――――
南宋代の開禧二年から三年にかけて、
西暦で言えば一二〇六年から一二〇七年にかけてのこと。
北方から攻め入った金軍が襄陽(湖北省襄陽市)を包囲した。
その際、襄陽で籠城した軍人の一人、趙萬年が記録を残している。
これは正史には載っていない戦場日記。
生の言葉で書かれた原文を活かして、超訳を試みる。
前近代風ファンタジーの戦
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!別作歴史小説と出典解説の贅沢な二本立て。これは解説編です。
東洋史学を専攻した方(今も大学に勤めてる方?)の作品。私は北方謙三先生の楊家将シリーズを以前に読んだが、それよりも奥行を感じさせる作品だ。中国の書物に立脚しているから、当然なのだろう。
各エピソードともに読み易い超訳、漢字だらけの原文、小難しい古文の三段階構成。順番が逆だったら、挫折者が続出しただろう。
20万字近い大作だが、原文は読めないし、高校生以来、縁の無い古文も素っ飛ばしてスクロールするので、実質的な文字数は3分の2である。だから、物怖じせずに、読み始めて欲しい。
とは言え、「守城のタクティクス」から読む事をお勧めする。「守城」は最初から最後まで混じりっ気無しの100%の歴史小説。そ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あのときを確かに生き抜いた兵士が記した「超訳」戦記
南宋の兵士である趙萬年が、金朝との戦いの中で残した記録。それを小説化したものがこちら――なのですが。そもそも、同じ日本で使われていたはずの古文を読み解くのは難しいですよね。ましてや中国っていう外国のさらに昔の言葉、漢文を読み解くなんて、たとえ日本語訳ができても訳わからぬぅ!
この作品はそれをわかりやすい口語体の「超訳」で読ませてくれるのです。
しかもそれだけじゃありません。各話に細やかな解説をつけて、さらには別章として原文と原訳まで並べてくれてるんです。
歴史ドラマ+歴史資料、きっちり両立しちゃってるのですよ。これはもうすごいのひと言です。
そしてドラマの魅力はなんといっても、王族とか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一度で何度も楽しめる歴史小説が有する真の深遠さを味わえる作品!
歴史をテーマとした小説・漫画・ゲーム・映像作品を興じる時に、終わった時や巻数や放送の切れ目で新たに発行されるまでの期間にできる楽しみがある。
それは、ウェブで検索したり、歴史にかかる書籍を購入して、元ネタの事件や事績、人物について調べることだ。時にはそれで、先の展開や張り巡らせた伏線に気付くこともある。だが、それで興を減じることは少ない。そこまでに行く過程についてアレコレ予想したり、作者の技巧にうなったりできるからだ。
話しの展開による事情や作者の好悪による、人物や勢力への露骨な依怙贔屓や低評価に気付き、その歴史観や人物観を評価することも楽しみという人もいるだろう。
歴史を題材にした作…続きを読む - ★★★ Excellent!!!彼らの名前は、教科書には登場しない。けれど……
1206年〜1207年、宋代の中国。女真族の金国に対する防衛戦を、前線の宋の兵士が記録した文章をもとに、小説化された作品です。
……と言われても、中国史に詳しくないと、すぐには理解しがたいですよね。ええと、宋といえば岳飛? 秦檜は知っているけれど、岳将軍は既に亡くなった後ですか。チンギス・カンが即位した頃? 金はどうしていたっけ? ……。
マルコ・ポーロや長春真人は知っていても、趙淳や趙萬年の名を知っている人はいません。
それでも、阿萬(趙萬年)の軽妙な語り(べらんめい口調)と解説のおかげで、すぐ宋代へ行くことが出来ます。しかも戦場、しかも前線。上司への不平不満も、敵の異民族に対する嫌悪…続きを読む - ★★★ Excellent!!!知らない時代の知らない出来事を理解するほど楽しいことはない
襄陽と樊城は三国志演技でも名シーンを続出させた場所だが、この話の時代は南宋。結局攻めてくる金軍も守る南宋軍もその後モンゴルにボコボコにされて消え失せるので日本人にとってはあまり印象にない時代だ。私もよく知らなかった。
しかしそのほぼ異世界で起きる出来事がリアルで変化に富んでいてぐいぐいと興味を引く。筋そのものは語り口がうまいのですいすいと読めるし、そこここに出てくる「あ、なんとなく知ってるような知らないような」という知識が注釈で懇切丁寧に書かれていて楽しい。
さらには平地の野戦と違って、防城戦はその場のアイデアと折れない心が顕著に行動に反映する。そのためドラマも必然的に面白くなる。
加えて作…続きを読む