一つのプロットからどれだけ文体に差を出すことができるか、3000字制限、という企画に沿って書かれた作品。
なのですが。
3000字でここまで書き込めるものなのか。
お茶漬けなんていうのは簡易であることが短所でもあり長所でもあるものですが、冷や飯にお茶ぶっかけただけのねこまんまレベルのものから、本作で描かれているヤズのヅケ茶漬けのようなものまで、手を加えようと思えばやればできるようです。それでいて、あくまでもお茶漬けという気軽さは損なわない、という絶妙さ。
3000字小説の本作品も、まさにそんな感じだったと思います。
幼馴染みでありながら妻の方が年上という姐さん女房のキャラ設定、二人の方言とそこから香ってくる故郷の離島の魅力、旦那の専門的な職業の描写。神は細部に宿るとも言いますが、まさに先端にまで神経が行き届いている感じ。それでいて決して詰め込みすぎということはなく、あくまでも3000字の短編小説であり、お茶漬けをさらさらとかっこむように気軽に読める。
いいね。
じゃなかった。
よかねえ。