あのときを確かに生き抜いた兵士が記した「超訳」戦記

南宋の兵士である趙萬年が、金朝との戦いの中で残した記録。それを小説化したものがこちら――なのですが。そもそも、同じ日本で使われていたはずの古文を読み解くのは難しいですよね。ましてや中国っていう外国のさらに昔の言葉、漢文を読み解くなんて、たとえ日本語訳ができても訳わからぬぅ! 

この作品はそれをわかりやすい口語体の「超訳」で読ませてくれるのです。
しかもそれだけじゃありません。各話に細やかな解説をつけて、さらには別章として原文と原訳まで並べてくれてるんです。
歴史ドラマ+歴史資料、きっちり両立しちゃってるのですよ。これはもうすごいのひと言です。

そしてドラマの魅力はなんといっても、王族とか将軍とかじゃない軍人の生の感情と思考が見えるところ。
戦のダイナミックさの中に閃く下っ端魂――戦略よりも戦術よりも、目先の勝利へ飛びつくたくましさが感じられるのはたまりません。

中国史的には通過駅ながら、実は激熱な1200年代初頭、ぜひ体感してくださいませ!

(味があるから人気作! 濃さと厚さの4選/文=髙橋 剛)

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