【漢文超訳】襄陽守城録―最前線に着任したら敵軍にガチ包囲されたんだが―

作者 氷月あや

90

33人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

溢れ出る教養と知識量に脱帽です。この作品を編纂して東洋史学の論文博士号を取れそうな勢いだ…と思ったら、その道で学位取得されてるとのことで納得。
何よりも恐ろしいのは、これほどのマニアックかつ豊富な情報量を、よりにもよってラノベ形式でダイナミックにして感動的かつ全く違和感なく物語にできる文才です。
こんなものを併せ持った作者が一体日本に何人いるのでしょうか。
本物のオリジナリティとは骨の髄を構成する知識から出てくるのだなと心から感じました。

★★★ Excellent!!!

南宋の兵士である趙萬年が、金朝との戦いの中で残した記録。それを小説化したものがこちら――なのですが。そもそも、同じ日本で使われていたはずの古文を読み解くのは難しいですよね。ましてや中国っていう外国のさらに昔の言葉、漢文を読み解くなんて、たとえ日本語訳ができても訳わからぬぅ! 

この作品はそれをわかりやすい口語体の「超訳」で読ませてくれるのです。
しかもそれだけじゃありません。各話に細やかな解説をつけて、さらには別章として原文と原訳まで並べてくれてるんです。
歴史ドラマ+歴史資料、きっちり両立しちゃってるのですよ。これはもうすごいのひと言です。

そしてドラマの魅力はなんといっても、王族とか将軍とかじゃない軍人の生の感情と思考が見えるところ。
戦のダイナミックさの中に閃く下っ端魂――戦略よりも戦術よりも、目先の勝利へ飛びつくたくましさが感じられるのはたまりません。

中国史的には通過駅ながら、実は激熱な1200年代初頭、ぜひ体感してくださいませ!

(味があるから人気作! 濃さと厚さの4選/文=髙橋 剛)

★★★ Excellent!!!

歴史をテーマとした小説・漫画・ゲーム・映像作品を興じる時に、終わった時や巻数や放送の切れ目で新たに発行されるまでの期間にできる楽しみがある。

それは、ウェブで検索したり、歴史にかかる書籍を購入して、元ネタの事件や事績、人物について調べることだ。時にはそれで、先の展開や張り巡らせた伏線に気付くこともある。だが、それで興を減じることは少ない。そこまでに行く過程についてアレコレ予想したり、作者の技巧にうなったりできるからだ。

話しの展開による事情や作者の好悪による、人物や勢力への露骨な依怙贔屓や低評価に気付き、その歴史観や人物観を評価することも楽しみという人もいるだろう。

歴史を題材にした作品は、完全に読者の予想を裏切る展開となることが難しい代わりに、多重構造として何度も楽しめるという面白さがある。

色々なご意見があると思うが、よほど中国史や漢文に詳しい方以外は、私としては、同作者の「襄陽守城錄」を元ネタとした小説「守城のタクティクス」
(https://kakuyomu.jp/works/1177354054884546369)を先に読み終わってこちらを読むことをお薦めする。

その後は、気になる注釈だけを読みつつ、こちらの「超訳」をお読みいただければと思う。

こうして読めば、
①中国歴史小説(中華ハイ・ファンタジー小説?)として、いきいきとしたキャラクターが活躍する「守城のタクティクス」を楽しみ、
② その合間に注釈や当時の歴史について大まかに検索して背景を楽しみ、
③ 「襄陽守城錄」の超訳でその元ネタを知り、内容と「守城のタクティクス」の脚色をを楽しみ、(特に『天使』の扱いが秀逸!)
④ さらに注釈を読み返して、背景を楽しむ。
⑤ その注釈を元に調べて内容を楽しむ。

これだけではない。元から、歴史や漢文に詳しい人やこれで強い興味を持てた人にはまだ、続きの楽しみ… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

1206年〜1207年、宋代の中国。女真族の金国に対する防衛戦を、前線の宋の兵士が記録した文章をもとに、小説化された作品です。
……と言われても、中国史に詳しくないと、すぐには理解しがたいですよね。ええと、宋といえば岳飛? 秦檜は知っているけれど、岳将軍は既に亡くなった後ですか。チンギス・カンが即位した頃? 金はどうしていたっけ? ……。
マルコ・ポーロや長春真人は知っていても、趙淳や趙萬年の名を知っている人はいません。

それでも、阿萬(趙萬年)の軽妙な語り(べらんめい口調)と解説のおかげで、すぐ宋代へ行くことが出来ます。しかも戦場、しかも前線。上司への不平不満も、敵の異民族に対する嫌悪も恐怖も、生々しく。生き延びるための懸命な努力も、兄貴(趙淳)への崇敬も、直に伝わってきます。
中国時代物や戦記がお好きな方には、たまらないのではないでしょうか。

本当の歴史は、教科書には載っていない彼らが、命を賭けて築いてきたものなんですよね。お上品な文体で語られる歴史小説や、演義も大変好きですが。実際の彼らは、こんな口調で話していたかもしれない……。阿萬の台詞を拝読しながら、そんなことを思いました。

東洋史(モンゴル帝国)を修められた作者様のマニアックな解説が楽しい。私は書き下しの漢文の響きが好きなので、原文と書き下し文が拝読出来るのが嬉しかったです。
一粒で二重にも三重にも楽しめる、歴史小説。お薦めです。

★★★ Excellent!!!

襄陽と樊城は三国志演技でも名シーンを続出させた場所だが、この話の時代は南宋。結局攻めてくる金軍も守る南宋軍もその後モンゴルにボコボコにされて消え失せるので日本人にとってはあまり印象にない時代だ。私もよく知らなかった。
しかしそのほぼ異世界で起きる出来事がリアルで変化に富んでいてぐいぐいと興味を引く。筋そのものは語り口がうまいのですいすいと読めるし、そこここに出てくる「あ、なんとなく知ってるような知らないような」という知識が注釈で懇切丁寧に書かれていて楽しい。
さらには平地の野戦と違って、防城戦はその場のアイデアと折れない心が顕著に行動に反映する。そのためドラマも必然的に面白くなる。
加えて作者の「へー、こんなこと考えながら書いたんだあ」と思わせる端々の雑文がとてもチャーミングで、思わずクスリとしてしまった。翻訳家兼作家の生態が垣間見えるエッセイとしての面白さまである(失礼!)盛りだくさんな作品である。
この話をネタとしてまとめてしまうのは惜しい。これを題材に、フィクションを交えた長編小説も読んでみたいところ。
それと蛇足だが、応援コメントの作者さんと読者さんのやり取りもとても楽しい。こういうところまで含めてのweb小説かもしれない。

★★★ Excellent!!!

宋代の歴史資料の超訳。といってしまえば簡単だが、これが面白い。

細やかな説明が入り、簡単な原文に肉付けをし、臨場感あふれる戦場の様子を鮮やかに甦らせる。

東洋史を専門とする著者の知識が遺憾なく発揮されている。同著者の短編歴史小説「いけず」を読んだときにも思ったのだが、知識がしっかりと想像を支えているがゆえの安定感がある。

全くの門外漢をここまで引き込む手腕はさすが。

★★★ Excellent!!!

というか、一言目は「いいなぁ宋代! 俺も五胡十六国の雑兵下士官の日記とか読みてぇよ!」でした。この時代の私記ってなると顔氏家訓とか、陶淵明とか、そう言うところに求めざるを得なくなる感じなんですよね。

基本的に原文から書き下し文への翻案は、厨二テキスト作成に多大なる経験値をプレゼントしてくれます。正直漢文のマイ書き下し文は挑戦したほうがいいと思う。ただ日本語の淵源としての漢文と、現代中国語の原型としての漢文って何処に分水嶺があるのかがわからないのが悩みどころ。

何だかんだいいましたが、簡潔に言うと「超訳と書き下し文較べるの楽しい!」に尽きるのであります。

★★★ Excellent!!!

思わず、ラノベかよ!とつっこみたくなるようなタイトル。ですが、タイトルだけじゃなく中身もラノベ的なノリで、まず作者が楽しんでいる感が満々です。
それでいて、注釈を見れば、緻密な考察によって調整された文章だということがうかがえます。
ハイレベルなんだけど、そんなことが分からないようなノリで楽しめる。
やっぱりラノベだよ、たぶん。

★★★ Excellent!!!

予備知識一切不要、
超訳(現代語訳)はラノベ風味で何も考えずに楽しむだけ、
しかもラノベとして高品質、誰が読んでも楽しめます。

その上できちんと注が付された原文と書き下し文を読むと
不思議に意味が掴めるようになります。

これ、教科書に採用する方がいいんじゃないですか???
「漢文って、お経?」という方にこそお読み頂きたい。

技量と企画の両方で圧倒的なクオリティをお楽しみ頂けます。
いや、これはすごいです。脱毛。