【短編集】壬生狼小唄

第一話目の導入と、結末が御洒落。
その後に続く物語も幕末の京都と、その夜を駆ける新選組の面々が目に浮かぶかような、そんな見事な描写が続きます。

言い回しが一々格好良く、しかし回りくどくなく読みやすい。

こんな幕末時代小説が読めるなんて、カクヨムは有難い。

読んでない方は勿体ない。
ご一読を強くお勧めします。

そして他の方のレビューを読むと、これはスピンオフとのこと。
勿体ないことをした。
これは読まねば。

本作は『幕末レクイエム』本編二作につづく短編集ということになります。

本編の方はかなりのボリュームがあり、長編を読み慣れない方には敷居が高く感じられがちですが、読みはじめると体感的にはあっちゅう間に終わりますから、読み切り短編形式の本作は、本編未読の方の入口として最適かと思います。

本作を読んで「この文章なら長編も読めんじゃね？」と思われた未読の方は、本編も楽しめると思いますよー。


以下は長文の蛇足ですので、おヒマな方だけどうぞ。

スターシステムという別世界に同じキャラクターを登場させるやり方もあるそうですが、本作はそれとは違って同じ世界とキャラクターの裏話（？）、いわゆる、スピン…続きを読む

力作です。
精緻な文体によって描き出された本格的な歴史小説です。たちまち作品世界に誘われます。

第１話は、土方歳三による暗殺劇が描かれています。血なまぐさいシーンですが、妖艶な雰囲気に満ちていて、土方の人間的魅力がリアルに伝わってきます。
第２話は、人間模様もさることながら、江戸末期の京都の町の様子が立体的に描かれています。日本史の教科書ではなかなか味わうことができない当時の生活感が浮かび上がってくるようです。

読むことによって日常の喧噪から１歩脱却し、作品世界に浸ることができる、そんな価値をもった傑作です。

丁寧な心情の描写と新撰組を扱った作品らしい悲哀。
心底このテーマに打ち込んだ人の作品だなあと思いました。