【短編集】壬生狼小唄

作者 氷月あや

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★★★ Excellent!!!

本作は『幕末レクイエム』本編二作につづく短編集ということになります。

本編の方はかなりのボリュームがあり、長編を読み慣れない方には敷居が高く感じられがちですが、読みはじめると体感的にはあっちゅう間に終わりますから、読み切り短編形式の本作は、本編未読の方の入口として最適かと思います。

本作を読んで「この文章なら長編も読めんじゃね?」と思われた未読の方は、本編も楽しめると思いますよー。


以下は長文の蛇足ですので、おヒマな方だけどうぞ。

スターシステムという別世界に同じキャラクターを登場させるやり方もあるそうですが、本作はそれとは違って同じ世界とキャラクターの裏話(?)、いわゆる、スピンオフということになります。

スピンオフはなかなか難しい問題を内包しています。

まず、方向性は二つが考えられます。
一つは視点を増して世界をより複眼的に見せる、もう一つは本編と視点を変えずにより深く掘り下げる、という考え方になります。

本編で描かれなかった時間を補うものもありますが、目的に立ち返ると、この二つのいずれかに回収できるように思います。

人気作のキャラを転用した別作品なんつーのもありがちではありますが、それはマーケティングであって作品の方向性とは関係ないので措いておくとして。

スピンオフの二つの考え方は本編の視点から制約を受け、二人の目線から一人称で交互に語る体裁を採用した本編二作を受ける場合、いずれを採用することも可能、本編が一人称なので世界を広げる場合は本編以外の人物の目線が必要になり、目線を変えない場合は内面を深掘りすることにならざるを得ません。

この二つ、設計上は明らかに前者が楽、後者は厳しいのです。

なぜかと言うと、目線を変えない後者の場合は紙数の都合を含めて本編であえて書かなかった部分、または、本編で書くべきだったが書き落とした部分を書くこととなります… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

力作です。
精緻な文体によって描き出された本格的な歴史小説です。たちまち作品世界に誘われます。

第1話は、土方歳三による暗殺劇が描かれています。血なまぐさいシーンですが、妖艶な雰囲気に満ちていて、土方の人間的魅力がリアルに伝わってきます。
第2話は、人間模様もさることながら、江戸末期の京都の町の様子が立体的に描かれています。日本史の教科書ではなかなか味わうことができない当時の生活感が浮かび上がってくるようです。

読むことによって日常の喧噪から1歩脱却し、作品世界に浸ることができる、そんな価値をもった傑作です。

★★★ Excellent!!!

言うても、私は全然詳しくないのだけれど、この時代の新撰組が氷月さんの手で鮮やかに描かれるのを待っておりました!
まずは土方歳三。鬼の相貌と匂い立つ色気を併せ持つ男。いいですねぇ。
他の隊士の噺と合わせ、今後を愉しみにお待ち申し上げております。