文章に読む者を引き込む磁力のようなものがあり、美とは、美を生む人間とはなにか、というテーマの解題に強い説得力があって、作品世界に没頭しました。しあわせな時間でした。
人が本当に死ぬのは皆から忘れ去られたときだ、とはONE PIECEの有名な台詞だが、では偉大な芸術作品を残した者はいつまでも生き続けている、といえるだろうか。本作を読むと、そんなことを考えさせられる。密度が濃く精緻な描写は、絵も達者な作者の筆使いを目の前で見せられているようだ。この豊穣な世界にしばらく浸っていたい、という気分にさせられる。