「縋る」を含む小説

秦野綾音（はだのあやね）には『糸』が見える。 例えば見えた糸の色が『赤』であれば、その糸で結ばれた二人は『恋仲』にあることを示す。いわゆる『運命の赤い糸』を始めとした、結ばれた者…

彼女の目は外界を写さない。 私はそれを悔やみ、それに縋る。

「宝石」をモチーフにした個人アンソロジーです。 誕生石をひととおり書くことを目標にしております。

　一人の不死身の王子の物語があった。 　王子の傍には常に綺麗で可愛らしい姫の姿があり、そうして姫の姿形は常に変わっていた。次から次へと姫を変える、そんな王子はとんでもない浮気者だ…

突然蔓延し始めた奇病が、世界を覆いつくそうとしていた。 世界中で、思いつく限りのあらゆる手が尽くされ、 それでも病を直すことはできなかった。 人類統括会議は、汚染地域の封鎖を宣…

突如ライフライン（仕送り）を断たれたカズマは、藁にも縋る思いで不動産屋に駆け込む。選んだのは分かり易く怪しい破格の賃貸物件。とにかく焦っていたカズマは四の五も言わずに契約をしてし…

　――少女達は病んでいた。ある者は愛を与えられなかった『シンデレラ』のように。またある者は、出口の無い夢に迷い込んだ『アリス』のように。 　 　国内随一の医療特区、夢宮市。あら…

「正しさ」とは何か。一人の少女の死によって、きしみ始めた歯車は乞う。「正しき世界」を求める赫き剣は、思い出に縋る少年を、嘘のない世界へ駆り立てる。 ずっと隠し事をしていた。その…

欠落は欠けらではない。それらは繋ぐと道が成り、それらで繋ぐモノがある。 成って変わって捻くれて、短く小さい夢の中。 歪んだ視界に映るのは、悲劇だけとは限らない。澄んだ世界に縋るの…

　風俗店員として入社した僕は、とある系列店にヘルプとして入っていた。そこに居たのは、かつてのNo.1、今は辛うじてNo.2に縋る、ボロボロに擦り切れた女の子だった。

道標を見失い 忘却すらも通り過ぎた対価 おぞましい旅支度に黒衣を翻し 背負って立つのは命綱 滲み出す虚栄に終末思想を燻らせ 震駭する雲行きに兆候を侍らせた 能書きを這いず…

　盗賊に襲われ行方不明になった恋人を探すために、グロウは故郷の北の街を出て日雇いの仕事をこなしながら国中を旅していた。 　手掛かりを探す旅をはじめて三年が経つ頃に辿り着いた港の街…

失恋して傷ついた芥川龍之介は、親友恒藤（井川）恭に、島根で心の傷を癒せ！　と招かれます。芥川は藁にも縋る思いで島根の親友を訪ねます。しかし芥川は、失恋の傷を癒して欲しかったのでし…

ここは中欧チェコ、百塔の街プラハ。 災厄により衰退した人々は、奇跡の産物たるゴーレムを使役することで永らえていた。 ゴーレムは「言葉」に忠実だが口をきくことができない。 人と同じ…

短編小説です。 タロット占いに縋るしかなかった少女は成長して再び愛した男に出会うー それはどのような運命なのか。 その運命の意味することは読み手にとって変わるはずです。復讐なのか…

今日こそは…！と思いながら目を開けて、真っ暗な部屋を作るカーテンを開ける。 そこはいつもと変わらない景色が広がっていて、はぁ、と溜息を吐く。 そんな朝を迎えるよ…

空想と真実と伝説と伝奇――王者―― アーサー王の実態と主人公の関係！？ この物語は全文フィクションです！(笑) 史実と歴史認識自体を曲解しています。 人間は皆――希望に縋り夢を…

砂丘を一つ超えると、街の灯りが見えた。 ぼんやりと霞んだ弱々しいその灯りに向かって僕と由美は歩き続けた。 満月は相変わらず僕たちの背後を追いかけてくる。 まるで、キャラバン・サラ…

　黄色に輝く石を集めていた獣人たちの一部が暴走し、悪魔の種族として忌み嫌われたのは昔の話。 　時は流れ、戦乱が続く大陸では、種族的な特徴を持ち得ない霊人族を中心に、月を神の御使…

22世紀になっても人々は死を恐れ、生を執着し続けた。医学は日進月歩、発展しいったが、永劫の生は享受できず、死を引き延ばすことしかできなかった。人々は道を失いつつあった。果たして、…