第8回カクヨムWeb小説コンテスト 大賞受賞者インタビュー|ぽち【エンタメ総合部門】

第9回カクヨムWeb小説コンテストへの応募者の皆さまと同様に、かつてコンテストに作品を応募し、見事大賞に輝いた受賞者にインタビューを行いました。
大賞受賞者が語る創作のルーツや、作品を書き上げるうえでの創意工夫などをヒントに、小説執筆や書籍化への理解を深めていただけますと幸いです。

今回は、6月7日発売デスゲームに巻き込まれた山本さん、気ままにゲームバランスを崩壊させるの著者、ぽちさんにお話を伺います。

第8回カクヨムWeb小説コンテスト エンタメ総合部門大賞
デスゲームに巻き込まれた山本さん、気ままにゲームバランスを崩壊させる(ぽち)

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──小説を書き始めた時期、きっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。

 小説を最初に書いたのは小学校五年か六年の国語の授業でのことだったと思います。
 一枚の地図を見て、そこから小説を書いてみましょうという授業があって、そこで書いたのが最初でした。その授業は結構緩かったので、授業中にみんなで書いた小説を持ち寄って、読み合いしたりして……その結果、意外とみんなにウケたので味を占めたところがあると思います。
 その結果、勘違いして、人生の岐路に立たされる度に『小説を書いて食べていく選択肢もあるんじゃないか?』と思い、進学や就活の度に小説賞とかに応募してはいました。
 でも、芽が出ずにスッパリと諦めてカクヨムリワードで缶コーヒー代を稼ぐ方向にシフトしたのですが、結果的にエンタメ総合部門の大賞を受賞してしまいました。
 なので、「え?」という感じです。
 また、影響を受けた作品に関しては言い始めたらキリがないぐらいに様々な作品に影響を受けていると思います。経験してきた本、漫画、アニメ、映画、ゲーム、ドラマ全てが自分を成す形成要素です。というわけで、あらゆる作品という回答にさせて下さい。

──今回受賞した作品の最大の特徴・オリジナリティについてお聞かせください。また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどんな点だと思いますか?

 受賞後の選考委員の方々からのお話では主人公であるヤマモトのキャラクター性が褒められていましたので、そこが特徴になるのかなと思います。
 戦闘能力だけでなく、生産能力もチートな主人公ですので、一歩間違えれば無双ムーブに移行しそうなものですが、主人公本人が小心者だったり、抜けていたり、時に鋭かったりといった姿を見せることで読者様方にもとっつきやすかったのではないでしょうか。
 また、本作の最大のオリジナリティというと、唐突にやってくる意味不明な【バランス】だと思います。この辺はほぼ予測不能な面もありますので、読者様方に驚きと楽しみを提供できているといいですね。
 あとは、コメディ+VRMMORPG系のお話だと、延々とコンテンツをクリアしていく姿が描かれたりすることが多いので、明確な終わりを設けるためにデスゲームという形式にしたのは最終目標が明白になって読者様方に分かりやすさを提供できたのかなと思っています。

──作中の登場人物やストーリー展開について、一番気に入っているポイントを教えてください。

 上手く書けた部分に関しては全部気に入っているのですが、一番となると作中に出てくるガガさんというキャラクターが魔剣を作り出そうとしていることを主人公のヤマモトに告げるシーンになります。
 これは気に入っているのとは少し違うかもしれないのですが、この小説を書くにあたって完全にノープロットで進めていたのですが、文章の流れに沿って書き進めていたら急に魔剣というワードが降ってきて、カチンと章の最後までストーリーが完全に出来上がってしまったんですよね。
 後にも先にもそんな体験をしたのは一度きりだったので、気に入っているというか、そのシーンがなければ全く別のストーリーになっていた可能性もあるので、お気に入りポイントとさせて下さい。
 なお、ノープロットで進めているのは自分の場合はガチガチにプロットを固めてしまうと、その時点で満足してしまって自分が書いていて楽しめないからです。
 ある意味、そこがこだわりといえば、こだわりかもしれませんね。

──受賞作の書籍化作業で印象に残っていることを教えてください。

 印象的な作業としては、原稿の手直しですかね。
 当初はWeb版のここからここまでを書籍化しましょうという話で、これだと少しページ数が多いので二十ページほど削りましょうという話でした。ですが、渡されたページの規格が誤っていたようで規格を正式なものに合わせてみたら四十ページほどオーバーしていまして……。その四十ページを削るのと、書き下ろしで二十ページを追加する関係で六十ページほどを削る作業はなかなか大変でした。
 なお、その後、戻された原稿にページ数気にせずに二、三、書き下ろしエピソード追加しましょうかと言われた時は「え?」って思いました。
 あとは、なかなか絵師様が決まらなくて、相談を繰り返したりしたのも印象深いですね。その分、素晴らしい絵師様に決まったと思っています。

──書籍版の見どころや、Web版との違いについて教えてください。

 Web版では結構見切り発車で書き始めていたこともあり、間延びしている部分やちょっとボリュームが足りないなと思った部分を書き直すことで、より物語に緩急がついて面白くなったのではないかと思っています。
 また、書籍版ではWeb版にはいなかった新キャラも追加しており、これがなかなか濃いキャラクターですので、Web版既読の方にも楽しんでもらえるのではないかと思っています。
 また、追加エピソードとして、ヤマモトさんと妹ちゃんとのやりとりとか、タツさんの一人称視点なんかも書いたりしたので、興味のある方は是非手に取ってみてもらえれば嬉しいです。あ、もちろん、興味のない方も是非手に取ってみてもらえれば嬉しいです。

──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんな中で、ご自身の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行いましたか?

 一応、初期の方は書き溜めほぼなしで毎日更新を心がけていました。
 しかも、一話4500文字ぐらいを目途に書こうとしていました。
 ですが、普通に社会人として生活をしていると、それを続けるのはほぼ無理です。
 なので、まずは時間マネジメントを始めました。
 携帯に入っている時間泥棒なゲームアプリをアンインストールしましたし、ゴールデンの時間帯のテレビはダラダラ見てしまうので見ないように努めました。通勤も片道数時間掛かっていたのがテレワークとなり通勤時間がゼロになったのはラッキーでした。
 また、執筆も携帯のメモ帳で全てするようにしたので、移動中の電車の中とか、会社の休み時間でもいくらでも書く時間は取れるようになりました。
 そんな感じで執筆時間を生み出して、更新スピードを上げた結果、多くの人の目に留まるようになり、お気に入り登録してくれる人も増え、ランキングにも乗るようになり、また多くの人の目に留まるようになり――といった好循環が起こったと考えています。
 なので、時間の使い方を考えたというのが一番の工夫になります。
 あとは、奇をてらわずにテンプレ展開の始まりをチョイスしたのも良かったのかもしれません。書いている側はそれじゃつまらないと思うかもしれませんが、読者が求めているからこそ、テンプレートというものができているわけで……。
 読んでもらいたいと思うのであれば、読者が求めているものを提供するのも有りなんじゃないかと思っています。

──これからカクヨムWeb小説コンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスやメッセージがあれば、ぜひお願いします。

 カクヨムコンに挑戦したい方と、Web小説などの創作活動をしたい方では全然アドバイスの方向性が違うような気がしますが、良く考えてみると実は共通点があります。
 それは、『如何に多くの人に読んでもらえるかが重要』ということです。
 例えば、Web小説で創作活動をしたい方がいたとして、始めるのは凄く簡単だと思うんです。ネットに繋がる環境があって、メモ帳でも何でも文章が書ける環境があれば、あとはカクヨムにユーザ登録してペタッと文章を貼り付ければいいだけなので。
 ただ、始めるのは簡単なんですけど、続けられるかどうかは見てくださる人数によるところが大きいと思うんです。 折角、数日かけて小説を書いたのに、誰も見てくれないとなったら、労力に対して全然報われないじゃないかと思って辞めちゃう人も多いんじゃないでしょうか。
 そして、カクヨムコンに関しては言わずもがな。
 カクヨムコンの一次選考には読者選考があるため、まずは多くの読者の方に読んでもらえなければ、審査員の方々に読んでもらうという舞台にすら立てません(特別審査員賞を除く)
 なので、まず重要視すべきは、如何に多くの人に読んでもらえるか、つまりPV数なのだと思います。
 では、PV数を伸ばすにはどうしたらいいのでしょうか?
 工夫のしようは幾らでもあると思います。例えば、人気ジャンルで書き始めるとか、テンプレ開始を利用したり、毎日更新するための工夫を考えたり、タイトルで人を引き寄せようと考えてみたり、タグをどうするのかと考えたり、コメントにこまめに返信したり、多数の小説投稿サイトなどに多重展開してみたり、SNSなどで宣伝してみたり……。
 そういう部分を考えながら、尚且つ自分のオリジナリティを出していくにはどうすべきか、そういうことを考えながら書き始めることが重要なのかなと思います。
 まぁ、自分はそういうことを全く考えずに適当にやっていたら適当に受賞していたタイプなので、この戦略が合っているかどうかはわかりません。
 個人的には、Web小説を読みまくった結果、お気に入りのWeb小説がなかなか更新されないなー。なら、自分が思う面白いWeb小説でも書いて暇つぶししようか! くらいの勢いで書き始めちゃっていいと思うんですよね。
 それで、受賞しちゃったのが本作ですし……。
 あんまりアドバイスにならないので、こちらは真に受けずに、ちゃんとPV数を意識して頑張って戦略立ててやっていくのが一番だと思います。
 アドバイスになっているのかは怪しいですけど、何かの一助にでもなってくれたら幸いです。

 以上です。

──ありがとうございました。


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