2025年10月10日から11月12日まで開催した「第2回カクヨムU-24杯」では、253作品のご応募をいただきました。
黒澤 主計さん、まろでぃさん、snowdropさんの選考により、大賞3作品、優秀賞6作品が選出されました。
・大賞(3作品)
『頭の中でレディは殺された』作者:華矢
『空への助走』作者:佐藤大翔
『白息の四月』作者:緑山陽咲
・優秀賞(6作品)
『「会津稔を殺したのは私です」』作者:天野 純一
『流浪少女と非行青年のオークワードライフ ~Awkward Life of a Lost Girl and a Lonely Boy~』作者:二核
『春雷』作者:アスナショウコ
『鬼笑』作者:日野球磨
『マオグイの家』作者:白洲尚哉
『キャッチライト』作者:綿貫 ソウ
・最終候補作品
・選考委員による総評
大賞(3作品)
『頭の中でレディは殺された』作者:華矢
講評
とんでもないレアモノと出会えたと、ずっと夢中になって読んでいました。どこかの名のある賞の受賞作だと言われても不思議ではないし、むしろそうした賞の『当たり年』で出てくるレベルの面白さを感じました。まさに『奇跡の一作』です。
ミステリーでもあり、ホラーや青春小説、現代ファンタジーにも通ずる楽しさもある。そんな捉えどころのないパワーに満ち満ちている一方で、しっかりと地に足のついた形でエンタメを展開してくれる。そんな圧倒的な魅力に満ちた作品です。
選考委員として、この作品と巡り合えた自分は本当に幸せ者だと思います。
(黒澤 主計)
『空への助走』作者:佐藤大翔
講評
砂場で跳ぶ先輩の姿に憧れて、走り幅跳びに挑む青春物語。
憧れから――現実をみて、あがいて、もがいて、手を伸ばして追い求める。
先輩にも走り幅跳びにも、最初から夢中。跳ぶたびに、更に夢中になっていく。
そのひたむきさが、競技に打ち込む熱量を自然と感じさせてくれる。素直さを失わず、まっすぐに自分自身と向き合い、物語を進めてくれるのも心地良い。
青い空を目指して挑戦し続ける姿は、結果だけでは測れない"何か"を確かに掴んでいく。
そんなところに惹かれた一作だった。
(まろでぃ)
『白息の四月』作者:緑山陽咲
講評
悩み抜いて、倫理的難題を挑発でなく誠実に描き切った力量を選んだ。四月の雪にけぶる兄妹の白い息が、生きたいのに凍えていく悲痛を伝えている。
逃避行を装いながら愛と罪の狭間で生きる姿が胸を締めつけ、比喩に頼らず描写で泣かせる筆致がとても印象的だった。叔父不在に希望を失い、崩れゆく過程の痛切さも深く残る。
終盤の赦しと再会は静かに痛みと優しさが交わる余韻があり、そこに至る心の成熟が作品の芯を支えていた。
(snowdrop)
優秀賞(6作品)
『「会津稔を殺したのは私です」』作者:天野 純一
講評
とても完成度の高いミステリー作品でした。事実上の犯人である『保科透子』が自首をしてきたところから、ぐいぐい物語に引き込まれます。動機は一体なんだったのか。そして、どうしてわざわざ自首をしてきたのか。中盤の辺りで『事件の構図』が見えてくるけれど、それによって更に『だったらなぜ?』という謎が深まっていく。ラストで明かされる真相も、「ああ、だからこういう設定にしていたのか」と、感嘆させられました。
切れ味の鋭い構成と解明、ストレートに胸を打たれます。
(黒澤 主計)
『流浪少女と非行青年のオークワードライフ ~Awkward Life of a Lost Girl and a Lonely Boy~』作者:二核
講評
筆力が高く、ずっと安心して読み進められました。心情描写、展開のメリハリがとても丁寧で、ちょっとした日常のシーンの一つ一つを見ていくだけでもキャラクターに強く感情移入させられます。
主人公の海斗や由紀がそれぞれ抱える心の問題。序盤では説明されていない「何かの問題」が一緒にいる時間の中で少しずつほぐれていく感じ。そういうのが自然と読者に伝わってくるというのは、本当に高い技術があるからこそ出来ることだと思います。
海斗の境遇が急転する第二部からの展開も面白く、とても引き込まれる作品でした。
(黒澤 主計)
『春雷』作者:アスナショウコ
講評
連敗を重ねた女性騎手が、相棒との出会いをきっかけに才能を開花させていく競馬物語。
「馬が誇れる騎手になる」その信念を胸に駆け抜ける走りは、観客やライバル騎手、読者さえも強く惹きつけてくれる。
勝って終わり――
ではなく、挑み続ける日々という勝負の世界の生き様を描いている点も、本作の大きな魅力だろう。
また臨場感あふれる熱気と空気で、競馬に詳しくなくとも気楽に楽しませてくれるのも嬉しい点である。
(まろでぃ)
『鬼笑』作者:日野球磨
講評
鬼笑という怪異を追っていくモキュメンタリーホラー。
ほうほうと奇妙に鳴き、姿が見えず、人を殺す鬼
東北の鬼笑、運動場の怪異、京都の家系、九州の角、と断片的なエピソードを積み重ねることで、不穏さや不気味さをじわじわと蓄積。それは鬼笑という怪異を際立たせ、単なる怖さとは別の纏わりつくような気持ち悪さをもたらせてくれる。
少しずつ浮かび上がってくる鬼笑の輪郭が、面白さの中にわずかな薄気味悪さを忍ばせてくるのも本作の魅力である。
(まろでぃ)
『マオグイの家』作者:白洲尚哉
講評
身近な怖さを感じた。伝承怪談を題材に、猫憑きと蠱毒の怪異が絡み合う構成が秀逸。臨場感ある描写と緻密な謎解きに引き込まれる。
感情描写にさらなる深みは欲しいが、淡々とした手つきには現実味も漂う。説明調の長文に少々骨が折れるが、補って余りある情報量の豊かさがあった。
ホラーとミステリーを融合し、実話のリアルさを活かした構成が素晴らしい。伝承文化を背景に、怪談ライターと拝み屋が真相へ肉薄する展開に魅了された。
(snowdrop)
『キャッチライト』作者:綿貫 ソウ
講評
尾崎真宙が家族の不幸を背負いつつ、写真を通じ感情や生きている証を追い求める姿に目が潤んでしまった。尾崎と翔太、蒼生の複雑な関係が物語に深みを与えている。
描写はリアルかつ繊細で、若者の苦悩や家族の問題を丁寧に掘り下げ、現代社会の影も映し出している。
回想の重複でテンポが損なわれているが、青春の悩みや辛さを悲劇で終わらせず、希望と成長を示す構成が深い余韻を残す。青春小説として、高い完成度を誇る一作だ。
(snowdrop)
最終候補作品
惜しくも受賞を逃したものの、各選考委員の最終候補に残った作品をご紹介します。
・黒澤 主計さん選出
『コバルトブルーの蝶化身』作者:未知 推火
『とうめいのただいま』作者:冷田かるぼ
・まろでぃさん選出
『妖刀の少女と千の色彩』作者:雨籠もり
『佐喰莉子は暴れたい!〜ゾンビ殺ったら大学推薦〜』作者:白神天稀
・snowdropさん選出
『ラブレター』作者:荒木明
『紺碧の断罪』作者:見咲影弥
選考委員による総評
黒澤 主計さん
小説を書く上で最も大切なものは何か。それは『忍耐力』なのではないかと考えています。
作品を完結に至らせるには、『楽しい』ばかりではやっていられません。最後まで形に出来るかの保証なんてどこにもないし、何日間も出口の見えない中で葛藤することも珍しくありません。
それでも、『自分にしか書けない何か』のため必死に努力を続ける。現在の自分にできる全てを注ぎ込み、貪欲に面白さを追求する。そんな想いを持ち続けることが作家には必要なことなのだと思います。
今回、受賞作の他にも光るものを強く感じる作品と多く出会えました。いずれ大化けするのでは、と思わされる方たちも何人もおりました。
これからも書き続け、どんどん伸びて行って欲しいと切に願います。現在持っている『書きたい』という気持ちを、これからも大事にしていって下さい。
まろでぃさん
「第2回カクヨムU-24杯」おつかされさまでした。審査員のまろでぃです。
全体を通して拝見した印象として、企画を意識して書かれた作品とそうでない作品では、差が出ていたように思われました。また特定のジャンルでは作家や音楽などテーマが重なることも多く、完成度の高い作品であっても、埋もれてしまっていることがありました。
作品の完成度に加え、他作品の傾向分析、題材選び、客観的な視点を持って戦略を立てることも作品作りにおいて重要な要素だと思います。
と、まあ語ったものの、まずは今回、企画に応募できたということ自体が、ひとつの実績であり、ひとつの糧になったと思います。たとえ惰性やついでで応募していたとしても、なにかしらの"何か"を得ていることは確かです。最後にその"何か"を考えて自覚してみることで、さらに+αを得ることができるのではないでしょうか。
賞の有無に関わらず、今後の創作活動に少しでも活かしていただければと思います。
snowdropさん
参加された皆様お疲れさまでした。素晴らしい作品を数多くお寄せ頂き、感謝申し上げます。カクヨム甲子園の延長のように、読み応えある質の高いエンタメ作品を厳選しました。
感想と違い、構成や描写など多面的に比較して選ぶのは悩ましくも楽しい時間でした。一次選考で七十以上選び、以降は慎重に絞り、相対比較して順位を決定。知識で唸らせ、個性で魅せ、構成で感心させる三要素を備えた完成度の高い作品を選びました。
受賞を逃した中にも光る作品は多く、枠がもっと欲しかったです。今後も情熱を絶やさず創作し続けてください。
雪解わかば作『夏の幻影』は、私のカクヨム甲子園感想への返歌のように響いたので、個人的に特別賞をあげたい。
あらためまして、公式自主企画「第2回カクヨムU-24杯」へのご参加、ありがとうございました。
カクヨムではこれからも様々なコンテストや創作支援企画を実施してまいります。
若い作者の皆さまには、ぜひ今後もカクヨムでの創作活動を続けていただけたら幸いです。



