今回は、「句会潜入レポ」です。俳句の部・西村麒麟さんの主催する結社、「麒麟俳句会」に、カクヨムスタッフ(俳句ド初心者)が実際に作った俳句を携えて潜入して参りました!その様子をお届けします。また、コンテスト応募作にレビュー投稿で50名に図書カードネットギフト500円分が当たるキャンペーンも実施中ですので、詳細をご確認ください。
突然ですが、まずは句会で取り上げられた「俳句の穴埋めクイズ」を紹介します。
Q.「〇〇」に入る部分を予想してみてください。(句はどちらも、俳人・深見けん二の作品です)
〇〇受けつつたつぷりと初湯かな
もう一問紹介します。
人生の輝いてゐる〇〇〇
参加者からは、「ハンモック」「さるすべり」「昼寝覚め」「かしわもち」などなどの予想が。
俳句のエッセンスが詰まっているようなお話だったので、真っ先にご紹介してみました。意外な言葉選びだったのではないでしょうか。
- 多くの人が体験している題材を詠みつつ、ちょっと視点や切り取り方がズレていると面白い。
- そのために詠む対象のことをじっくりと見て、ありがちな発想から離れる。
- 「ありがちな発想」を知るためにも、今までに詠まれた俳句のインプットも重要。
- 仰々しい表現で飾り立てると失敗しがち。字面を美しくすることに気をとらわれず、その言葉選びに必然性があるのかどうか、きちんと考える。
- 自己顕示欲からは脱却すべし。
- 状況の説明だけで終わっている俳句にならないよう、注意!
上記6つのポイントをいかに体得したか、1日を振り返ってみましょう。
句会の流れ
①清記
持参した五句を、五枚の短冊(細い紙)に書いて受付の方に渡します。
→ここで全員分の俳句が清書されます。これを「清記」と言い、筆跡や順序で特定できないように工夫がされています。
②選句
清記のコピーが次々と配られました。それぞれの俳句に番号が振られています。今回の句会では全部で190句(!)。この中から、自分の良いと思う句を3句選びます。(一つは「特選」。一番よかったものも選んでおきます)
③選の共有
一人一人、全体に向かって、自分の選んだ句を読み上げます。自分の作った句が選ばれたら、作者は名乗りをあげます。
④主宰(西村さん)による選と、全体からの句評
西村さんの選にあった作品に選を付けた人が指名方式で意見を仰がれ、句評をしていきます。
さて、清記したプリントが配られると、早速②の選句に移ります。40分ほど時間が取られて、参加者全員、静かに作業を進めていました。
スタッフの選はこの三句。
「前輪が薫風を巻き込んでゆく 大和田美信」(主宰特選句)
「夏鴨の人に心を許さぬ目 西村麒麟」(スタッフ特選)
「父だけがずつと見てゐる鯉幟 清水縞午」(主宰特選句)
スタッフメモ
「そろそろ選、行きますか〜」
との西村さんの声がけで、③選の共有がスタート。
「自分の句、誰かに選ばれるかな?」とドキドキ。
他の参加者を全く知らない状態でも、選を聞いていくと、「この人の句、たくさん選ばれているな」ということが、だんだん分かってきます。ここで読み返して、素敵だな、と思い直す句も。
自分の選んだものが人気だったり、西村さんの句だったりすると、「ちょっと審美眼イケてるんじゃない?」と嬉しくなったり、逆に誰にも選ばれてない句を取っていると、「わたしだけがこの句の良さを見つけたんだ……!」と思えたり、どっちに転んでも選を聞いていくのが楽しく、西村さんが句会を「ゲーム」と言っていたのにも納得です。ちなみに、スタッフの句は誰にも選ばれませんでした。
最後に、④西村さんご自身による選が読み上げられます。今回は「特選」八句と「入選」三十句ほどが選ばれました。
スタッフメモ
✅ここで、今回の句会で「特選」をもらっていた句と、その句評の一部を紹介します。
柏餅かじるや鼻に葉のふれて 田中木江
柏餅かじるや鼻に葉のふれて 田中木江
緑陰や菓子の軽さが缶の中 田中木江
スタッフメモ
足楽し実梅実梅と避け歩き 田中木江
スタッフメモ
父だけがずつと見てゐる鯉幟 清水縞午
この「父」も、子どもだった時には見なかったかもしれない。鯉幟にまつわる懐かしさが立ち上る句ですね。
ぼくは詠む対象をよく知るために、写真をうつしとって描いてみるんですよ。鯉のぼりは、実際によく見てみると意外にお腹は真っ白で、鱗は金で縁取られているのがわかります。泳いでいる鯉のぼりを眺め仰ぐだけだと気付けないこともあるので、一度、自分で作って立ててみる、というのもおすすめです。
スタッフメモ
改めて、わかっている気になっているものでも、描きとってみたり、近くで触れてみるのが大切。
ちなみに、選ばれなかった句についても、簡単に選外の由が共有されていきます。スタッフの句、
かしわもち母は買えども子は食わず
には、「ちょっと当たり前すぎるので、買ってないけど食べた、のように一般的な常識から外す句とする方法もあります」とのコメントをもらいました。
あっというまの4時間。
麒麟俳句会は100人以上いる大所帯の結社なんだそうで、今回、東京では結社「麒麟」創刊から2回目の句会とのこと。出来立てほやほやの「麒麟」創刊号を頂きました。気になる結社誌の中身もほんの少しご紹介。
結社誌では、会員(結社のメンバー)が各号の締め切りまでに「投句」を行い、その中から主宰の西村さんが選を行って、「天」「地」「人」「一席」「二席」……と、順に掲載された上で、投句された全員の作品が掲載される仕組みになっているようです。
そのほか、「麒麟の本棚」として、インタビュー「俳句のススメ」でも紹介されていた『近現代詩歌』の紹介記事も載っていました。それぞれの記事については、結社の会員が執筆しており、記事を書くことでも、読むことでも、俳句への理解が深まりそうです。
ちなみに、結社の番外編的な活動として、メンバーで吟行に出かけたりもするとのこと。たしかに休日の趣味としても、人との繋がりに広がりができて生活が楽しくなりそう! と思いました。
この句会のあと、美味しいピーマンを食べた時に、「旬は?」「いつの季語?」と検索してしまいました。これが「季語脳」……! その場で作品を集めて、参加者全員が各々の作品を読むことができる、というのは小説では絶対不可能な体験で、とても新鮮でした。
というわけで初心者でも俳句は存分に楽しめるので、みなさんお気軽に第1回カクヨム短歌・俳句コンテストへご応募くださいね!
【7/10まで】レビューでつながる短歌・俳句キャンペーン
<参加方法>キャンペーン期間内に「第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト」の応募作品に対して文字付きレビューを投稿してください。
kakuyomu.jp
<対象期間>
2023年6月28日(水)~2023年7月10日(月)23:59投稿分まで
<賞品>
参加された方の中から、抽選で50名さまに図書カードネットギフト500円分をプレゼント
<結果発表>
カクヨムにご登録のメールアドレスへの賞品の送付をもって、当選発表に代えさせていただきます。送付は2023年7月頃を予定しています。
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