カクヨム発ヒットコンテンツ2本同時アニメ化 記念特集!第1弾 『スーパーカブ』 トネ・コーケンさんインタビュー

2016年3月に第1話が「カクヨム」に投稿された少女×バイクの青春物語『スーパーカブ』、つづいて2017年3月に第1話が投稿された家出JKと26歳サラリーマンの日常ラブコメディ『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』

どちらも投稿中から話題をさらい、角川スニーカー文庫からシリーズ刊行。さらに人気を集めて漫画化され、今年4月からはとうとうTVアニメも放映開始!

『スーパーカブ』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』は、カクヨムの数ある投稿作の中から、いかにして見出され、人気を博していったのか?

このたびのメディアミックス化を記念して、著者のトネ・コーケンさん、しめさばさんはじめ、企画に関わったスタッフたちの熱い想いを、直撃インタビューの連載形式でこれから全4回にわけて、お送りします!

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第1弾『スーパーカブ』トネ・コーケンさんインタビュー篇

Q:この作品を書こうと思ったきっかけを、まず教えていただけますか?

トネ:じつは、小説『スーパーカブ』は、ずっと書きたいと思っていた作品と作品の合間に、偶然生まれたような小説なんです。
元々、妄想好きな小説愛好家として、長らく自分の中で温め、それなりに力を入れた作品を書き切ったところで、次の大きな作品に取り掛かろうとしていたんですが、その前に、何か一つ自分の文章能力を向上させる作品を手っ取り早く書いてみよう、と。

準備期間もそれほどなかったので、現実世界の高校であれば世界観設定も不要だし、既に自分が充分詳しい知識をもっているスーパーカブを題材にすれば下調べもしなくて済む(笑)。舞台も、土地勘のある山梨県の武川村(※その後合併し、北杜市に)だったら書きやすいかな、という理由で選んだんです。

Q:ご自身の勝手知ったる舞台で、肩の力を抜いて作品を書かれたことが、かえって効を奏したのかもしれませんね。

トネ:はい。作品のクオリティにこだわるより、まずは毎日更新することをノルマとして投稿し続けたところ、結果として、独善に依らない『スーパーカブ』に書籍化のお声がかかることとなりました。

Q:そもそも、カクヨムに投稿しようと思われたきっかけは何だったのでしょう?

トネ:自分の書いた作品の保存がとても大雑把だったので、自宅PCにもしもの事があった時のリスクヘッジとして、「小説家になろう」に投稿した作品を「カクヨム」にも同時に掲載することにしたんです。そうしたら、「カクヨム」のほうで良好な評価をたくさん頂けて、ついつい色気や欲目が出てきて(笑)。その後、「カクヨム」オンリーでの投稿は公募や書籍化時に有利に働くと聞き、掲載をこちらに一本化したところ、スニーカー文庫様より打診を受けることとなりました。

Q: なんと、そんなご縁の引き寄せがあったのですね!

トネ:そうですね。だから、意図的というよりは、諸々の事情で場当たり的にとった方法だったのですが、今となっては、それが最適の行動だったなと思っております。

Q: 小熊、礼子、椎。スーパーカブを通して、友情をはぐくみ、これまでの世界から一歩を踏み出していくキャラクターたちの関係性がとてもみずみずしいです。

トネ:主人公たちに何かを行動をさせたり、特定のイベントを起こすだけの書き割りの舞台装置のようなキャラクターは、どうにも苦手なんです。最初に役割や展開を決め、それに合わせてキャラ造形するのではなく、たとえ、1シーンにしか登場しない脇役のキャラであっても、一人ひとりがその人の思考や基準で動いていて、それが結果として主人公たちに影響を及ぼすような「人間」を書きたいと思って書いています。

Q: 投稿作がはじめてスニーカー文庫で書籍化されたときは、どんなお気持ちでしたか?

トネ:当初、小説を書くことは僕にとって、なりわいというよりは本業の仕事の疲れを癒す趣味、という位置づけでした。それでもやっぱり、時にどうにも割り切れず、このまま書き続けていても、自分の作品なんて何の評価も得られないまま終わってしまうのではないか、今の勤めが不安定になったときにも安心できるような副収入にならないのでは、と不安や虚無感にさいなまれることがあったんです。

だからある日、メールの受信箱に見慣れぬ版元の宛先からメールが届いているのを見つけ、その内容を読んだ時は、「俺は作家になったぞ!」と思わず叫びたい気分になりました。

Q: 単品ではなく、長くシリーズとして続けていく上で、気に掛けていらっしゃることはありますか?

トネ:WEB小説から出た小説家って、普通の作家と違って、デビュー当初から、オファーを受けて執筆→そして書籍化、という手順を踏んでいるわけではありません。そのせいかもしれないんですが、シリーズ執筆中も、常に、次の巻は次の次の巻を出すことが出来る内容にしよう、と惹きや展開を意識しつつ、と同時に、もしこの巻で終わったとしても、尻切れトンボでなく、そこで良い区切りになるように、と心がけて書いていました。

Q:そういう緊張感や先々の展望をもって執筆にあたっていることが、シリーズのロングヒットの秘訣なのかもしれませんね。

トネ:でも、もう一つ大事なこととして、ひとつの成功体験にしがみつかず、シリーズの評判が思わしくなくなった時には、きちんと自分で見切りをつけて、次の作品へとスイッチするという気持ちも忘れないようにしています。自分がその作品だけの書き手にならないように。

Q:コミックNewtypeで漫画化が決まったときは、どのようなお気持ちでしたか?

トネ:書籍化デビューした後も、生き残る人間と消える人間がいて、また消えたと思っても別の作品で蘇る人間がいる、というのが、このネット小説の世界です。だから、書籍化されただけでは決して安心できない。コミカライズのお話を頂いた時は、どうやら首が繋がったらしいと思い、安堵しました。それからしばらくの間、何か自己肯定の言葉が欲しくなった時は、そのたびコミカライズ、コミカライズと何度も唱えていました(笑)。

Q:そこから更にアニメ化が決定。この怒濤の展開をどのように捉えていらっしゃいましたか?

トネ:当時はコミカライズやアニメ化、雑誌、新聞の掲載やイベント出席などが続けざまに決まったこともあって、現実感のないまま実作業が進行していったというのが率直な印象です。最も気を付けていたのは、もしもこの話が諸般の事情で制作中止におちいって、僕の目前から取り上げられるようなことがあったとしても、心を壊さないようにすること(笑)。それはアニメ放送が進行中の今も変わりません。

Q:どこまでも予防線を張っておく、と(笑)。実際のアニメも、すごく絵がきれいで、スーパーカブというバイクへの偏愛、ディテールのこだわりも凄いですよね。実作者としてのご感想はいかがでしたか?

トネ:アニメや小説本編に関する作業が、実はまだたくさん残っているのですが、無事に初回が放送された時は、思わず感慨の深いため息をつきました。

ささやかなお祝いに一杯やりながらアニメを視聴し、ネットでの反応など覗き見した後、終わりの見えない作業を再開したことを覚えています。

今もまさにその渦中なので、忘れようがありません。

Q:最後に、いまカクヨムに投稿していらっしゃるユーザーさんへのメッセージをお願いします。

トネ:同じくカクヨムに投稿している皆さんとの切磋琢磨のおかげで、小説のみならず数々のメディアを発表することが出来ました。

まだまだ書きたいお話は湧き続けているので、これからも他作者諸氏の作品に刺激を受けつつ、僕の物語をここに解き放ちたいと思います。

どうもありがとうございました!

次回は、本作を見いだして書籍化をオファーした編集者や、メディアミックス化に伴走した編集者、アニメプロデューサーなどのインタビューも続きますので、ぜひお楽しみに!

◆関連情報:
kakuyomu.jp

TVアニメ『スーパーカブ』について

「私には何もない。と思っていた。」

ひとりぼっちの女の子と、世界で最も優れたバイクが紡ぐ、友情の物語。

山梨県北杜市の高校に通う女の子、小熊。両親も友達も趣味も無い、何も無い日々を過ごす彼女だが、ふと見かけた中古のスーパーカブを買ったことで、ちょっとずつ短調な毎日が変わり始める。

TVアニメPV

TVアニメ「スーパーカブ」PV第1弾 - YouTube
www.youtube.com

放送情報

4月7日より放送開始
AT-X
毎週水曜23:00〜23:30 4月7日(水)スタート
リピート放送 毎週(金)11:00/毎週(火)17:00
TOKYO MX
毎週水曜 25:35〜26:05 4月7日(水)スタート
KBS京都
毎週水曜 25:35〜26:05 4月7日(水)スタート
サンテレビ
毎週木曜 25:30〜26:00 4月8日(木)スタート
テレビ愛知
毎週木曜 26:35〜27:05 4月8日(木)スタート
BS11
毎週金曜 25:00〜25:30 4月9日(木)スタート
山梨放送
毎週金曜 24:30〜25:00 4月16日(金)スタート

配信情報

【地上波先行配信】4月7日(水)から毎週水曜23:30〜
dアニメストア

4月14日(水)0:00〜順次配信予定
Amazonプライム・ビデオ/TELASA/J:COMオンデマンド/ひかりTV/U-NEXT/アニメ放題/Hulu/バンダイチャンネル/ABEMA/GYAO!/FOD/niconico/Rakuten TV/ビデオマーケット/DMM動画/HAPPY!動画/MOVIEFULL/クランクイン!ビデオ/

原作情報

『スーパーカブ』
著:トネ・コーケン イラスト:博

あらすじ:山梨の高校に通う女の子、小熊。両親も友達も趣味も無い、何も無い日々を過ごす彼女だが、中古のスーパーカブを買ったことでクラスメイトの礼子に話しかけられて――「わたしもバイクで通学してるんだ。見る?」

コミカライズ情報

『スーパーカブ』
漫画:蟹丹 原作:トネ・コーケン キャラクター原案:博

▶Comic Walkerで読む
■コミックNewtypeにて好評連載中! comic.webnewtype.com

▼第2弾はこちらから kakuyomu.jp