第12回角川つばさ文庫小説賞〈金賞〉受賞🏆無月蒼さん『アオハル100%』発売記念インタビュー


2024年に角川つばさ文庫小説賞の金賞を受賞し、この秋、念願のつばさ文庫デビューを果たす無月蒼(無月弟)さんをインタビュー!
実は、無月蒼さんのカクヨム利用歴は8年にもおよぶそうです。カクヨムを通じた執筆活動で掴んだ受賞の経緯や、出版までに経た改稿作業などについて、お伺いしました。
10月9日発売の『アオハル100% 行動しないと青春じゃないぜ』ぜひご注目ください!

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――それでは無月蒼さん……おもわず「無月弟」さんと呼びそうになってしまいますが(笑)、そろそろ「蒼さん」に慣れないとですね。

無:はい、よろしくお願いします(笑)。

――長年「カクヨム」で活動してこられましたよね。まず、カクヨムで執筆を始めたきっかけを教えてください。

無:小説を書きはじめて、「せっかくならだれかに読んでもらいたい。感想をもらえたらうれしいな」と思って、いろいろな投稿サイトがある中、出会ったのがカクヨムでした。

――活動当初から、商業作家を目指していたのでしょうか?

無:いえ。活動当初から小説賞の公募には出していたものの、心のどこかでは「自分がなれるわけがない……」って思っていましたね。
「たとえ1人とか2人でも、だれかに作品を読んでもらえたらそれでいい」って思っていました。

――そんな無月さんが、商業作家を目指すようになったきっかけは、なんでしたか?

無:それは、カクヨムの上で交流のあった人たちが、次々とデビューされていったのが大きいです。
みなさんの活躍を見て、「自分も後につづきたい。同じステージに立ちたい」って、思うようになっていきました。

――カクヨムで書きつづけてきたことで、執筆の上で役だった部分、逆に苦労した部分などはありますか?

無:役立った部分は、カクヨム上で、たくさんの作品に触れることで、視野を広げられたことです。
知らなかったことを知ったり、新しいものに興味を持ったりしたことで、自分に描ける世界が広がった気がします。
苦労した部分としては、ほかの方の作品を読むのに夢中になりすぎて、気がつけば自分が執筆する時間がない!ってなることですね。おもしろい作品が多すぎて (笑)。

――これまで積極的に作品を発表してこられましたよね。投稿に対するモチベーションを保つために、工夫していることがあればおしえてください。

無:「この作品を公開したら、あの人が読んでくれるかなあ?」「あの人に、おもしろいって思ってもらえたらいいなあ」など、読んでくれる人のことを考えると、自然にがんばろうっていう気持ちになれます。
作者と読者の距離が近いカクヨムだからこそ、「あの人に楽しんでもらいたい」って、強く思えるのです。

――いよいよ商業作家として活動の場を広げられる無月さんから、同じく書籍化をめざす投稿者の方に「おすすめのカクヨムの活用の仕方」があれば教えてください。

無:人によるかもしれませんが、自分の場合は、たくさんの作品を読んで、たくさんの人と交流すること、ですね。
おもしろい作品との出会いは力になりますし、ほかの作者さんや読者さんとコミュニケーションを取ることで、自分とは違う考え方や価値観を知ることができます。
なにより執筆仲間がいるのといないとでは、やる気がまるでちがうので、おすすめです。

――商業作家デビューを目指しているカクヨムユーザーに向けて一言お願いします。

無:まだ僕も、スタート地点に立ったばかりなので、えらそうなことは言えないのですが、書くことも読むことも、どうか楽しんでください。
「楽しい」と思う気持ちが、きっと力になるはずです!

――10月9日にいよいよ発売される『アオハル100% 行動しないと青春じゃないぜ』ですが、どんなお話ですか?

無:ヒロインは、ある事情から、クラスの中で少し自分をおさえぎみだった少女、ほむらです。
そんな彼女が、ある日、クラスメイトの「ぼっち男子」久留見くんの、素敵な一面を知ります。
もっとお近づきになりたいと思うけれど、人気者で暮らすのまんなかにいがちなほむらとクルミくんとでは、立ち位置がちがいすぎて、話しかけるきっかけがない。
そんなほむらが思いついたのが、『#アオハルチャレンジ』という、SNSを使った遊びなんです。
はじめは、クルミくんのためだったけど、気がつくとSNSでほかのクラスメイトや、学校や地域の垣根を超えて、たくさんの人とつながっていき、
ほむらも、もともとの明るくて積極的な自分自身もとりもどしていく――そんなお話です。



――児童文庫のテーマに「SNS」を取り上げたのはめずらしいんじゃないでしょうか。テーマにしようと思いついた、きっかけはありますか?

無:たまたまX(旧Twitter)で、大喜利をやっているのを見かけたのですよ。
SNSでは、ときにはグチや悪口で盛りあがってしまう様子も見かけますけど。
大喜利って、1つのネタにたくさんの人がいっしょになって「もっとおもしろいアイディア出そう」「笑わせてやろう」みたいに盛りあがる感じが、SNSならではの遊び方ですよね。
こんな楽しさを作品で表現できないかと考えました。
ありがたいことに、選考委員のお一人の藤ダリオ先生が「とても可能性のあるテーマ」と高く評価してくださって、金賞受賞につながりました。

――受賞が決まり、出版にむけて、大幅な改稿作業があったと伺いました。改稿で苦労したことはなんでしたか?

無:主人公2人の性格や設定を、まったくイチから作りなおしたところです。
受賞が決まり、担当編集者さんと、一番最初に話しあいました。担当さんから、
「つばさ文庫というのは、こういう読者が読んでいるレーベルなんです」
「今ある人気シリーズでは、こういうキャラが人気です」
というあたりを、改めてききました。
その上で、「つばさ文庫読者に新しく加わるシリーズとして、注目を集め、これから先、長く愛されるためには、どういうキャラ造形がいいでしょう?」
と考えました。
試行錯誤したのですが、なかなかコレだというキャラにたどり着けず、書いては消してをくり返しましたね。
カクヨムでの公開時の主人公2人のことを好きだと言ってくだってた方もいたので、みなさんの期待を裏切ってしまったらどうしようということも心配でした。
でも、結果、元よりもしっかりしたキャラクターになったのではと、自分では思っています。

――担当編集者がついたことで、よかった面はありますか?

無:担当さんがついたことで、それまで1人では気づけなかった弱点を、指摘してもらえるのがありがたかったです。
自分は今まで全部独学でやってきたせいか、基本的なことでもわかってないことが多かったのですよ。
「どういう部分がどう足りないのか」を指摘してもらえたし、あとは1人で書いてたらアイデアがまとまらず「もうこれでいいや」って妥協するようなことも、ねばり強くいっしょに考えてもらえました。
担当さんから原稿上に「ここがいいね!」「この台詞最高!」とかコメントが書きこまれて返ってくるのも、うれしかったですね。
あと、たとえば、主人公のほむらは「スケボーが得意」という設定なのですが、これは自分だけでは絶対に出てこなかったアイディアです。
改稿の作業は、大変なことも多かったですけど、今までで一番楽しく書くことができました!

――1巻中でのお気に入りのキャラクターはいますか?

主人公のほむらですね。
自分は、なにかやりたいって思ってもなかなか動けないのですが、ほむらは思い立ったらすぐ行動するような子。
自分で楽しいことを探し、あるいは作って全力で取り組んでいく様子は、書いてて楽しかったです。

――すでに2巻に着手されているそうですね。どんなお話になるんですか?

無:1巻巻末の次回予告にも入れてもらったのですが、2巻にはさっそく新キャラが登場して、ほむら、クルミくんと「三角関係」っぽくなっています。
これは1巻の改稿作業にとりかかるのと同時に「絶対に2巻ではこうしましょう!」って担当さんにプッシュされていました(笑)。
3人目のキャラクターの登場を踏まえて、ほむらとクルミの設定を深めたところもあります。
1巻は、ほむらとクルミの関係がメインで進むのですが、この先3人になると、より複雑な人間関係が描けるんですよね。
1人をめぐって、そのほかの2人がバチバチ火花をちらして競いあうって、「青春」っぽいじゃないですか。
単純な三角関係とは、またちがうひねり方をするつもりで、くわしくはまだ言えませんが、1巻を超えて、さらにさわやかな気持ちになれるお話にしたいです。


――作品のおすすめポイントについて一言、お願いします。


無:物語の鍵になっているのが、SNSを使った遊び、#アオハルチャレンジです。
SNSはきっかけにすぎなくて、リアル・ネット上問わず「友だち」といっしょに「青春」っぽいことにチャレンジする遊び。
これはお話の中だけでなく、実際に自分たちでもやることができます。
読者さんにも「自分もアオハルチャレンジをやってみたい」「こんな青春を送りたい」って思ってもらえるように、書いたつもりです。
ほむらたちと、ワクワクする気持ちを共有して、これからも楽しんで読んでもらえたらうれしいです。


カクヨム出身作家としては、まだスタートラインに立ったばかり。
みなさんに見守ってもらえたらうれしいですし、自分がそうだったみたいに、書き続けるモチベーションにつながったらいいなと思います。


▼第13回角川つばさ文庫小説賞は2024年7月1日~8月31日で募集しました。 kakuyomu.jp