第9回カクヨムWeb小説コンテスト 大賞受賞者インタビュー|右薙 光介【異世界ファンタジー部門】

 カクヨムコンテスト10への応募者の皆さまと同様に、かつてコンテストに作品を応募し、見事大賞に輝いた受賞者にインタビューを行いました。
 大賞受賞者が語る創作のルーツや、作品を書き上げるうえでの創意工夫などをヒントに、小説執筆や書籍化への理解を深めていただけますと幸いです。

 今回は、第9回カクヨムWeb小説コンテストで異世界ファンタジー部門大賞を受賞し、2025年1月10日にカドカワBOOKSより書籍版が発売される『国選パーティを抜けた俺は、やがて辺境で勇者となる~“悪たれ”やり直し英雄譚~』(受賞時タイトル『親友が国選パーティから追放されたので、ついでに俺も抜けることにした。』)の著者である右薙 光介さんにお話を伺いました。

第9回カクヨムWeb小説コンテスト 異世界ファンタジー部門大賞
国選パーティを抜けた俺は、やがて辺境で勇者となる~“悪たれ”やり直し英雄譚~ (右薙 光介)

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──小説を書き始めた時期、きっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。
 小説を書き始めたのは小学5年生くらいの時、母からお下がりのワープロをもらったことがきっかけ。
 父が司書という仕事をしていた関係もあり、幼いころからたくさんの本に囲まれて育ち、小説を読むことも好きでした。
 ボードゲームやゲームブックも好きで、自分の物語を作ってみたいという気持ちは強かったかも。

 影響を受けた作品はやはり、『指輪物語』。
『ナルニア国物語』や『モモ』などの海外ファンタジーも好きだったし、国産ライト・ファンタジーのはしりである『小説ドラゴンクエスト』や『ロードス島戦記』にはかなり影響を受けていますね。
 特別に参考にした……という作品がハッキリとあるわけではないけど、たくさんの物語が私の創作の基礎になっているように思います。
 それこそ、本職で必要に駆られて読んだ学術論文ですら「誰にどんな風に届けるのか」という点で参考になっている部分があります。


──今回受賞した作品の最大の特徴・オリジナリティについてお聞かせください。また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどんな点だと思いますか?
 かつての自分が描きたかった『本格ファンタジー』を、今の自分が描くとしたら……というコンセプトで描きました。
 昨今のweb発作品と差別化を図るためにできるだけビデオゲーム的な要素を削減し、キャラクター同士の関係性や心情の変化、そして伝統的ヒロイックファンタジーらしい部分を前に出しつつ、文章そのものはweb発のライトノベルらしい構成で『誰にでも読みやすい本格ファンタジー』を目指しました。
 特別なオリジナリティを持たせるというよりは、復古的な特徴をもった作品だと思います。


 正直なところ、どうしてこの作品が支持されたのかは上手く自己分析できていません。
 ただ、読者の皆さんがレビューコメントで好きなところを教えてくださったので、そういったところが読者さんや選考委員さんに評価・支持されたのかなとうっすらと考えてはいて、そこは私が楽しんでいただきたかったところでもあるので、うまく噛み合ってよかったなと嬉しく思っております。

──作中の登場人物やストーリー展開について、一番気に入っているポイントを教えてください。
 作中で気に入っているシーンは、たくさんあるのですが『一番』と言われるとなかなか決めがたいですね。
 例えば、サランとのコーヒータイムはお気に入りのシーンの一つですし、聖女フィミアが暗躍するバスタイムも捨てがたい。かと言って、幼馴染ロロが説教まじりに主人公を励ますところも好きなシーンです。
 それでも、作中でどれか一つだけと言われれば……〝淘汰〟を前に主人公が『勇者』へと覚醒するシーンでしょうか。
 昨今は擦られがちな『勇者』という存在を、新しくも古き良きファンタジーを目指す本作の中でいかに正統派に描くかという点でやや苦戦したのですが、ありがたくも多くの読者さんからお褒めいただいたところなので、ここがお気に入りポイントですね。



──受賞作の書籍化作業で印象に残っていることを教えてください。
 書籍化にあたって、web掲載時よりもテンポやキャラクターエピソードの取り回しについて、ご指摘・ご相談いただくことが多く、加筆部分や改稿で少し苦戦しました。
 それでも、編集殿がかなり踏み込んでフォローをくださりましたし、電話などでも何度も相談に乗っていただけたので相当助かりました。
 書籍化作業でこういった密なやり取りをすることがあまりなかったので、新鮮でした。

──書籍版の見どころや、Web版との違いについて教えてください。
 web版との違いは、加筆・改稿された部分でしょうか。
 編集殿と相談して、時系列を少し変えてみたりロロ君の活躍シーンを増やしたりしております。
 テイストはそのままに、一冊の書籍としてダイナミックに楽しめるようにテンポ感を良くしました。
 加えて、やはり輝竜司先生に描いていただいたイラストですね。
 各キャラクター、イメージぴったりに描いていただきましたので、物語と一緒に楽しんでいただけますと嬉しいです。
 ええ、特にグレグレの可愛さといったら、作者もニコニコです。


──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんな中で、ご自身の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行いましたか?
 メタ的な話になってしまうのですが、わずかなりとも露出を増やすことと、読者さんとお互いにレスポンスを交わすことでしょうか。
 具体的にはSNSでの宣伝や、先行で公開している作品でのコンテスト参加表明、応援レビューやコメントへの返信、エピソード節目でのあとがきコメントなどです。
 webの特性上、『読まれている作品はさらに読まれるようになる、評価される』といった具合に読者さんが増えますので、個人でできる範囲の宣伝活動はなんでもしました。
 何かを指して「これが大きな効果があった!」とは言い切れませんが、執筆や投稿、読者さんの交流といったことも含めて積み重ねだと思います。

──これからカクヨムコンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスやメッセージがあれば、ぜひお願いします。
 まずは難しいことを考えずに、手を動かしてみることをオススメします。
 コンテストの参加にせよ、Web投稿にせよ、あまり深く考えすぎずにまずは挑戦してみてください。
 最初から完璧なものなんて書けやしないし、どれだけ書いても完璧になんてなりません。
 たくさん書いて、たくさん躓いて、たくさん失敗して、たくさん見直してください。
 『失敗を経験する』って実際は成功体験でもあったりして、そこから何をサルベージして次に活かすかの方が大事だったりします。
 世の中、探せばたくさんの創作論や創作技法が目に付くかと思いますが、それらを上手く扱えるようになるのは、自分が創作の何に困っているかが把握できてからです。
 ですので、まずは創作や挑戦そのものを楽しんでくださいね。

──ありがとうございました。




第9回カクヨムWeb小説コンテスト 異世界ファンタジー部門大賞『国選パーティを抜けた俺は、やがて辺境で勇者となる~“悪たれ”やり直し英雄譚~』は2025年1月10日より発売中です!

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