第25話
心ちゃんを攫った奴らが指定してきた場所は、昨年拠点を移したらしい元物流倉庫だった。
駅から離れているので人出は多くないが、帰宅途中のサラリーマンや学生がいないわけでもない。それらに紛れながら近くまで来た。
倉庫を目視で確認できるようになってからは、ちらほらとガラの悪そうな奴らがうろついている。
(さすがにこのまま中には入れないか)
一旦その場を離れ、近くのコンビニに寄る。
商品を選ぶフリをしながらスマホを確認すると、涼介さんからメールが入っていた。
添付されていた画像を開くと、この短時間に調べてくれたらしい、倉庫内の間取りが送られていた。
(入口は3つ)
表は明らかに見張りがいる。裏の小さい方にまわってみるか。
ここに俺がいることになった理由は、今から4時間前に戻る。
「__あの、待ってください」
発言した俺に、ふたりの視線が刺さる。
いつものふざけたようなものでも、優しいものない。
余裕のない二人の圧を感じながら、覚悟を決めて口を開いた。
「内部状況、リアルタイムのものの方がいいですよね」
「ああ」
「だったら俺が中見てきます」
「はあ??」
大きく目を見開いた平野さんが視界に入った。
「無理に決まってんだろ、見張りがいないわけがない」
「わかってます」
「じゃあ__」
「でも、心ちゃんの居場所を特定する必要がありますよね?指定された場所にいるとも限らない」
「……」
「乗り込んでから探すのは時間がかかりすぎる。人数差あるなら時間はかけるべきじゃない」
「……その通りだが、お前わかってんのか?見つかったらどうなるか。最悪死ぬぞ」
「わかってます」
強い視線を見返して頷いた。意見を下げようとしない俺に、眉間にシワを寄せ黙ってしまった涼介さん。
「たぶんふたりは聞いてますよね、俺がセンチネルだって」
「……」
やっぱりな。宗一さんから漏れたのか、それとも涼介さんは最初から当たりをつけていた可能性も高い。であればあの強引な勧誘も納得できる。
「俺は触覚のセンチネルです。他者の視線は肌で感じます。バレたらすぐに気付けます」
捕まる前に逃げられます。行かせてください。
迫る俺に黙ったままの涼介さん。
…駄目か、と諦めかけたとき返事をしてくれたのは平野さんだった。
「亜樹くん、見つかったらどうなるか、保証できないんですよ?」
「はい」
「……本当にいいんですか?」
「ええ」
頷く俺に、平野さんは深く頭を下げた。
「私の身から出た錆に、君を巻き込んでしまって申し訳ない」
__お願いします
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