第8話


センチネル:

味覚・嗅覚、触覚・視覚・聴覚が通常より発達した人間。能力の使用により身体・精神負荷がかかる。そのため定期的にバランサーのガイディングにより感覚閾値を下げ負担を落ち着かせる必要があるが亜樹はサボっている。


バランサー:

センチネルの過剰になり過ぎた感覚を落ち着かせることができる。センチネルにバランサーが必須なのに対し、バランサーにはセンチネルは必須ではない。

そのためセンチネルとバランサーが番になった後、バランサーによるガイディングが無くなるとセンチネルは遠くない未来、ゾーン悪化により命を落とす。









週明けから寝込み、結局なんとかベッドから這い出れたのは週末だった。


なんとか出勤日には間に合ったが、ここ数日ろくに食事をしていない。


ストックしてある簡易栄養食を必死に飲み込んでいたがそれも底を尽きる。


ようやく食欲も出てきたので外食で済ませようか。


シャワーを浴びるために服を脱ぐ。元々薄い腹部がさらに薄くなり、なんならちょっと肋骨が浮いていた。


流石に食わなすぎたな、


病人のような身体に顔を顰めつつ身支度して家を出た。


食欲はあるが、別に食べたいものはない。

何が美味しいとか、何が好みとか、わからない。


俺は味覚障害らしい。



何年か前に行った医者には度重なるゾーンを放置したことによるストレスだと言われた。

ガイドとの治療を勧められたが受けていない。


他人に自分の感覚を共有されるなんてごめんだ。


自分のことを理解わかってもらおうなんて思わない。


自分の中を覗かれるくらいなら味がわからない方がマシだ。







面倒で一番近くの牛丼屋に入った。


気持ち的には大盛りにしたいが、どうせ食べ切れないので並盛りとサラダを注文。


よく分からない味のぐにゃりとしたものを咀嚼し飲み込む。サラダはドレッシングがあってもなくてもどちらでも良いのだが(味わからないし)。とりあえずカロリーを摂るためにかけている。


完食し満足感なんてものは無いがとりあえず空腹では無くなったので良しとする。


「さて、スーツ買いに行くか」


少し歩くが徒歩で新宿に行けるのはやはり便利だ。

必要なものは大抵揃う。


神田川沿いを歩きながら都庁に向かい、

中央通りから新宿駅西口エリアにあるスーツ量販店を見てまわる。

メンズスーツ4点セット、など破格のものもあるがセットの中にある白シャツは持っているし革靴もなんだかんだ、あの後新田に返してもらえた。


とりあえず必要なのはスーツだけだ。


吊るし売りの規制品だし、デザインにさして違いもないかと適当に着てみるが痩せすぎということもありサイズが合わない。


スーツがデカいせいで余計に貧相に見える。


早めに動いて、安い店でオーダーするべきだったか。


小さめのサイズが無いかと敷居高めのセレクトショップに立ち寄った。


黒スーツのエリアで物色していると、店員の人が細身すぎて売れ残ったスーツを割引しているとすすめてくれ、試着してみることになる。


ウエストや肩幅が残りすぎということもなく、細身ながら上品で貧相に見えない。

値段は怖かったが恐る恐る覗いたところ、負担上限の3万をクリアしており許容内。


会計を済ませ領収書をもらう頃には外は暗くなっていた。












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