第34話
することもなくリビングでぼーっとしていると、出入り口?の方で物音。
それからすぐに足音が聞こえたので、宗一さんが帰ってきたのかと廊下を見ると、予想とは違う人がいた。
「涼介さん?」
「お、無事そうだな?」
同僚が弁当を持ってやってきた。
「鮭弁と唐揚げ弁」
「じゃあ鮭で」
ほい、と渡された某チェーン店の弁当はまだ温かった。
「色々調査中のこともあるが、とりあえず昨日の件は片付いた」
「はい」
「亜樹は値千金の仕事だったな〜」
「臨時ボーナス出ます?」
「平野さんのポケットマネーから出るだろ」
「それはちょっと申し訳ないです」
気にした様子もなく唐揚げを口に運ぶ涼介さんは、この部屋によく出入りしているのだろうか。
「聞いていいですか?」
「どうぞ?」
「ここどこです?」
「え、お前宗さんに聞いてねーの?」
「まあ…、ほぼ寝ちゃってたんで…」
「あーー、ここな。ARの地下」
だから部屋の家具が同じで、窓もないのか。
「ARに地下があるなんて気付かなかったです、俺てっきり上の階に部屋あるんだと思ってましたよ」
「上にも部屋あるぞ、フェイクみたいなもんだけど」
「上階に住んでると思わせてるってことですか?また用意周到な……」
一体どんだけ部屋所有してるんだと、羨ましいは遥か遠くに過ぎてもはや呆れに近かった。
「宗一さんっておいくつなんですか?髪下ろしてると随分若く見えましたけど」
「さあ?」
「え、付き合いそこそこ長そうですよね?」
「年下だろうな、くらいしかわかんねーなー。あの人、出会ったときにはもう今みたいな仕事してたし」
「出会ったとき?」
「俺が大学の時。あ、俺は今年25」
「へえ、平野さんは?」
「27」
「じゃあ心ちゃん22歳の時の子なんですね」
「だな、奥さんは18だったかな」
「若い…」
とりとめない世間話をしているうちに弁当は食べ終わった。
「そろそろ出ます?俺も帰りたくて」
空の容器を片付けながら声を掛けるが、なぜかとぼけ顔。思ったような反応が帰ってこない。
「ん?」
「ん?じゃなくて、一緒に出ようと思って」
そろそろ家に帰りたい。風呂も入りたいし
「なんか出られないんですよね、この部屋」
「やーー、とりあえずまだここいろよ。今日は店も休業なったし」
「いや俺もともと出勤日じゃないですけど」
「うーーーん、ちょっとまだ警戒も必要だしさー」
「俺に警戒必要です?」
「えーーー……と、
何故か言いにくそうにする涼介さんに怪訝な目を向ける。と、諦めたように笑った。
宗さんから、亜樹は一旦ここで待機だとさ」
はい?
「なんでですか?ていうかなんの権限でそんなこと」
「仕事中だと思えば?言えば時給出してくれんだろ」
「別にいらないので帰してほしいんですが」
到底納得できる話じゃない。詰め寄るが、のらりくらりと躱されて焦れる。
まあマジな話、と。
涼介さんは真面目な顔を作った。
「ゾーンの反動でまたぶっ倒れないとも限らない。落ち着くまでここにいた方がいいだろ」
「それは____、」
倒れない。とも言い切れない。
反論しにくいな。
「入院中とでも思えばいいだろ。なにもずっとここに居ろって話じゃない」
「……」
「ここはさ、宗さん的にはかなりの安全地帯でさ」
お前と宗さんの関係、よくわかんねーけど
そんな場所に住まわせるってことは、まじで心配してんじゃないかな
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