第19話


ある嬢は言う。

『一度見たら忘れられないお顔』と。









実際、あの浮世離れした顔面はそうそうお目にかかれない。し、簡単に忘れられるものでもないだろう。


なのに、俺は彼。宗一さんを(たぶん)忘れているらしい。


頭を反らせても振っても出てこない。


可能性を考える。


彼は夜の世界の住人だ。

俺も施設を出てからほぼ夜職に就いていたので、仕事の関係で会っていた可能性は、ある。


ただ、東京に住んだのは今回と、約五年前。Skyにも出資しているらしいし、その時に会ったことあるか?と記憶を探るがいくら探っても、無い。

じゃあ五年前?

あの時は、東京には半年程度しか住んでいない。

やっていた仕事は確かに黒服だったが......。

当時のことを思い出しても、やはり思い当たる人物はいない。

そもそも、人が常に溢れ、流れる東京歌舞伎町。一瞬で流れ去っていた一般人を覚えている人間なんていないだろう。


実際、久しぶりに東京にきたが当時働いていたキャバクラは無くなっていた。

流れ続けるこの街は、店すらもとどまらない。







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